ゼロベースで企画を立ち上げ、体育祭に代わる行事をわずか1か月で実現

~ 品川女子学院中等部・高等部 体育祭実行委員の挑戦 ~

首都圏の私立中学校では春に実施されることも多い、体育祭。品川女子学院中等部・高等部(東京都品川区)でも、体育祭は毎年5月に実施していましたが、今年は、コロナウイルス感染症のまん延を受け、4月中旬の段階で延期もしくは中止と決まってしまいました。

しかし、品川女子学院の体育祭は、そこでは終わりにはなりませんでした。なんと、延期 or 中止が決まった時点から当初の体育祭予定日(5月8日)までの1か月足らずの間に、ゼロベースで企画を立ち上げ、体育祭に代わる行事として、在校生向けオンラインイベント「体育祭王」を実現したのだそうです。

この特集では、「体育祭王」っていったいどんなもの?なぜこの企画に?苦労したことは?などについて、品川女子学院・生徒会部の石渡先生と体育祭実行委員の中心メンバーさんたちに、書面インタビューの形でお話を聞いています。「自ら考え、自らを表現し、自らを律する」が校是の品川女子学院らしさが垣間見えるお話を是非お楽しみください。

先生の仕事は場を作ること、生徒の気持ちを創ること

Q:体育祭の代わりに何か行事をする、ということが決まった経緯を教えてください。

休校、体育祭延期or中止という状況になり、一番悲しんでいるのは実行委員生徒達でした。11月から準備を進めてきていたわけなので。そこで私は、体育祭の延期or中止を生徒に告知してすぐ「5月8日(体育祭実施予定日)に何かオンラインで体育祭関連のイベントをやりたくない?」と実行委員に無茶ぶりをしてみました。

(生徒会部・石渡先生)

Q:実行委員さんは、石渡先生からの「無茶ぶり」を聞いてどう感じましたか?

とにかく驚きました。笑 

そもそも「体育祭」という行事が集まって行うものなので、みんなで集まれない中、どうしたら体育祭の良さを残したイベントができるのだろうかと戸惑いましたが・・・予定通りの開催ができなくなってしまった中、実行委員会として何かできることがあればやりたいと思いました。

(実行委員長・Kさん)

前例なし、参考事例なし。ゼロからの立ち上げ

Q:企画立ち上げにあたり、苦労したことは何ですか?

前例がないことです。どのような段取りで進めるか、いつまでに何をしていれば本番に間に合って全ての準備が完了するのか、どのように分担すれば個人の負担が均等になるかなど参考にできるものがなかったので普段の体系化されている実行委員活動との差に苦しみました。

(実行委員長・Kさん) 

企画内容を考えることです。前例がないため、みんなが楽しんでもらえて、体育祭の趣旨から逸れない企画がなかなか思いつかなかったです。

(実行委員・Nさん)

LINEやslackなどの文面だけで自分の考えを伝えることです。

(実行委員・Sさん)

体育祭の趣旨を再定義することでゴールが見えた

Q:今回のイベントが「体育祭王」というクイズ形式に決定した経緯を教えてください。

企画を考案するにあたり、まず体育祭の趣旨は何なのかというところから考え始めました。

私達が考えた体育祭の趣旨は、
 ①参加型であること
 ②体育祭は学年対抗の行事のため学年で団結できること
 ③楽しい行事であること

です。たとえオンライン開催でもこの3つの趣旨から逸れることのないよう企画立案を進めていきました。

また、考案時にはイベント当日に登校可能かが不透明だったので、この3つの趣旨に合っていて尚且つオンラインでもできるイベント、と考えた時、自然に残ったのがクイズ大会でした。

(実行委員長・Kさん)
「体育祭王」ではZOOMでクイズを出題。最後の出題はスクワットの回数を競うものでした

Q:先生方には、主にどのような点で協力を求めましたか?

企画が成立するかのチェックと、生徒は登校禁止のため学校での動画の素材集め、昔の体育祭のことを教えて頂いたり、当日生徒にはできない部分の補助など多岐に渡って協力していただきました。

(実行委員長・Kさん)

今年のメンバーは特にチームワーク、発想力に優れているので、最初の一歩さえ踏み出せば、あとはしっかりしたものができることは最初から確信していました(結果は予想以上でしたが)。そのため、私は常に背中を押す役でいつづけることを意識しました。

(生徒会部・石渡先生)
クイズの解説動画には先生方も登場
Googleドライブには様々な検討のあとが…

簡単すぎず、面白く、公平な問題を出題

Q:クイズの問題を作る時に配慮した点や苦労した点は?

簡単すぎず面白い問題を目指しました。公平性を保つため6年生でも知らない年の体育祭から問題を出題しましたが、その資料集めや解答集めが大変でした。

(実行委員長・Kさん)

在校生が知らない体育祭の映像から出題するために、6年前の体育祭の映像を解説動画に入れることになったのですが、6年前のDVDを借りるのも映像にするのも苦労しました。

(実行委員・Yさん)

低学年でも、知っているような、先生を問題に入れたり、体育祭に関わりつつ、難しい問題を入れたりして、全学年、楽しめる内容を目指しました。

(実行委員・Nさん)
「体育祭王」の解答は、過去の運動会の映像などを編集したビデオで発表

参加してくれた生徒のみなさんが興味を持ってくれる内容であるかどうか考えました。

(実行委員・Sさん)

Q:クイズの最後に、スクワットの回数を競う出題がありましたね。

体育祭ということで少しでも運動してもらえるようにスクワットを組み込みました。

(実行委員・Iさん)

スクワットの模範演技をする先生方

Q:スクワット回数は、1分間実施した回数を自己申告し、それを学年で平均したものが今回の得点とされましたね。平均回数と最高回数はそれぞれどのぐらいでしたか?

全学年平均は22回。最高回数は50回でした。

(実行委員長・Kさん)

Q:解説動画もとても凝っていましたね…! 作成した動画の中で気に入っているところを教えてください。

時間もなく、集まることもできなかったので家で4人それぞれ動画を作ったのですが、構成やスライドを同じにして統一感を出したところです。あとは、昔の映像を集め流したところです。

(実行委員・Iさん)

「正解はC.筏流しでした」と発表される時の背景が個人的に気に入っています。

(実行委員長・Kさん)

アイドルの歌詞に合わせて雑コラ感満載の動画を作ったことです。ファンに叩かれやしないかととても不安でした。

(実行委員・Yさん)
「正解は筏流しです」の背景画像はこちら

Q:今回、優勝は6年生、準優勝は5年生となりました。得点力もダントツでしたね…!

なるべく学年間でハンデがつかないように工夫しましたが、体育祭に関する知識を問う問題が多かったので経験豊かな高学年が強かったのではないでしょうか。
また、体育祭にかける思いは学年が上がるごとに強くなっていくように感じるのでそこも影響したのではないかと思います。

(実行委員長・Kさん)

特に第5問のスクワットについて、6年生の平均回数がほぼ10回以上違ったことが要因の1つなのではないかと思います。6年生は運動神経がいい学年で、去年の体育祭の学年対抗リレーも1位でした。

(実行委員・Sさん)

準備中も当日もハプニングの連続。それでもやり切った

Q:今回、実施してみてうまくいった点と反省点を教えてください。

zoomの機能上、全校生徒がオンラインで一堂に会することができなかったので学年ごとに別のzoomで進行を行いましたが、学年間で進行にズレがそこまでなかったのが練習の成果を発揮できたかなと思いました。

(実行委員長・Kさん)

当日思っていたよりも集計に時間が掛かってしまい、その間に話す予定だったことが話し終わってしまい少し間ができてしまい、もう少し話を用意しておいても良かったかなと思いました。

(実行委員・Iさん)

予想外のトラブルがあり集計時間が長引いてしまい、その時間の間小話をして時間を潰している司会の生徒に大分無理を強いてしまったことです。集計を含め流れは何度も練習しましたが、やっぱり本番は別物だなと思いました。

(実行委員長・Kさん)
実行委員さんたちは、集計に時間がかかる場合のことも考えて、台本を作り上げていました。今回はその想定以上の時間がかかった…とのことだそうですが、予め想定し計画しているところがすごいです。

Q:印象に残ったエピソードや面白かったことがあれば教えてください。

準備段階で多くの先生方にご協力いただき、その際に快く協力して頂いたばかりかあたたかい言葉をかけていただきとても嬉しかったです。
また、みんなから色々な案が出てきてそれを一緒に検討していくのが楽しかったです。
1番印象に残ったとは違うかもしれませんが、当日みんなの笑顔が見れたことが1番感動しました。

(実行委員長・Kさん)

zoomでの話し合いの際にある人がお母さんに怒られていたことです

(実行委員・Yさん)

先生に解答・解説動画用のトロフィーのリボンの長さを実際に測っていただいた.動画を見た時に思ったよりも短いなと思いました。

(実行委員・Iさん)
「体育祭王」は実行委員長・Kさんの熱いメッセージから始まりました

ほぼ毎晩深夜に(実行委員長の)Kさんが「これでいいと思う?」といろんな案や対策を送ってきてくれたことです。学年が上がり、勉強に対する焦りもあったはずなのに、それでも体育祭に全力投球なKさんに本当に感銘を受けました。

(実行委員・Yさん)

直前に当日使うフォームが不具合を起こしたことです。深夜にKさんと泣きそうになりました。

本番中に家のWi-Fiが切れてzoomから退出してしまったときは、自分の役割がまだ残っていたのでとても焦りました。

(実行委員・Yさん)

Q:先生におうかがいします。「体育祭王」に対する生徒さんや先生方の反応はいかがでしたか?

どの学年でも、そして多くの教員から「楽しかった」という声が聞かれ、彼女たちも満足していました。オンラインでありながら、2〜6年全体を企画で繋ぐという功績は非常に大きかったと思います。

1年生はiPadをまだ所持していないので、リアルタイムでの参加ができませんでした。しかし、置いてきぼりにすることなく、1年生用の特別動画として同じような雰囲気を味わえるように整えてくれました。

最初はその動画を1年生に配信するだけの予定だったのですが、1学年の教員から「それではもったいないクオリティだ」ということで、担任主導でその動画を使いながら実際と同じようにクイズ大会をしてくださる提案がきました。これも彼女達の仕事が他者の気持ちを動かした結果だと思います。

(生徒会部・石渡先生)

――実行委員さんたちのゼロをイチにする力に感銘を受けました。

11月から始めていた体育祭に向けての準備期間、そこで彼女達に伝えてきた仕事の進め方、取り組む姿勢、物事の考え方、そういったことが花を開いたように感じ、とても頼もしかったです。

(生徒会部・石渡先生)

挑戦したことで得られたものは大きかった

Q:今回の経験の中で、今後の体育祭等学校行事に生かせると思った点があれば教えてください。

最初は絶対無理だと思いましたが、オンラインのツールをフル活用してなんとか開催することができました。在宅ワーク術は身についたのではないかと思います。

(実行委員長・Kさん)

体育祭に限らず品女の三大行事の実行委員は、行事に向けて会放課後に週1回程度集まって会議を行うのですが、オンラインでも会議は滞りなく、むしろ普通の会議よりも議論が活発になったと感じたので、オンラインと対面の会議をうまく使い分けていくことができればいいなと思いました。

(実行委員・Yさん)

実際に集団で作業することができないという難しい状況下で、自分たちでクイズを企画してそれが成功し、生徒に楽しんでもらえたということが本当に嬉しかったです。

この経験を生かし、今後もまだ沢山の人と会っての作業は難しいと思いますが、やろうという気持ちさえあればできるんだという自信につながりました。

これからも学校や校外の人に喜んでもらえるような企画を考え、今できることを最大限に活用して発信していきたいです。

(実行委員・Oさん)

Q:今後、品川女子学院で行事を企画・運営していく後輩さんたちへのメッセージをお願いします!

今回のように、大小問わず全く予想していなかったことが起こることはきっとあると思います。どのような状況でも、自分の立場から今できることをさがしてみてください!頑張れば大体はなんとかなると思います!

(実行委員長・Kさん)

偉そうなことは言えませんが、“世界中の誰もどうなるか分からない”そんな時でも、これだけみんなに喜んでもらえた素晴らしい企画ができました。思いついたらすぐ行動するそんな品女生だからできたことなのかもしれません。品女には沢山の挑戦できる場が待ってます。失敗でも成功でもその決断ははそのまま自分の経験値になると思って、色々なことにチャレンジしてみてください!

(実行委員・Oさん)

――本日はありがとうございました!