2020年5月23日に公開された、かえつ有明中学校の学校説明会の内容を書き起こしでお伝えします。
学校ホームページ:https://www.ariake.kaetsu.ac.jp/
Contents
1. かえつ有明の教育(小畑校長先生より)
小畑校長先生:
皆さんおはようございます。
本日はこの説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます
本来であれば学校においでいただいて、校舎あるいは生徒の様子等を見ていただくのがいちばんよろしいのですが、本日は、かえつがどんな学校なのか――大変素晴らしい学校だと私、胸を張って申し上げることができます――お伝えできればと思います。
現在、学校はコロナウイルスの影響で、生徒は在宅でオンラインで授業をやっております。4月は、保護者・生徒との面談をしながら、授業にスムーズに入っていくための助走期間と位置づけてきました。
ゴールデンウィーク明けからは、1日6時間の授業を実施しています。7月いっぱいまでは、授業を、オンラインだけでもやっていこうという意気込みで取り組んでおります。
私からはかえつ有明の教育の基本的な考え方をご説明申し上げたいと思います。
コロナウイルスの対応において大切にしている3つのこと
まず、現在のコロナウイルスへの対応で、本校が一番大切にしていることをお伝えします。
1. 生徒・保護者・教職員の全員の健康と命をまず大切にしよう、というのがポリシーの1番目です。
2. 在宅で色々やるということは日頃の学校生活とは大きく異なります。心身ともに色々な形で不調になることもあるかもしれません。そういうことで、心身のサポートとケア、これを十分にやろうというのが2つ目の柱でございます。
3. 学校でございますので、学びの場――しっかりとした学びの場を提供するというのが一番の使命でございますので、これをしっかりと、オンラインであってもキープして、かえつの教育をしっかりと行っていこうと。
この3つが、このコロナの色々な弊害があって通常の授業ができない中で、かえつが教育の中で重要視していこうという(ことで)、この精神に基づき、現在、学校教育を進めているところでございます。そういう意味では、安心してかえつで学んでいただける学校になっているだろうと胸を張って申し上げることができるかなと思っております。
教育のパラダイムシフト
私からは、かえつの教育の基本的な考え方をご説明申し上げますが、今、日本の教育界は大きな変革期にございます。なぜそうなっているか――色々な理由があろうかと思いますが、一番大きな理由は、技術革新がものすごい勢いで進みつつある(ことです)。
左上の図は、横軸は年代、縦軸は技術の進展を意味しております。代表的なものとしては、AIシステムが急速に進歩しておりまして、科学技術がものすごい勢いで進歩しつつある。
そして2045年頃になりますと、AIシステムは人間の能力をはるかに超えて、AIシステムがさらに自分自身よりも優れたAIシステムを生産するようになる、この再生産が繰り返されますと、とんでもないことになるだろうと。
それが社会的な影響としてはどうなるかというと、産業構造・職業構造が、現在から比べて大きく変化いたします。皆様がたのお子様が中学に入り、高校を出て、大学を卒業して一つの分野の専門家として社会に出たといたしましょう。2045年というと、家庭を持ち、一番の働き盛りのその年代です。その頃、このシンギュラリティという事態が到来して、ものすごい勢いで産業構造・職業構造が変わっていきますので、大学で習った知識はすぐに陳腐化してしまう。その場合にどうするかというと、右側に書いてありますように「必要な知識や技能は自ら取得していかなければならない。大学で習ったものはすでに陳腐化している」という、こういう時代が到来します。すなわち、「教わる教育」から「自ら学ぶ教育」に時代が転換するという、こういう時代を迎えているわけですね。
国が目指す教育改革の方向性
文部科学省も「学力の3要素」と言いまして、このスライドにある3つの要素の重要性を指摘して、これに合った教育に転換をするようにという指導をしております。
一番上、十分な知識・技能、これは従来からの授業で、日本は世界的にもトップレベルの位置にございますのでなんら問題は無い。
問題は、2番目、3番目です。2番目は、よく言われることですが、答えが一つに定まらない問題に自ら解を見出していく思考力、判断力、表現力等のこの3つの能力が大変重要であると。大学の入学試験でも思考力、あるいは判断力を試す問題が非常に増えております。
それから3つ目は、主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度。
この3つが重要です。そしてその中の2つ――後ろの2つが、これまでの日本の教育に大きく欠けていたと。この2つの能力を伸ばすのが、アクティブラーニングと呼ばれている教育手法であると。実は、かえつでは、すでに14年前からこのアクティブラーニングを導入し、なおかつ、14年間、年々中身を進化させて、高いレベルのアクティブラーニングをずっとやってまいりました。
本校の教育
本校の教育理念でございますが、生徒一人ひとりが持つ個性と才能を生かす。そしてより良い世界を作り出すために、主体的に行動できる人間を育てるというのが本校の教育理念です。この教育理念を実現するための「3つの観点」というものがございます。
まず「学び方を学ぶ」――先ほども申し上げましたように、社会に出て、1つの分野を大学でマスターしたといってもすぐにその知識・技能は陳腐化してしまいますので、日々、自ら学んで必要なものを吸収し応用できるようになっていかないといけない。そこの根底を保障するのが、学び方をしっかりと身に付けるということです。これが第1点。
それから「自分軸を確立する」――これは、教育理念にありますように、一人ひとりが持つ個性と才能を生かすということで、自分の個性・才能がどこにあるのかということをしっかりと中学校・高校時代に、在籍している間に、しっかりと自分で認識をし、確立をしていく。
そして、これからは色々な国々の人々と一緒に1つの仕事をする、グループで仕事に取り組むという機会が非常に多くなりますので、共に生きるという精神を小さい頃から育む、この中で大切なのがダイバーシティー、グローバルということです。
これらが三本柱。①ディープラーニング、②グローバル、③ダイバーシティ。これが本校の教育の三本柱となっております。これらはみんな、教育理念を実現するための、実際の教育の場で必要な柱となっているわけでございます。詳しくは――ディープラーニングが何かということ(など)は、パンフレット等でじっくりと読んでいただければと思っております。
かえつ有明は年々生徒の主体性・自ら学ぶ姿勢を尊重し、教員は学習面でも生活面でも、あまり押しつけがましいことは言わないようにしています。教員としては「聴く」「対話」を重視しています。校則も年々変わっています。
(広報部長・宇野先生のチャットコメントより)
本校で育つアクティブな人財
こういう形で、本校は、生徒を、社会に出ても積極的に活躍できる人財をということで教育を行ってまいりました。過去2年間で、本校でこんな人財が育っていますよと社会に胸を張って自慢できるような例だけここにリストアップいたしました。
まず、一番上です。マリンチャレンジプログラムというものがございます。これは海に関する研究テーマを生徒自らが設定し、それに取り組んでその研究成果を発表しあう(ものです)。ここで本校の生徒が、日本の全国大会で最優秀賞を取りました。これには世界大会というものがございまして、最優秀賞をとったうちの生徒が世界大会に日本代表として派遣され、シンガポールで世界大会がございましたが、そこでもなんと最優秀賞を取りました。
それからその次ですね、学校保護宣言というものがあります。模擬国連という、課外活動の一環として世界情勢を学ぶ1つの活動がございます。その中で、シリアのような国では学校が軍事基地として利用されている、次の時代を担う若い人たちが教育を受けられないようなそういう現実があることを知って、学校保護宣言に日本も調印すべきだと。朝日新聞にその主張を2人で投稿して、「私の視点」というコラムにうちの生徒の投稿が写真入りで載りました。
なおかつ、この2人は、学内で同志を募り、街頭に出て、署名活動――4000名近い署名を集めて、他の学校の生徒にも呼びかけてお互いに議論をし、マスコミにもこのような活動が広く取り上げられました。外務省・防衛省・国会議員との議論をやりながら、日本もぜひこの学校保護宣言に調印すべきだというその主張を1つの大きな運動として取り上げて盛り上げた、そういう生徒がございます。これも、生徒自身が問題意識を持ってその目的に沿って、実際に活動した例でございます。
それから、ツバルという国――太平洋の南のほうに、温暖化のために水位が上がって水没の危機に瀕している国がございます。そのツバルのことを知った生徒が、実態調査をしたいということで、まずは渡航のためにお金が必要だということで、自分たちの考えを社会に広くアピールしてクラウドファンディングを立ち上げて、旅費を募金していただき、現地に夏休みに1カ月間行って調査をし、現地の子供たちと交流を深めてまいりました。ツバルの首相が日本からこういう青年が来ているということを知って、首相がうちの学生を首相官邸に招いて、3時間を超えていろいろ議論をしたと。そして帰ってきて、その報告会を全国でやっているという、そういう非常にアクティブな生徒が出ております。
それから、下の2つは、学術的な活動と言ってよろしいかと思いますが、オックスフォード大学で哲学の論文を募集して、それに応募したうちの生徒が、3部門の1つで最優秀賞をとったと。もちろんこれは英語で論文を書いたものです。
それから、これはつい最近の話ですが、ソニーが24歳以下の若い人たちに、将来こういうものがあると社会が明るく楽しくなるというシステムのアイディア募集をして、3段階の選考を経て、3月27日にグランプリが決まりましたけれども、うちの生徒がなんと、見事グランプリの対象になりました。こういう1つの――これは本当に大変な成果だろうと思いますが――これらは生徒が自ら、自分の発想で問題意識を持ち、実際に活動していったという例でございます。
ソニーのアイデアコンテストでグランプリを取ったことは、ホームページの最新情報で記事を掲載しています。どうぞご覧ください。24歳以下のコンテストでしたが、本校の高3がグランプリとなりました。
(広報部長・宇野先生のチャットコメントより)
小畑校長は、もともとは、国立大学「東京農工大学」の学長で、大学におけるアクティブラーニングを推進していた方です。
(広報部長・宇野先生のチャットコメントより)
このあとご紹介する「サイエンス」や高校の「プロジェクト」などの授業で、どんどん外部の方との協働授業を進めています。
(広報部長・宇野先生のチャットコメントより)
進化するかえつ
本校では、このように有為な人財が続々輩出していると胸を張って言えると思いますが、中学校においては、今年の4月から男女共学に転換いたしました。これはダイバーシティの重要性を意識した1つの改革でございます。
それから、高等学校におけるクラス編成においても、さらに、主体的に学ぶというその姿勢をより強化し、うちの卒業生――全卒業生が、どんなことがあっても問題解決のために必要なものは自分で吸収していくという、そういう資質を持った卒業生を輩出するための改革をやったわけでございます。
主体的で深い学びへと、今年も一歩、二歩、前進したと言えるかもしれません。改革は――常にわれわれは前進するために考えている、そういう学校でございます。ぜひ皆様方のお子さまが本校で学んで、社会に出て、自分の意思でどんどん前進できるようなそんな人材へと育っていただければと思っております。本校に入学してくれることを楽しみにお待ちしております。ご静聴有り難うございました。
高校の「新クラス」は高校受験をして入学する高入生がメインのクラスですが、一貫生も入ることができます。すべての授業を大学のゼミのような形で展開します。
(広報部長・宇野先生のチャットコメントより)
中学3年間はコース別やレベル別のクラス編成はしません。のびのび過ごしてもらいます。
(広報部長・宇野先生のチャットコメントより)
高校3年間は、高入生も入る、究極のアクティブラーニングを展開する新クラス、一般受験で難関大学を目指すトラディショナルクラス、探究型の授業で各自プロジェクトに取り組みその経験をもとに主にAOや推薦入試に挑戦するオーセンティッククラスの、3タイプのクラスに分かれます。中3時に面談等をふまえて決めていきます。成績も考慮されますが、基本的に本人の意欲が尊重されます。学び方と進路実現方法で3タイプのクラスを本人が選択します。(かつては難関大学進学クラスと一般クラスとレベル別の展開でしたが、本人の意欲と学び方を尊重する方向にこの春から転換しました。)
(広報部長・宇野先生のチャットコメントより)
――ありがとうございました。今、小畑校長の方からもありましたけれども、在校生の色々な頑張りの様子を本校のホームページで、少しずつ、何か話題が出るたびに最新情報のところに情報を載せるようにしています。最新情報、なるべく頻繁に情報の公開をして、たとえば説明会とか相談会の機会も限られますけれども、学校の様子がなるべく伝わるようにしますので、時々、できれば1日1回ぐらい、本校のホームページを開けて情報を確認していただければありがたいなと思っております。
今、話の中でもアクティブラーニングという言葉もありましたけれども、本校では色々な教科でそういった取り組みを進めております。たとえば国語、数学、理科、社会…色々あるんですけれども、本校では「サイエンス科」という科目がありまして、その取り組みについて、この後はお話をさせていただきたいと思います。各教科での学習の基礎になるような、とても大きなものですので、こちらのお話、聞いていただければと思います。では、田中先生お願いします。
(次ページ:かえつ有明オリジナル教科「サイエンス科」)