東京電機大学中学校 学校説明会

2. 教育の特色


阿部先生:
それでは、私の方からは、本校の教育の特色についてお話をさしあげたいと思います。

本校は学校名からお察しがつくとおり、以前から理系に進む生徒が大変多く、理系対文系でいいますと6対4ぐらいです。高校からはいられる方は、理系と文系の割合は、だいたい7対3というところです。

教育の特色1.理科教育

Team Teachingで100以上の実験・観察を行う



本校の理科教育は、中1から高2までに行う実験や観察が約100以上あります。ちょっと変わっておりますのは実験がTeam Teachingになっておりまして、教員1人と、その補助で別の者が入りますので、皆さんの様子をくまなく見ながら実施できるのが特徴です。

理科の特別教室は、5教室ございます。5教室はフル稼働しておりまして、時々空いていないこともあり、その場合は教室で簡単な実験を行います。そうしますと、(実験・観察の種類は)100以上、100よりもっと多く理科の実験をやっていると言えるのではないかと思います。


物理分野は実験道具を作るところからスタート


本校の特徴――特に面白いところ、変わっているところは物理分野です。

道具を作るところからスタートします。たとえば、ミノムシクリップ――この写真の中の赤い線・青い線ですが――は、これをハンダ付けするところからやります。それからばねばかりなんかも自分で作ります。

物理というのは、物の仕組みを考えることからが物理ですので、そういったことを念頭においております。

それからこの実験道具のキットとは市販のものではなく、理科の先生たちが色々なところで材料を見つけてきて、生徒一人ひとりが作れるように、部品にして加工してあるのです。生徒はその部品を授業の時に1つずつ順番にとっていって、まず実験道具から作っていくというのがちょっと変わっているところだと思います。


思考過程の基本を身につける理科教育

実験・観察
実験・観察をすることは、集中力や責任感を培います。
今、世の中では、アクティブラーニングが非常にはやっております。でもそれは、一人ひとりがまず責任感を持つことが前提ではないかと(考えます)。本校でもアクティブラーニング型で行っている授業は結構ありますけれども、たとえば先程の物理の実験で言えば、自分の実験道具をきちんと責任を持って作らなければそのあとの実験はできないわけです。そういう意味で、自分で責任を持ってやるということが、実験観察で身についていきます。

記録→考察→レポート
それを正しく記録する。そしてそれを考察し、客観的に分析していく。そしてこれをレポートに書いて人にわかるように伝えていく。こういったサイクルを回していくということですね。

これは将来的には理科の実験に限らず、社会において、原因や理由を分析したり考察したりして解決策を考えていくという思考過程の基本になるものです。その教育を大事にしているのが本校の理科教育です。

教育の特色2.情報教育

中学の開設当初からプログラミング教育を実施


続いて情報教育です。

これも今、世の中的には大変はやっております。巷でも色々な、プログラミング教室の塾ができていたりしておりますけれども、本校は中学の開設当初からプログラミング教育をしています。

プログラミングとは、論理的に相手に伝える手段の1つだと考えています。もちろん今の時代に合わせて、少しずつ教育内容に新しいものを加えています。


100台以上のPCを保有、3年ごとに更新を実施

パソコンルームは全部で3部屋あり、100台以上(のPCが)ございます。そして、だいたい3年で一度、全体をリプレイスします。今年から1人1台のタブレットを持っていただいて、ツールとして使えるように教育しています。


プログラミング教育ロボット「こくり」を導入

去年の中学校1年生から、「こくり」という(プログラミング教育)ロボットを取り入れました。「こくり」は、パソコン上で、ブロック型のプログラミングをしていって、簡単な動作をさせたり受け答えをさせたりします。タブレット一体型のロボットです。発展させると、スマホのアプリも作れます。

VBA、Pythonによるプログラミングも学ぶ

そのほかに、他校さんで多分やっていらっしゃらないだろうと思われるのが、VBA(Visual Basic for Applications)――これも別なプログラミングですけれども――こういったものとか、Pythonによるプログラミングです。しばらく前まではC言語を使っていたんですけれども、時代に合わせてPythonのほうがいいだろうということで、Pythonでプログラミングをしてもらいます――これは高校生になってからです。


ハードもソフトも「表現」のため

このような情報教育で、表現・伝達する手段であるということを前提に行っているというのが、我々の情報教育の特色です。

もちろんこれ以外にも、タイピングをしたり、もちろんWordから始まりExcel、PowerPointを使ったりもいたします。

教育の特色3. TDU 4D-Lab

中・高共同研究で思考の過程を実践する総合学習



もう一つ、本校の特色は、2016年度から始めた学年横断型総合学習です。分野は6コース、およそ40個ぐらいの研究ラボがございます。

たとえば金属の精錬を行う理系のようなラボもあれば、毎年東日本大震災の被災地を訪れるような「社会科見学に行こう」といった社会学系のラボもあったりします。

ラボの中で、課題発見や目標設定をして、それを調査して実験したり、フィールドワークに行ったり。それを分析考察し、ラボの中でまず発表し、皆さんに向けて発表する。そうするとまた新しい課題が生まれるわけですね。

それを回していって、この思考の過程を踏んでいくのが、この「4D-Lab」という総合学習です。

目に見える結果を出すことだけが学びではない


この総合学習で大事なのは、目に見える結果だけではありません。

もちろん、ラボの中には外のワークショップに参加したり、あるいはコンクールに積極的に出るようなラボもありますけれども、必ずしもそればかりではないです。

たとえば、理科の分野で「ビオトープを作ろう」というラボがありますが、このラボは、(開始から)3年経って、まだ(ビオトープの)池もできていません。ただ、生徒たちはどうしたらできるだろうか、と色々な知見を探してきて、実験と失敗を繰り返しています。何回も何回も池を作っているんです。失敗するごとに(その原因等を)追究して、新しいものを考える――ということをやっています。

でも、このラボを担当しているファシリテーターの先生にお聞きすると「それが大事なんだ」といいます。どうして失敗したのか、あるいはそこからどうやって改善すれば良いのかということをみんなで話し合って決めていく、そういう過程こそが勉強になのではないか、ということなのですね。

ともすれば私たちは、すぐに結果が分かるようなことばかり重視しがちですけれども、結果が出なくても試行錯誤を続けていくという姿勢を持ってもらいたい、それを大事にしているということです。ノーベル賞を取った方々もそうですよね。長い期間をかけて地道に研究されているという方がいらっしゃることもよく耳にいたします。そういった姿勢を皆さんに持ってもらいたいなということでやっているプログラムの1つです。

教育の特色4. 異文化理解


続いて、異文化の理解。

異文化って何でしょうか。
変な話なんですけども、学校と言う場所はもう異文化の集合体みたいなものなんですよね。様々なバックグラウンドを持っている子供たちが同時に集まってきて、一緒に学校生活を送るということ自体が異文化なのですね。ですからまずそこが異文化理解の入り口です。

この基本姿勢を身につけていくのには、結構個人差があるんです。ある子はすごく時間がかかり、積極的にどんどん広げていく子もいる。

そこで本校では、国際交流の機会を、その子たちの発達のステージに合わせて、参加希望制にしています。

国際交流(ホームステイ)

その一つが、ホームステイのプログラムです。

これはアメリカのシアトルに20日間行くものです。午前中はシアトルのコミュニティカレッジで英語の授業を受けまして、午後はアクティビティ。土・日はホストと一緒に過ごすという形のプログラムです。

Empowerment Program、これは校内で5日間やります。国費留学生の方々に来ていただいて、5日間、英語で色々なトピックについて――世界の問題についてですとか、自分のアイデンティティーについてとか、そういったことをトピックにして発表したりという5日間を過ごします。

カナダの短期留学では、3カ月間、現地の学校に通います。

カンボジアのスタディーツアー、こういったものも用意しております。

このカンボジアのスタディーツアーは、インフラが全然整備されていないような村の小学校で、日本語と英語の授業のサポートをするボランティアを行います。電気もガスも通っていないような村の家庭にホームステイするので、かなり不便な生活を体験するのですけれども、そういう環境でも、将来に向けて一生懸命現地の子たちが勉強している姿を見るので、(このスタディーツアーに)行った生徒たちは、非常に考えさせられるものをもらって帰ってきているようです。

英語教育

英語教育に関しては、とにかく、異文化理解をするための「手段」であるということです。

英語教員は皆そうなんですけれども、英語をペラペラしゃべることができればいいというものではないと――もちろんそれも大事なんですけれども、まずは、伝えたい何かがある、あるいは聞きたいものがあるという気持ちを作ることを英語教育の中でやっていかないと意味がないよね、というのが本校の英語のスタイルです。

具体的にどんなことをやっているかといいますと、

モーニングレッスン
中学1年生の間に、ネイティブの方に30分――本稿は登校時間が8時半なのですが、8時から(登校時間までの)30分間、モーニングレッスンをしてもらうということをしています。

英会話
英会話の授業は、1クラスを半分に割ってそれぞれにネイティブの先生がつくスタイルの授業です。

英語検定試験 必修
英語検定の試験は必修にしております。該当学年の級は必ず取得してもらう形です。もちろんその上の級を目指す生徒もいますので、そうした生徒には(該当級の検定取得用の)講座を開いたりといった形で対応しています。

朝テスト・夕テスト
朝テストや夕方のテストがございます。朝テストは高校生になってからですが、中学生も夕テスト――(夕方の)ホームルームの近くでテストをする。英語、数学、国語を行っています。

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