聖学院中学校 学校説明会

3. 教育の特色「体験学習」


体験学習については、本校では中2から高2まで宿泊を伴う行事をおこなっています。その流れをこのあとお話させていただきますが、この体験学習を通して生徒たちにどういう状態になってもらいたいのかという6年間の「状態目標」というものを設定しています。

中学3年生の前半までの状態目標をサマライズして、非常に短く1番から4番までにまとめました。ここにありますように、自己肯定感・他者との協働・社会課題への興味関心、そして思考・探究の基礎力を身に付けるという、大きくは4つになります。

では、この4つをどのように具現化していくのかということを、中1から順番に見ていきます。

中学1年生


オリエンテーションで――ここにありますように、新しい環境に入りますので――心理的安全性を得る、要は学校が楽しい・授業が楽しい・友達と一緒にいるのが楽しいと、学校という場所が生徒たちにとって大事な場所になるという状態を、最初に徹底的につくります。今はオンラインの状況なのでGoogle Meetを使いながらホームルームでそうした環境作りをしていますし、いよいよ来週分散登校が始まりますので、ここでオリエンテーションの要素をしっかり入れ、生徒たちを「学校が楽しい」という状態にしていきたいと思っています。

それから、自己肯定感の高まり。まさに自分が認められている、自分と言うのはかけがえのない賜物を持っている大切な存在だということを、本校では、礼拝もありますし様々な取り組みでそういったことを子供たちが感じるようにしています。礼拝もその1つです。

図の一番下にもありますように、PBL・探究型の学びの準備と重なりますが、我々が非常に大切にしているまさに土台作りと言う意味では、「できたこと生徒手帳」と「自学ノート」という取り組みを毎日おこなっています。

できたこと生徒手帳
自学ノート

流れとしては、帰りのホームルームの10分間で「作戦タイム」を設けています。作戦タイムでは、「できたこと生徒手帳」に今日は家に帰って何を勉強するのかを自分で書きます。ではどこで何時に勉強するのか?棒グラフの様に見えている部分に勉強する時間を計画し記入します。そして、家に帰ったら専用の「自学ノート」に自分が決めた勉強内容を、見開き1ページやります――見開きで1時間という計算です――英語はさらに1時間宿題などがありますのでだいたい(自宅学習は)1日2時間です。それを終えたら、できたこと手帳の右側に今日できたことを書き、翌朝担任に提出する。担任は、空き時間に全員チェックして帰りのホームルームで返し、そしてまた作戦会議をやり――の繰り返しです。

生徒たちには、自分たちが、勉強ができた・勉強は楽しい・自分で決めたことをやれたという経験をして欲しいですし、今、この「できたこと手帳」を通して生徒は――教員からもそうですし、自分自身を認めることができる、そういう流れをしっかり作っているというのが土台作りとして非常に大きく響いていると感じています。実際このオンライン学習期間も、「できたこと手帳」を欠かさず書いて、計画的に進めている生徒たちというのが非常に多いのですが、そういう取り組みを見ていると、まさに学校がなくてもこういうことができる状態が作れたなと思っています。

中学2年生

次は、中学2年生です。そのような土台の成果を発揮する場面として、中学校2年生では、北アルプスの2600メートルの山に登ります。そこでプロジェクト学習PBL(Project Based Learning)を導入して、取り組むというものになります。


ここでは登山とテント生活の目標達成に向け、食事・自然・生活などの各プロジェクトに分かれ、生徒たちは、自分の役割を果たすためにプロジェクトごとに――どういう食事を作ろうかというプロジェクトもあれば、どういうふうにテント生活をしようかというプロジェクトの生徒もいます――それぞれ役割を持って夏期学校に臨みます。

各プロジェクトの混成チームで1つのパーティーができます。つまり、1人でも欠けるとこのプロジェクトは達成できないようになっていますので、誰一人として自分の役割をサボる事はしない、逆に言うと、しっかり役割を果たして協力をし合うと非常に大きな達成感が得られる。まさに一人ひとりが大切な存在であるOnly one for Othersを実現する非常に大事な機会としています。

中学3年生

さらに中学3年生では、社会や自然に興味関心を広げていくと言う意味で「糸魚川農村体験学習」――農家にホームステイをする――という本校オリジナル行事をおこなっています。

ここでは、糸魚川の田植えをしたり植林を体験したりと、食や環境を考える機会を設けています。さらに「糸魚川プロジェクト」を立ち上げ、糸魚川の魅力を伝えるため動画作成をする等、色々なことをしています。

ここに「糸魚川ガイドブック」があります。これは生徒たちが写真撮影や取材をして作り、印刷費用200,000円をクラウドファンディングで集めました。他にも都内で糸魚川市の方とイベントを開いたり、生徒が自分たちで活動を企画する、そういったことをしています。

体験談の感想文やアルバムの中で、このようなキーワードがたくさん上がってきています。感じる、伝える、地域、貢献、魅力、受け入れといった(キーワードがあり、)非常に彼らがこの行事を通じて達成感を得ていること、まさに先ほどの「状態目標」を達成していることがご確認いただけるのではと思います。

高校1年生

中学3年生の後半(2学期)以降の状態について、1番から5番までまとめさせていただいております。社会スキルが少し発展していることをご覧いただけるかと思います。特に2番の「異文化・異言語での協働」、それから、4番は社会への“興味関心”から”貢献”に変わっているところが特筆すべきところかなと思っています。

高校1年生ではソーシャルデザインキャンプという、地方創生の現場に行き、そこでインタビューをし、自分たちで課題解決をするためのプレゼンコンペをするといった取り組みをしています。


左上の写真は、箱根の伝統工芸の工房でインタビューをしている様子です。箱根や熱海、小田原といった地方創生の現場でインタビューを行い、ホテルに戻って解決策をまとめてプレゼンコンペをします。右上の写真がプレゼンコンペの準備をしているところですが、各班で自分たちの解決策をまとめています。

そして各部門ごとの優勝チームを決め、学内全体での優勝チームが決まります。その学内全体での優勝チームは、全国のソーシャルデザインコンテストに出場します。この全国大会で、2019年度は全国優勝させていただきました。こういった取り組みをさせていただいており、ここからは自分たちで動く、自分たちでものづくり・ことづくりをしていく、そういう段階に移行していきます。

高校2年生

高校2年生は――ソーシャルデザインキャンプのさらにグローバル版と言えば良いのでしょうか――沖縄を題材に、平和学習をします。沖縄の課題解決、まさに持続可能な社会を作るということをテーマにして、国際協力や貿易など少しグローバルにテーマを広げて取り組んでいきます。

左上の写真は、沖縄のセリ市場です。魚の色を見てください――青とか赤とか色とりどりですよね。これは国内で売れると思いますか?全然売れないんです。その沖縄の魚(の売上)をなんと10倍にした人の話を聞いて、セリ体験を一緒にしている生徒たちの様子です。

なぜ10倍になるのか?――この沖縄の魚は日本では売れないのですが、シンガポール、東南アジアではバカ売れです。東南アジアでは砂の混じった魚が多い中で、沖縄の魚は非常においしいと評価されたのです。中華料理やフランス料理向けに売上を10倍に伸ばした社長さんの話を聞いて、セリ体験を一緒にやる。そういうふうにかなりグローバルな課題、グローバルな領域で生徒たちは考えている。そういったことをしているのが沖縄平和学習になります。


以上のような授業、体験学習などを通して、Only One for Othersをつないでいく取り組みをおこなっています。

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