2020年7月2日に実施された、玉川学園中学部の学校説明会の内容を書き起こしでお伝えします。
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玉川学園の教育
中西先生:
こんにちは。中学部長の中西でございます。
玉川学園の教育について説明させていただきます。
開校の経緯と大切にしている考え方
1929年、91年前にできた学校です。もともと創立者小原國芳は成城学園を何人かの先生で作りました。ただ、成城が――小学校から作って中高と進んで行くと――帝大入試を意識するなど入試に向けた教育という側面が強くなり、理想の教育を行うために玉川学園ができたのです。
玉川学園の12の教育信条。最初は「全人教育」です。全人教育、今はどこでも聞くようになりましたが、創立者が唱えたものです。調和のとれた人づくりの教育、それが全人教育。残りの11個の教育信条は、全人教育を実現するためのものです。
また、自ら困難に立ち向かい、それを担う気概(困難にくじけない強い意志)のある人材こそ、次世代のリーダーにふさわしい人間像であると捉え、「人生の最も苦しいいやな辛い損な場面を真っ先きに微笑を以って担当せよ」という玉川モットーを、玉川っ子共通の指針としています。ちなみに玉川っ子とは玉川の全児童生徒学生を呼びます。
「夢」「本物に触れる」
この「夢」は、小原國芳が子供達へのメッセージとして書かれた文字です。「枠を越えた大きな夢や多くの夢を持ってほしい」という願いを込めて、下の夕の部分の点が、点点の2画になっている夢です。卒業式にはこの色紙を皆に卒業のメッセージとして贈っていました。この夢をたくさん持ってほしいという子供への思いが、いまでもいろいろな事に挑戦できる環境を準備している玉川の教育の原点となっています。
中でも、視野をいつも世界にもってほしいという思いから、どんなことでも一流のものを子供達に触れさせることを大切にし、教育に対して何事にも惜しまない姿勢で臨んできました。
中学校の教育目標小学校では体験的に、高校では探求的に学びます。その架け橋としていろいろなことをやらせたい、それが中学校です。
中学校の目標は
深み・丸みのある大人になるために、
1、触れて・感じて・表現する
2、玉川しぐさ
この2つの目標をもって中学校の教育を進めてまいります。
触れて・感じて・表現する
先生には、五感を使う仕掛け――見て・聞いて・手で触れて…そういう仕掛けを、クラブでも自由研究でも授業でも、色々なところでお願いしますと言っています。そして子供たちには、先生はそうした仕掛けをたくさん提示するので「ぼーっとしないでね」という話をしています。
たとえばどんなことかと言いますと…
玉川学園には礼拝があり、イエス様が誕生するところの話の部分です。多くの先生は、聖書の話をするときに、その聖書の部分の世界の聖画を提示しています。世界の歴史や文化を語る上で、キリスト教は切り離せないものだと思います。ですから、ホンモノを知るという意味でも、私は必ず聖画を見せています。
――こういうふうに生徒に見せるのですが、「この絵を見て気づいたことある?」と言うと「ああ、あの赤ちゃんがイエス様だ/マリア様だ」そのぐらいしか出てこないのです。ですが、そこに「ここはどこ?」と言ったら「家畜小屋」と答えますし、「家畜小屋ってどんな匂いがする?」と言ったらみんな、うえ~という顔をするのです。「着るものはどう?」と言ったら「このぐらいだから季節はこんな感じかな」というふうに答えます。そういうふうにヒントを出すことによって、イエス様って家畜小屋で生まれたの?こんな臭いところで生まれたの?と。そうすると立体的にこの絵をみることができたり、時代背景を読み取ることができたりします。そういう、ちょっとしたことを提示することによって生徒がより深く感じたり考えたりすることができます。そういったものを先生方にはいっぱい出してとお願いをしています。
玉川しぐさ
2つ目「玉川しぐさ」です。粋な玉川っ子の、
・気が利いて即行動ができる
・相手に恥をかかせない
・社会全体を考えられる
立ち振る舞いをお願いね(と生徒たちには言っています)。
幼稚園から大学生までの子供たち全部を玉川っ子と呼んでおり、その粋な玉川っ子の立ち振る舞いを「玉川しぐさ」と呼んでいます。こんな一人ひとりの「玉川しぐさ」がクラスの玉川しぐさになり、中学部の玉川しぐさになるといいですねと話しています。
全人教育さて、玉川学園では全人教育を進める上でいろいろな体験をさせます。いろいろな経験をいろいろな分野からまんべんなく教育する、それが全人教育です。その体験や経験についてお話しいたします。
学園の全景一番左端の下が「玉川学園前」駅、右上の赤字部分が、今いるところの中学年校舎です。駅から歩いて15分か20分かかりましたでしょうか?子供たちは友達とゆっくり話しながら来ると20分以上、帰りはあちこちちょっと寄りながらだと30分かかる子もいます。
施設について説明いたします。
施設グラウンド、人工芝、50mプール、体育館。そして目的別校舎です。
芸術専門の校舎アートセンター。彫刻や陶芸・金工・木工など生徒の発想を作品にします。
理科専門の校舎サイテックセンター。フロアごとに、物理のフロア・化学のフロア・生物のフロアとなっています。プラネタリウムもあります。
情報図書館があったり、自習室があったり、
中学校の校舎、右下の写真の講堂では学年集会や礼拝が行われます。どの教室にもピアノとモニター、教科教室制で職員室がなく、プランナーで自己管理、習熟度別の授業。こういったところが玉川の特徴です。
学内には教育博物館もあります。解体新書の授業も行ったりすることもございます。上皇様、上皇后様が見に来られたこともございます。
こんな聖画もあったりします。
創立の年のお正月、福島でスキー学校を行いました。そこで、どうせやるなら世界一のスキーヤーに教わりたいという子供の一言で小原國芳はハンネス・シュナイダーに、「日本にスキー教授に来てくれ。往復一等。三週間滞在。一週間見物。滞在費一切負担。謝礼一万円。東京、玉川学園長 小原國芳」と電報を打ったのです。(今で言うと一千万円を超えるそうです)来日が決まって、あちらこちらにお金の工面を…と聞いております。シュナイダーの来日は、日本のアルペン・スキー界に大きな影響を与え、日本のスキーが形づくられていきました。
次の年。どうせ習うなら体操も超一流に。世界三大体操のひとつ、デンマーク体操を確立されたニルス・ブック氏を招聘し指導を受けました――ラジオ体操のもとになった体操です。
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との交流があったり、
NASAの長官が来日されたときには、日本の子供たちと交流をしたいと玉川学園に声がかかり、学内にある講堂でお話をしていただきました。
アートラボ。芸術が好きな子はこんなこともやっています。レーザー加工機でランプシェードを作ったり、3Dプリンターでおもちゃを作ったり。
また、CNCルーター(コンピューター制御による旋盤)でこんな椅子を作ったり。これも子供たちがやります。
この右下のところは高校の文化祭/ペガサス祭のモニュメントになるペガサスを子供たちが作りたいと言い、3DプリンターとCNCルーターを使って創作しました。子供たちが考えたものが作品になります。こんなこともやっています。
玉川大学との連携の1つとして、家庭科の授業では、農学部のレタス工房で学習を行います。
金融に関して、金融庁の方に来ていただいてのお話もありました。
教養行事の1つとして7年生にジャズ鑑賞。顔を見合わせながらのセッション。ジャズの面白さを感じます。
掃除のことを玉川学園では美化労作と言っています。労作というのは自発的な活動や創作的な仕事。「誰かこのプリントを配って」「はい僕やります」それも労作です。子供たちは積極的に行います。
左上は畑です。左下のところは朝礼台があまりに古くなったので、子供たちが自発的に直しました。真ん中の写真は玉川学園の倒さなければいけない木――90年も経つと倒さなければならない木があるのでそれを使ってベンチをつくりました。こんなこともやっています。
クラス畑の様子です。だいたい夏までですとじゃがいもを、夏以降は大根を育てています。クラスによって好きな子がいると、夏野菜を育てたりもします。
タケノコ掘り。池の周りに竹林があって、タケノコ掘りもやったりしています。
(注:ここで合唱が流れました)
この合唱は、12年生=高校3年生です。モーツァルトのレクイエムをオーケストラ伴奏で合唱します。
学内・学外でサマースクールも行っています。
これは学内キャンプの様子です。芝生のところにテントをたてたり、竹林から竹を切り出し容器やお箸を作ります。作った夕食を自作の容器と箸で食べます。
外国の方に来ていただいてイタリアの料理を教わったり、草木染めをしたり、玉川アドベンチャープログラム(TAP)をしたり、学外の博物館に行くなど、”触れて・感じて・表現する”活動を行います。
キャリア教育として色々な方にお話をしてもらったりもしています。
クラブによっては、遠征もしています。これはオーケストラ部で、東北演奏合宿の様子です。東日本大震災の次の年から毎年行っています。
クラブでの国際交流も行っています。この写真はラグビー部のものです。他に、バスケット部やオーケストラも国際交流を行いました。
さて、日課表です。
8時25分に登校です。その前にクラブの朝練習があります。
学校が終わるのは、16時頃です。そこから放課後の活動になります。クラブ活動をしたり自由研究をしたりと、子供たちはそれぞれの場で活躍します。
その中の少し変わった授業が、先ほどもお話ししました「礼拝」です。玉川学園はミッションスクールではございません。ですので、お坊さんがお話に来ることもあります。宗教心や道徳心を聖書を通して学ぼうということで、週1回礼拝の授業があります。
木曜日の6時間目・7時間目は自由研究です。
世の中の自由研究は「夏休みの自由研究」ですが、玉川学園は創立以来ずっと自由研究を行ってきました。実は玉川の自由研究が派生して今の総合的な学習の時間になったり夏休みの自由研究になったりしています。
以前は土曜日の授業全部が自由研究の時代もありました。
7年生は中学校1年生です。7年生・8年生=中1・中2は教科発展型の自由研究です。そこで基本的な学び方・研究の仕方を学び、年度末に行われる玉川学園展で成果を発表します。
1年間研究したものをポスターにし、論文だったり、作品だったりにして、さらに、口述発表を行います。中には、英語と日本語の両方のポスターを作る子もいます。ヴァイオリンを作ったり、生地を染めて、それから浴衣をつくったり、茶道のお点前、デンマーク体操、ミュージカル、そして理科――それぞれの分野で自分が好きなことについて1年間かけて行った研究を玉川学園展で発表します。
そして9年生(中3)になり、しっかり研究の仕方を勉強し直すのが「学びの技」です。
1年間かけて「学びの技」のテキストブックで学びます。この冊子は百ページ以上あり、テーマの作り方から最後は参考文献の書き方まで勉強します。
まず、自分は何に興味があるのか。マインドマップの書き方を勉強し、それからテーマを見つけ、そしてテーマが見つかったら、マインドマップ、探究マップと進みます。さらにポスター作り、論文作成へとつながります。そんな流れで1年間やっていきます。
この1冊で大人になっても通用するスキルを身に付けます。
学びの技の研究テーマ。最後に記載されている「保育士数を増やすことで…」は去年の9年生の作品です。
(注:ここで論文内容の簡単な紹介がありました)
学びの技が終わって、高1~高3=10~12年生の自由研究はさらに本格的な研究に入ります。大学の1歩手前ですね。もう大学生を超えているような子もいます。それをもってAOで大学に合格という生徒もたくさんいます。
SSHも指定を受けております。大学と連携して研究を進めたり。1枚目のスライド左から2番目の写真は、NASAの長官講話が好評だったのか、オバマ大統領が来日する時にも声がかかり、ロボット部がプレゼンテーションを行った時のものです。2枚目のスライド、SSH全国大会で奨励賞をとったこの子はAOで東京工業大学に進学を決めました。
海外提携校がこれだけあります。ラウンドスクエア校のメンバーにもなっています。そんなこともあり、外国の子供たちと多くの交流の場を持っています。
カナダ研修
中学校に入学して最初のプログラムがカナダ研修です。玉川学園のカナダ校地でキャンプをしたり学んだりします。敷地内の湖でカヌーをしたり、シーカヤックで島に渡ってキャンプをしたり。ボルダリングやネイチャーウォークをしたりと、安全に海外を感じます。
プナホウ校訪問研修
オバマ元大統領が卒業したハワイのプナホウ校との交流では、玉川の生徒は、2泊3日のキャンプに参加し、プナホウの生徒はこちらのスキー学校に参加します。ホームステイもあり、また、日本の文化を発表する機会もいただいています。
アメリカ東部研修
アメリカ東部研修は、アメリカの建国の歴史・世界の経済の中心を感じる研修になっています。ハーバード大学に行ったりボストン美術館に行ったりもします。ハックリー校との交流も行っています。
9年生からの国際教育
9年生からの国際交流は課題研究のテーマ別の研修です。
グローバルキャリア講座、模擬国連
グローバルキャリア講座や模擬国連、
ヨーロピアンスタディーズは、国際機関でのワークショップや研究課題の発表を通して、「外交」「環境」「国際協力」を、アフリカン・スタディーズは、発展途上国の貧困や人権などについて学びます。
国際私立学校連盟のラウンドスクエア会議に毎年参加しています。環境や国際問題などをテーマにしたディスカッションや研究発表、奉仕活動、アドベンチャーなどの様々な活動を行います。
「下(幼稚部・小学部・中学部)から上がってくるお子さんとうまくいきますか?」というご質問をよくいただきますが、本校では、学内にTAP(Tamagawa Adventure Program)のスタッフとその施設があるので、スタッフと一緒に担任が7年生/10年生の新しい仲間を迎えるプログラムを行っています。
このアクティビティーを通じてグループがチームとなっていきます。
中高6年間の学びです。習熟度別授業から、習熟度別クラス編成になり、進路別クラス編成に変わっていきます。
大学合格実績大学合格実績。玉川大学への進学は去年は40%でした。例年30~40%ぐらいです。玉川大学への内部進学は1期・2期にわかれています。1期合格者は後期から大学の授業に参加します。他大学進学が約60%のうち、10~15%が一般入試で受験します。
残りの子たちはAO入試や指定校推薦で合格を決めています。自由研究、SSH、国際交流、労作活動など、いろいろな事に挑戦できる学校なので、その経験を活かしてAO入試で大学を決める生徒も多くいます。
夢夢を叶える。そして、枠を超えた夢を持つ。それが玉川学園です。そのために、いろいろな活動やいろいろな経験をさせています。
大きな変化の時代だからこそ、触れて感じて表現することと、人としての丸み持つことを大切にして教育をすすめていきたいと思います。これらの経験が血となり肉となって、それが、20年30年後に必要とされる力になり将来の夢につながってほしいと思っています。
是非一度玉川の丘に遊びに来てください。
(次ページは「入試概要」「今後の入試広報行事予定」)