この記事は、文化放送PodcastQRで毎週月曜日に配信されている「【中学受験】おおたとしまさの『校長室訪問』」の内容を、確認クイズ付きでWeb再録したものです。
配信内容の主要部分を書き起こすとともに、その一部を「穴埋め(ブルダウン式の三択)」クイズにしております。
番組を聴きながら穴埋めを完成させて、楽しみながら学校への理解を深めていただければ幸いです。
今回お届けするのは、
桐朋中学校(東京都国立市)の校長である原口大助先生のお話(全4回)の第4回です。
※その他の回をお読みになる場合は、下記リンクをご利用ください。(配信後、順次追加していきます)
第1回 第2回 第3回
番組の聴取は下記より↓↓
【大切なお願い】
※このWeb再録は、「【中学受験】おおたとしまさの『校長室訪問』」をより楽しんでいただくための取り組みとして、文化放送様の許諾をいただいて実施している特別企画です。
クイズを楽しんでいただいたあとは、ぜひページ末尾のアンケートフォームから、番組のご感想やリクエストなどをお送りください。
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Topics1:自律的な学習者の育成
学びが便利になった結果、起きていることは…
おおたとしまさ氏(以下、おおた):
今回でこの対談も4回目、最終回となります。今回は桐朋という学校の校長先生のお立場から、小学生・中学生―高校生ぐらいまでも含めても良いかもしれないのですが――こういった先行き不透明な時代の中で子育てをしている親御さんたちへ、桐朋流のアドバイスのようなものをいただけたら嬉しいなと思っているのですが、いかがでしょうか。
桐朋中学校
原口大助 校長(以下、原口):
本校が現在取り組んでおります「自律的な学習者の育成」というのは、これからの時代を担っていく若者を育てていく上で、ひとつ大事な視点なのかなというふうに思います。
昨今、様々な部分で「学び」が便利になっている――と言えば良いのでしょうか――色々なサポートを受けやすい、そういう環境が整っているが故に、時によっては、学びが受け身におちいりがちなのかもしれません。
おおた:
なるほど、便利で色々そろっているが故に受け身になってしまうという逆説が起こり得るわけですね。
原口:
はい。もちろんそういった中で力をつけている諸君もいますし、(便利であること)それ自体はいいことだとは思うのですが、一方で受け身のままが続いてしまいますと、この先活躍する可能性は残念ながら狭まってしまうと思うのです。ですので、受け身からスタートしたとしても、その後、自主的・主体的なものへと学びが(1)いくように、そのためにはどんなことが必要なのかなということを私なりに考えてみたいと思っております。
<確認クイズ>
(1)に当てはまる言葉は何でしょう?
日本生徒会大賞を連続受賞した生徒会長は何をしたのか
原口:
本校(中略)「自律的な学習者の育成」に取り組んでおりますが、その中で大切になるものは何かと申しますと、自分でチャレンジをしようという意思だったり、あるいは、自分はきっとそれに取り組めるのではないか・可能性を持っていると信じられる/進めていけるような力強さにあるのかなと思います。
本校の考える「自律的な学習者」は、机に向かっての勉強だけでなく、委員会活動やクラブ活動などさまざまな場で磨かれる・身に付いていくものだとも考えております。そこで、その一例として、2020年度の高校生徒会長の活躍についてご紹介をしたいと思います。
おおた:
お願いします。
桐朋:
彼は実は、高校生の生徒会の役員をしている者の中から選ばれる「日本生徒会大賞」を2年連続で受賞したんですね。
おおた:
日本全国の生徒会長さんのトップ?
原口:
はい。2年連続ですから、彼が高校2年生の時と、さらには高校3年生の時にも大賞に選ばれました。
おおた:
生徒会長に大賞があるというのは面白いですね。
原口:
(中略)まず2020年度は、コロナの影響を受けた初年度ということもありまして、多くの学校で行事などは中止・延期・規模の縮小となっていたように思いますし、私どもの学校におきましても、宿泊行事を事実上断念しております。そうした中、本校は例年6月に行っている文化祭(桐朋祭)を――2020年といいますと、3月に突然の休校という事態が生じまして、さらに4月からは初めての緊急事態宣言も発令され、本校としてもオンラインで授業などは行いましたが、いわゆる学校がいっこうに始まらない中、桐朋祭が開催できるのか、準備を進めていた生徒には不安が渦巻いていたようです。
そうした中、先ほど話題にしました生徒会長、彼は、化学部にも所属しているんですが、こう考えました。「文化祭というのは、生徒が活動を発信するための大切な機会だし、文化部は全力をかけている。どの学校も生徒の思いを考慮して、文化祭の開催についてしっかりと検討してほしい。それには、先生と交渉するための(2)が必要だ」――そんなふうに考えるんですね。
<確認クイズ>
(2)に当てはまる言葉は何でしょう?
オンライン文化祭の開催を力強くサポート
原口:
そこで生徒会でのつながりを活かして、全国規模の調査を始めます。桐朋祭の準備を始めている委員が、開催に向け学校と交渉を進めるタイミングで、この生徒会長は調査結果を公表します。
そうしますと――残念ながら中止という判断をした学校ももちろんあるのですが――新たな取り組みとしてオンラインを活用した開催を模索している学校の数が一定のパーセンテージを占めていたんですね。
こうした調査結果を力にして、桐朋祭委員は、オンライン開催の(3)を急ピッチで検討しました。そうした委員の頑張りを生徒会長の調査(2)が後押しして、本校初のオンラインを活用した桐朋祭の開催が決まる形となりました。
おおた:
コロナ禍で各校がオンラインでの文化祭は、生徒さん主導で前例のないことに皆さん取り組んだじゃないですか。今の高校生たちはすごいね!というふうに、世の中では皆さん驚かれたと思うのですけれども、実はその裏には、桐朋の生徒会長さんが、みんなどこの生徒会/文化祭実行委員会も困っているだろうから、先生たちを説得するための(2)を作ろうという、そういう動きがあったんですね。
原口:
どうやらそのようだったようなのです。
おおた:
それは面白いというか…大きな仕事をしましたね。
<確認クイズ>
(3)に当てはまる言葉は何でしょう?
「昨日より今日のほうが頑張れた」の積み重ねが鍵
原口:
このように、中学・高校で大きく成長している生徒というのは、自主的・主体的な姿勢をもってチャレンジする力、熱中・没頭する力をつけているように思います。
お聴きの方々のお子様も、自分の願いや希望の実現に向けて自分から工夫して取り組む、その魅力や可能性を実感できた、そんな経験をもっていらっしゃると、中・高という自立するタイミングを迎えた際、あるいは中・高での日々を過ごす中で、必ずやお子様の取り組み・実践は力強いものになっていくのではないかと思っております。
やはり「自分は頑張れる」「願いを実現できるはず」という自己肯定感・自己効力感につながる体験を持っていることが、自主性を育てていく上で大切かなと感じます。
そうした自己肯定感・自己効力感は、何も人から評価されるような「誇らしい実績」でなくても、「昨日より今日のほうが頑張れた」「成長できた」こうした手ごたえの積み重ねによって養われていくのだと感じています。
それとあわせて、子ども達に自主性が芽生えるには、周囲の大人が「(4)の姿勢」――という表現で良いのでしょうか――少し「見守っているよ」というようなメッセージを伝えたり、試行錯誤を繰り返すような場面で励ましのエールを送ったりする、そうした働きかけも大切なのではないかと思っています。
おおた:
そうですね。
原口:
私自身も今後、生徒諸君のスイッチを入れる、ひとりひとりをその気にさせる、そうした彼らの力となるような言葉がけに一層取り組んでいきたいと思っております。
<確認クイズ>
(4)に当てはまる言葉は何でしょう?
大人の役割は子どもの背中を押すこと
おおた:
ぼーっとする時間もすごく大切で、そんな中から湧き上がってくる「これをやってみよう」、そしてやってみようと思うんだけれどもどこかに説明書があるわけではない、マニュアルがあるわけでもない、だから自分のやり方でやってみよう(とする)。
そこで大人が、自分の経験から口出しとかしてしまうと、せっかくのやる気がしぼんでしまうことってありますよね。だから試行錯誤をするためには――自分のやり方でやっているから試行錯誤を没頭して続けることができて、その中で「うまくいった」(ということがあったり)、うまくいかなくても「なんでなんだろう」ということが、これは人から言われたのではなかなか続かないですよね。
それが、自分のやり方でやっている、そして周りの大人がそれを――試行錯誤しているところを、もどかしい思いをしながらも見守る姿勢を貫いて、そして本人が「ああ、やっとうまくいった」――それは決して、世の中の役に立つこととか、人からほめられることじゃなかったとしても、きっとその子の目って輝くんですよね、その瞬間。その輝いた時に「ああ、今、いい顔をしたよね!なにかできたんだね!」というふうに、大人は見ているよ(ということを伝える)。
そこに何の価値があるのかはわからないけど、だけど、君のその輝いた目を見ているよということさえ伝われば、子どものやる気はどんどん、どんどん伸びていくんですよね。
原口:
子ども自身が自分の可能性を信じて「やってみよう」と思う、そういう背中を押していただくようなはたらきというのは、我々周りにいる大人の役割なのかなと思うんですよね。
おおた:
ついつい大人は下心を出して、なんだかわざとらしく褒めてみたりアドバイスをしてしまったりとかするんだけれども、でも中高生ぐらいになったら自分で試行錯誤ができるわけですから、それを見守って、最低限の励ましをしてあげるというのが、ひいては「自律的な学習者」になっていくそのきっかけにもなるのかなと思いますよね。
青年は、教えられることより刺激されることを欲する
原口:
本校生をずっと指導してきた中で、私は、(5)の言葉に教育の力・可能性を感じることがありますので、最後になりますが、その(5)の言葉をご紹介できればと思います。
「青年は、教えられることより刺激されることを欲するものである」――こういう言葉を(5)が残しております。青年がどの年代を指すかはさまざまあると思いますが、私がこれまで接してきた中高生を振り返ってみますと、彼らは、刺激をもらって、そこから先はどんどん自分で動きたい・走り出したいという強い思いを持っていたように思います。
その刺激の仕方というのは、時によっては力強くどんと押したり、あるいは、ちょっとだけ前に回って引っ張りあげたりとか、様々な方法論はあろうかと思いますが、彼らの心に届くような刺激が、彼らを力強く走り出させることにつながるのではないかなということを、これまで中高生を見てきた中で私自身は感じています。
おおた:
大人のほうがなんらかの意図をもってコントロールするという意味で「教える」のではなく、なんらかの刺激を与えることによって、それがきっかけとなって青年の中に、自分でもコントロールできない力が湧いてくる感覚というのでしょうか、そのほうが本質的に青年たちを成長させるし、青年たちは本来的にはそれを欲していると。
これを大人がわきまえる(ことが大切)。ついつい教えたくなってしまう欲求、大人自身もそこに自覚的であらねばならないということですね。
<確認クイズ>
(5)に当てはまる言葉は何でしょう?
おおた:
校長室訪問、今月は桐朋中学校・高等学校の校長、原口大助先生にお話をうかがいました。
原口先生、ありがとうございました。
原口:
お世話になりました。ありがとうございました。
いかがでしたか?
このPodcastと書き起こしが、桐朋中学校さんについて理解を深める一助となりましたら幸いです。
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