この記事は、文化放送PodcastQRで毎週月曜日に配信されている「【中学受験】おおたとしまさの『校長室訪問』」の内容を、確認クイズ付きでWeb再録したものです。
配信内容の主要部分を書き起こすとともに、その一部を「穴埋め(ブルダウン式の三択)」クイズにしております。
番組を聴きながら穴埋めを完成させて、楽しみながら学校への理解を深めていただければ幸いです。
今回お届けするのは、
湘南白百合学園中学・高等学校(神奈川県藤沢市)の校長である林 和先生のお話です。
番組の聴取は下記より↓↓
【大切なお願い】
※このWeb再録は、「【中学受験】おおたとしまさの『校長室訪問』」をより楽しんでいただくための取り組みとして、文化放送様の許諾をいただいて実施している特別企画です。
クイズを楽しんでいただいたあとは、ぜひページ末尾のアンケートフォームから、番組のご感想やリクエストなどをお送りください。
この企画を続けていくことができるかは皆さまのお力にかかっております。ご協力、どうぞお願いいたします!
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Topics1:周辺環境
素晴らしいオーシャンビューと圧倒的な自然
おおたとしまさ氏(以下、おおた):
それでは、湘南白百合学園中学・高等学校の校長、林 和先生にお話をうかがっていきましょう。林先生、よろしくお願いします。
湘南白百合学園中学・高等学校
林 和 校長(以下、林):
どうぞよろしくお願いいたします。
おおた:
先生からご覧になって(湘南白百合学園中学・高等学校は)どういった学校なのでしょうか。
林:
本校は近くに江ノ島と湘南海岸、そして遠くに富士山をのぞむ高台にありまして、校舎からは毎日異なる空の色や雲の形などを楽しむことができる場所です。
こんなふうに日常的に静かで穏やかな自然環境、その中で生徒たちはのびのびと自分の個性や感性を大切にしながら、同時に、太平洋や富士山といった圧倒的に存在感のある自然を身近に感じることで、マクロな視点とかミクロな視点とかそういうものを得て、複眼的に物事の奥行きまでも捉えることのできるような、そういう豊かな人間性が育成されているかなと思っています。
おおた:
私も(学校に)お邪魔したことがあって。高台にあってオーシャンビュー、丘の上から見下ろすとすごく素敵な景色があって。周りの自然がすごく豊かで緑深くて。キャンパスの中も緑がたくさんありますよね。
林:
(中略)リスの姿はほぼ毎日見られます。授業を受けていてもベランダのところにリスがちょこちょこっときたりして。姿を見せてくれます。
おおた:
最寄り駅はどちらになるんでしたっけ?
林:
最寄り駅はJRあるいは小田急の藤沢駅からバスでいらっしゃる生徒さんがだいたい半分ぐらい。それから、JRの大船駅からモノレールに乗り換えていらっしゃる方がまた全体の半分ぐらいかと思います。
おおた:
江ノ島の海岸からだと車で10分ぐらいの距離でしたっけ。
林:
そうですね。江ノ島の海岸、小田急の終点が江ノ島になるんですけれども、なかには歩いて通って来られる方もいらっしゃって。
おおた:
ああ、歩けなくはないんですか。
林:
ええ。別にそういうことがあまり気にならない生徒さんは行き帰り歩いていらっしゃいます。20分近くはかかりますね。
おおた:
でもそのぐらいなのですね。駅の近くに幼稚園と小学校もあるんでしたっけ?
林:
そうです。
おおた:
そうですよね。中高とちょっと離れているんですよね。
Topics2:先端的な取り組み
探究、国際教育、理数系教育
おおた:
本当に素敵な――先ほど複眼的なといった表現もありましたけれども――あの環境にいたら本当にスケールの大きな自然の中に囲まれて、でも一方ですごく繊細なキャンパスの中にあり(リスさんが出てきたりとか)。
学んでいることも、あとでお話が出てくるかと思いますけれども、キリスト教精神に基づいた人間教育が行われていて、すごく情操的に豊かなものが自然に育まれていくんじゃないのかなと、そんな恵まれた環境だという印象は私の中にもあります。
どんな学校かというところ、続きがあればお願いしたいのですけれども。
林:
実は今年度、本校は創立86周年目に入りました。校風を一言でお話しすると、「伝統校の持つ信頼感・安定感」と「先端的な取り組みへの挑戦」、この両面を併せ持つと言えるかと思います。
おおた:
伝統校としての安定感と先端への挑戦。
あの、ちょっとまた話がずれちゃいますけれども、東京にある白百合中高さんとも母体が同じということで、これは姉妹校という言い方をするのでしょうか?
林:
はい。私たちは姉妹校と呼んでいます。国内に7つ姉妹校があります。
おおた:
(中略)東京の白百合さんはかなり早い時期にできていて、(これに対し)湘南白百合さんは今回調べてみて意外と新しいというか、まだ100年経っていなかったんだというのが逆に驚きだったんですけれども。
林:
そうなんです。姉妹校の中では私たちは妹という存在です。比較的若い学校です。
おおた:
なるほど。白百合という伝統があるところに「先端」――これは例えばどういうことをおっしゃられているんでしょうか。
林:
先端的な取り組みという点でお話をするなら、探究的な学びであったり、語学教育を含めた国際教育、それから理数系教育がその代表と言えるかと思います。
新学習指導要領でキーワードになっている探究的な学びについては、実は、本校はすでに20年以上前から取り組んできておりました。この話をすると皆様驚かれるんですけども、その20年という長い歴史を経て、深みを増していると思っています。
語学教育については、本校は実は86年と先ほどご紹介いたしましたけれども、創立以来非常に力を入れてきておりまして、定評もいただいているものです。常に一歩、二歩先を見据えるという私たちはその覚悟がありますので、本年度、実は国際教育プログラムを一新いたしました。授業の中でも発話量を多くすることを念頭に、発信型の事業展開を意識しています。
そして理数系教育ですけれども、生徒たちの関心は非常に高いです。この春卒業していった生徒(155名だったと思うのですけれども)、その約半分の生徒は理系に進学をしておりますし、医学部を始めとする医療系に進学して人や社会に貢献したいという生徒たちはとても多くおります。
おおた:
半分というのは、世の中的な進学の比率で言うと多いですよね。御校の理系進学率は高いですよね。
林:
そうですね。入学時からそういうものに関心が高い生徒さんがたくさんいらっしゃるなと私は思っています。共学の学校の場合、男の子がいるとどうしても比較をしてしまうところがあるので、そういったもともと持っている関心みたいなものが時に――押しつぶされるということはないでしょうけれども――なにか曲げられたり、比較したところで「自分は違う」と思い込むような傾向がありがちですけれども、そこがそのまま(関心を持ったまま)引き伸ばされていくかなという、そういう思いはあります。
おおた:
それが女子校と言う環境のユニークなところといいますか、性差がないからこそ女性である男性であるというところを意識しないで自分の素直な思いを追求できるというのはひとつありますよね。
探究では、学芸大さんと何か提携してやられていらっしゃいましたよね?
林:
はい。昨年度からなのですけれども、東京学芸大学と本校は学校間協定を結びました。これは中学高校の探究的な学びを、ともに研究しながらさらにもっと良いものに作り上げていきましょうという協力関係です。
特に本校では、数学科が探究の学びについて非常に積極的に活動してくれておりまして。理科とか社会だと比較的イメージしやすいのですけれども、数学の探究的な学びというのは他にあまり例を見ないということで、関心を寄せてくださっている方が多くいらっしゃいます。
おおた:
それはチャレンジングですね。数学というと、最も答えが用意されていてそこにいかに正確にたどり着くかという(科目だと)、まだまだ中高の中での数学というジャンルの中ではそういう教科だととらえられやすいのですけれども、でもそれを探究型にしていくというのはすごくチャレンジングだし、すごく先進的な取り組みだと思いますね。
Topics3:教育理念
「愛ある人として」
おおた:
あとは何か、最近の学校のについてのご説明はございますか?
林:
今はどちらかというと先端的な取り組みのお話をいたしましたけれども、伝統的な学校としての「心の教育」という部分も、実は、もちろんとても大切にしています。
私どもの学校の教育目標は「愛ある人として」というものなんですね。これは非常に言葉としては平易なんですけれども、やや抽象度が高くて、中学生にもわかるように具体性を持たせて話をしています。
「愛ある人として」考え、行動し、そして「愛ある人として」生きていくことを、それを自分の人生の目標にすることが私たち湘南白百合学園が生徒の皆さまに伝える生き方です、とそのように言っています。
卒業後の長い時間というものを考えたときに、誰もが必ず経験する人生の岐路において最終的にどちらが「愛のある生き方か」を判断してその道を歩めるようにと、心を磨き、そして(1)を積む6年間であって欲しい。そんなふうに考えております。
おおた:
「愛ある人として」考え、行動し、生きていくという。そうすると「愛ある人」って、どういう人なの?という問いが常につきまとうわけで。それに対する明確な答えというのを(学校が)授けてくれるわけではなく、学校の学びの中から自分らしく「”愛ある人”ってどういうことなんだろうか」と。問いを授かって、問いを抱えながら生きていくと。
林:
まさしくその通りです。
おおた:
人生の岐路において、さまざまな選択肢や生き方があるけれども、どれが果たして本当に「愛ある人」としての選択なんだろうかということを、その都度、その都度、きっと問うわけですよね。
林:
ええ。一生抱えていくテーマだというふうに私たちも思っています。
おおた:
私もなんだかちょっと知ったようなことを言いますけれども、伝統校を取材をしていて思うのは、この学校で伝えているのって生きるための「答え」ではなくて。大きな「問い」を授かりに来ているんだなというふうに思うことがよくありましてですね。
まさしくそういう「愛ある人」として、すごく言葉としては短いんですけれども、そこに色々な解釈の余地があって。大きな「問い」としてたぶん一生抱え続けて。その問いは、人を困らせるのではなく人を「支えてくれる」問いなんですよね。
林:
おっしゃる通りです。
おおた:
すごく御校の雰囲気が伝わってくるフレーズだと思います。
林:
ありがとうございます。実はこれは、生徒たちだけに向ける言葉ではなく、私たち教員も一人ひとりがそれを心の中に思いながらというふうに。
おおた:
ついついジーンときてしまいますけれども。
<確認クイズ>
(1)に当てはまる言葉は何でしょう?
Topics4:歴史
学園創設者達が体現したリーダーシップの形とは
おおた:
「愛ある人として」という大きな問いを、色々な角度で生徒さんに投げかけて、そして卒業してもその問いと向き合い続けて生きていって欲しいなと。それが生き方になっていく、そういう教育を行っている学校かと思います。
こういう校風・学校の文化というのは、どのようにして作られてきたのでしょうか。生い立ちから歴史のようなところもうかがってみたいと思うのですが、いかがでしょうか。
林:
本校の母体は、325年前にフランスで生まれたシャルトル聖パウロ修道女会と呼ばれるもので、明治の初めに日本の女子教育のためにフランスから海を渡ってきた3人のシスターが本学園を作っています。当時の社会情勢を考えても、それがいかに勇敢で信念に基づく行為であったかと言うことがわかります。
設立時、17世紀のフランスですけれども、Society 2.0といわれる農耕社会です。当時のその時の思いが――今はSociety 5.0といわれる現代ですけれども――実は、色あせることなく、世界を見据えた女子のリーダーシップ観につながっていると私は思っています。
湘南白百合学園が、18歳で本学園を卒業していく生徒たちに期待するのは、「幅広く資質や能力を高めて人や社会に尽くせるようにと多様な分野へ踏み出す女性」であり、また、「さまざまな文化とか価値観を持つ人々と協働することを通して世界を一歩前に進めることのできる女性」(です)。
ただしそれは必ずしも集団の先頭に立って旗を振る人でなくてもよくて、集団を陰から支える存在も含めてのものです。今、本校が考えている――今申し上げた新しいリーダーシップ感・教育観というのは、そういうものを目指しているものですし、改めて考えてみると、海を渡って日本に来た150年前のシスターたちが体現していると私は思っています。
そこで何をしたかと言うと、女子教育と先ほど私は申し上げましたが、そこに至る途中には、自分たちがフランスで学んできた薬の技術を使って、傷を負った人や具合の悪い病人の方をその薬で直してあげるというそういう作業をしていて。
おおた:
医療的なことをされていたんですね。
林:
そうなんです。そして、その地域で信頼を得て人間関係を作りながらだんだんと自分たちのコミュニティーを広げていくようなこともしてきたと聞いています。私は――昔話を、それこそ昔のシスターたちに聞かされているのですが――今の生徒たちが医療系とか医師を目指すその姿と実はすごく重なるんです。
おおた:
なるほど、そういうつながりがあるわけですね。(中略)
Topics5:保護者様へのアドバイス
優しく賢く、勇気ある大人を育てるために
おおた:
そういった生い立ちがあり、現在の校風があるわけですが、なにかその、湘南白百合中高流の教育エッセンスみたいなものを一般のご家庭に取り入れるヒント・アドバイスのようなものをいただければと思うのですが、いかがでしょうか。
林:
ヒントになるかどうかとは思うのですが…、実は、私が本校に入職して一番最初に思ったのが、この学校の生徒たちは優しくてとても積極性があるなぁというところだったのです。それは(その思いは)今も変わりはありません。
人に優しくあるためには、自分が優しくされてきた経験が必要だと思います。生徒たちが人の気持ちに寄り添い、共感しながらともに成長する力を持っているのは、おそらくそれまでの十数年間に自分が優しくされてきた実体験があるからだと私は思ったんですね、当時。
人に優しくするとは具体的にどんな言葉と行動をともなうものなのか、とか、あるいはそういうような人間関係から生まれてくる穏やかな空間の価値をこの子たちは知っているからだなぁと私はその時思いました。
もう一つの「前向きに挑戦する積極性」ですけれども、(これは)それまでの小さな成功体験から生まれているのだろうと私は想像しています。中学生とはいっても、それまでおそらく自分が乗り越えられるだろうかと不安になるような局面はあったはずです。そこを自分で考えて努力してそして時に周囲の人と協力をしながら何とか乗り越えてきた経験を積むことで、このあと待ち構えているかもしれない困難も何とかやっていけるだろうという自信につながって。そのことがきっと良い循環になってきっとまた次の挑戦に向かっていける、そんな生徒の様子を私は見ることがあります。
これって本校の特長でもありますけれども、実はどちらも、12歳までにご家庭で育成してきていただいた力でもあるんですね。いずれ子供たちは親元を離れて一人で生きていくことになりますので、互いを思いやる愛情ある空間というものがいかに心地良いものなのかということを教えていただくことは大切かなと思っています。
おおた:
家庭を、お互いを思いやる落ち着いた穏やかな空間にしていくということ、それが他人にも優しくできるお子さんの素地を作るということですよね。
思いやる――当然ながら親御さんは多くの場合、わが子のことが可愛くてしょうがなくて、言われなくても優しくしてしまうはずなんですけれども、でも一方で、心配だからこそ厳しくしすぎてしまったりとか、お小言を言ってしまったりとか、そこのバランスで多くの親御さんが悩まれていることも多いのかなと思うのですけれども。
自分の子供に優しくする、または優しさで満たされた空間に家庭をしていくというと、親御さんとしては、具体的にどんなところに気をつければよろしいのでしょうか。
林:
そうですね…。私も実は子供を育ててきた経験がありますので、子供を褒めることって実はものすごく難しいことで、親の力量が問われるものだと承知しています。
ただ、先ほど、本校の生徒たちはとても積極性があると申し上げましたけれども、それも、お子様をまず励まして応援しながらその子の適性に合った小さな成功体験を積ませてあげて欲しい、そしてそれを乗り切った時にはいっぱい褒めてあげていただきたいと思います。
先ほど申し上げた「褒めること」って本当に難しいですけれども、ただ、VUCAと呼ばれる変化の大きな時代をこれからの子供たちは生きていくわけです。その変化というものを、私たちが今、想像しきれていないようなそんな世の中で、でも自分らしさを忘れずに誇りを持って、そして自分自身を肯定しながら幸せな人生を送っていってほしいと誰もが願います。優しくて、賢くて、そして勇気のある大人へと成長するように、周囲にいる私たちが応援しなければと思っています。
おおた:
子供にそれを望むということは、まず大人が「優しくて、賢くて、勇気がある」そういう存在であらねばならぬわけですよね。それがなかなか…自分はできているだろうかということであったりとか。おそらくこの「優しく、賢く、勇気があって」という言い方をしていただきましたけれども、それがおそらく、最初に先生がおっしゃられた「愛ある人」のひとつの形であろうかと思いますし。
林:
はい。
おおた:
ですから、湘南白百合さんに通うことになった保護者の方々は、先ほど「先生たちも」とおっしゃっておられましたけれども、親御さんたちも「愛ある人」であるために、子供の前で「愛ある人」であるそういう姿を見せるためにはどうあらねばならないかという、保護者になった瞬間に「問い」を自分も授かることになるのでしょうし。
その実践として家の中で、子供が可愛いのは当たり前かもしれないけれども、でも本当の優しさって何なんだろうか。そして、親としての本当の賢さって何なんだろうか。時には、子育ての中で勇気を持った決断をする、それはもしかしたら子供にとっては厳しさを伴うものかもしれない。そういった事が問われて。
それは、湘南白百合に入らなくても、湘南白百合流の教育観・子育て観という中で言えば、一般のご家庭の中でも家庭をそういった空間にできると、(12歳で湘南白百合に入って来る時に優しくて積極性のあるお子さんたちが集まっているということですけれども)、そういうお子さんに育っていくんじゃないのかなという、そういうヒントでありながら、大きな「問い」をまたいただいちゃったなぁと思うわけなんですけれども(笑)。
林:
確かに、ずっと考えながら私たちは生きていくのかもしれませんね。でもそういうことが考えられる人であるということは、とても大事なことかなと思います。
おおた:
本当ですよね。
林:
親としても、そして私たち教員も同じなんですけれども、同じように自分たちがそうあろうとする姿を見せていくしかないかなというふうに思うんですよね。
おおた:
ほんとですよね。子育てにおいても――今回ヒントをいただいたわけですけれども――こうすればいいんだというふうな答えを求めるのではなくて、自分が常に、親としてどういう「問い」と向き合うべきなのかという、その「問い」を選ぶこともすごく重要なことなのかなと、今お話を聞いていて思いました。
校長室訪問、今回は湘南白百合学園中学・高等学校の校長・林 和先生にお話をうかがいました。林先生、ありがとうございました。
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