例年以上の激化が予想されている2023年度中学入試。いよいよ各所で出願が始まる中、6年生保護者様は出願校の最終検討と調整を進めていらっしゃることと思います。
そのご参考のひとつにしていただくため、期間限定企画「探究型入試紹介」の連載を始めます。
入試広報担当の先生や探究を担当されている先生方に直接お話をうかがい、入試の特長や出題の意図、事前準備があまりできていなくても受験できる…?などの気になるポイントをうかがうとともに、その入試が入学後の学びとどのような関係があるのかについてもお話を聞いていきます。
第2回目となる今回は、捜真女学校中学部(神奈川県横浜市)です。2023年2月3日(金) AMに実施される「対話学力試験」についてお聞きしました。なお、文末には試験の概要もまとめておきましたので、最後までお読みいただければ幸いです。
このシリーズの連載記事は、年末年始の間は当サイト「オンライン合同学校説明会」に掲載し、年明けの2023年1月6日(金)をめどに新サイトへと移行します。新サイトの掲載アドレス等が決まりましたら、こちらのページにリンクを残し、新サイトへの誘導リンクを設置いたします。
Contents
インタビュー① 対話学力試験とその成果
「真理を捜し求める」学校として
――「対話学力試験」とは聞きなれない名前ですが、どのような試験なのでしょうか?
捜真女学校中学部 入試広報ご担当の先生(以下、捜真):
面接形式で行う学力試験です。教員との対話で問題を聞き取り、考え、答えていただきます。
――この試験を導入した理由は何ですか?
捜真:
本校は「ことばにフォーカスした教育」を行っております。それを入試でも表現したいと考えて導入しました。
――なぜ「ことばにフォーカスした教育」なのかをお聞きしてよろしいですか?
捜真:
はい。本校の校名「捜真」とは、「真理を捜し求める」という意味です。この真理には学問の真理と聖書の教える真理の両方が含まれているのですが、いずれの真理を捜し求めるときにも「ことば」の力が不可欠です。
ことばの力を培うことで、書物や人から情報を得て、必要なものを取り入れて考え、答えを出し、自らを表現できるようになります。そうした営みの中で人は人とつながり、課題を見いだし、自分を成長させ、他者に貢献できるようになっていくのです。
こうした目標を実現するため、本校では中学1年生の時から聞いたり話したりする活動をたくさん取り入れています。
――学校として目指すことを実現するためのものなのですね。
「ことばにフォーカスした教育」についてもっと知りたい方はこちらのページをご覧ください。
「ことばにフォーカスした教育」を象徴する入試
――これまでにどんなお子さんが「対話学力試験」を受験されましたか?また、入学後はどのように育っておられますか?
捜真:
やはり、もともと話したり聞いたり、大人とやりとりするのがそんなに苦手ではないお子さんが受験されましたね。対話学力試験を経て入学した生徒はその後も「ことばの力」を伸ばし、部活動や学校生活の中でも皆をまとめる役割を果たしてくれたり、学校説明会の中でお手伝いをするボランティアとして活躍してくれたりしています。
――それは素晴らしいですね!ところで、「対話学力試験」には幅広いお子さんにチャンスがある一方で、他のお子さんとの間に学力差があって入学後に苦労するのでは?と心配される保護者さんもおられるかもしれないのですが…
捜真:
ご心配はよくわかりますが、結論から申し上げればその点はご安心いただいて大丈夫ですよ。
対話学力試験の試験問題をどんな内容にするか、難易度をどのぐらいに設定するかは、これまでの数年間をかけてしっかり検討してきました。簡単すぎて基礎学力が図れないもの、あるいは単なる面接になってしまってはいけませんしね。
現在の試験では、たとえば算数・理科では実験もあり、どんな道筋で考えたのかや道具の使い方やその意味などもお聞きするなどしていますので、対話学力試験を受けて合格なさる方は、学校での4教科をまんべんなくきちんと勉強してきたお子さんです。
実際、対話学力試験を受けて本校に入学した生徒は教科学習だけでなく探究や実技にも持ち味を発揮し、学年全体の中でも上位の成績をとっていますよ。
――そのようにうかがって安心しました。
対話学力試験の様子を見たい方はサンプル動画をご覧ください。
インタビュー② 入学後の学びとどうつながるか
段階的に視野を広げていける「捜真Vプロジェクト」
――探究への取り組みについてお聞かせください。
捜真:
中学1年生、2年生ではキリスト教の価値観を通して他者と自分の世界を見ていきます。具体的には、学校の歴史とキリスト教を学んだり、地域活動に参加したりしながらキリスト教の価値観を通して他者と自分の世界を見ていきます。他者とともに生きている自らの価値を知る段階です。
中学3年生では、より広く世の中を知るための活動をします。いわゆるキャリアガイダンスに近くなるのですが、自分自身がその時に興味ある仕事をひとつ選び、その仕事についている人に直接インタビューすることを含めて1冊のレポートを作成していきます。
世の中にはさまざまな仕事があることを知るとともに、レポートづくりを通して、文章やプレゼン、あるいは英語で人に伝えることも体験します。
――高校ではどのようなプログラムになるのですか?
捜真:
高校では「職業」からさらに視点を高くし、社会課題へと目を向けていきます。高校1年生は、社会の中でこれは改善したほうがいいと思うことを探し、グループで改善提案をする動画を作る活動をします。
――社会の中で改善したほうがいいこと…なんだか難しそうにも聞こえます。
捜真:
いえいえ、あまり難しく考える必要はないんですよ。生徒たちは、自分たちの身の回りのできごとで改善したいと思うテーマを選んでいます。
たとえば今年、学内で優秀賞をとった提案は、「学校の授業時間を25分にしよう」というものでした。彼女たちいわく、学校の授業時間が45分では長すぎると。学校生活の中で自分達の集中力がどのぐらい続くのかを調査して、一番集中できるは25分ぐらいだという結論を出したんですね。そこで、1日あたり 25分/1コマ × 9時間 の授業 にすると良いのではという提案を動画にしてくれました。
――とても身近なテーマであり、自分たち自身を調査対象にした結果を踏まえての提案であるだけに説得力がありますね。
捜真:
そうですね。
過去には、電車などの「優先席」のマークを変えたほうがいいという提案をした生徒もいました。彼女は貧血を起こしやすい子で、通学中の電車内で具合が悪くなることもあるのだそうです。そんな時、優先席を使わせてもらいたいと思っても、表示で対象とされているのは…
――いわゆる「交通弱者」(高齢者、障害者、傷病者、妊婦、ベビーカー含む乳幼児連れなど)ですよね。
捜真:
はい。ですから、若くて健康そうに見える人が優先席を使うことにはためらいがあるんです。彼女は、自分と同じように見た目ではわからない辛さを抱えている人が優先席を使いやすいようになって欲しいと考えてマークをデザインし、鉄道会社に提案にも行きました。
「誰もが座りやすい優先席へ」の提案はこちらからご覧いただけます。
――実際の行動に結びついているのも素晴らしいですね。
捜真:
ありがとうございます。生徒たちには大学への合格や入学をゴールとするのではなく、中学3年生・高校1年生の頃から10年経った時、つまり、25~26歳になった自分が社会をどう良くしているのかを考えて欲しいと願っています。
今の自分が与えられている価値や技能、環境をどう用いていくか、それは社会をよくする、他者や自分を幸せにする活動になるのかを考えながら、探究を進めていって欲しいのです。
高大連携等を活用して外部評価の機会をつくる
――高校2年生ではどのような活動をするのですか?
捜真:
高校1年生ではグループで社会課題への提案を作成しましたが、高校2年生では個人での作成になります。自分の目指す進路も念頭におきつつ、その分野で今、問題になっていることは何か、どうすれば解決するのかを調べ、考え、ポスターセッションで発表と意見交換を行います。
――ポスターセッションの意見交換は生徒さん同士のみが行うのでしょうか?外部評価もあるとなお良いと思うのですが。
捜真:
おっしゃる通りです。
従来から生徒同士の相互評価はもちろん、担当教員、そして担当以外の教員もポスターセッションを見に行き、講評に加わるようにしていたのですが、生徒たちにしてみればもっと第三者に評価してもらいたい、良い悪いではなく改善点を指摘して欲しいという思いがあるわけです。
そこで昨年から、高大連携で協定を結んでいる大学、あるいは協定まではいっていなくてもさまざまな形でつながりがある大学の先生にいらしていただき、講評に加わっていただくようにしました。
そこでは発表の仕方だけでなくもう少し専門的な学問の中身についても少し教えていただくような機会も設けることで、高校と大学との学びがつながっていくよう意識しています。高校と大学の学びをつなげることで彼女たちの10年後を構築しやすくなったらいいなと思っています。それこそが捜真の探究の目標ですので。
北里大学との連携もスタート
――高大連携といえば、2022年は北里大学さんとの連携も開始されましたね。
捜真:
はい。本校はこれまで文系を選択する生徒が多かったため、文系の学部に強い大学さんとの提携が多くなりがちだったのですが、「捜真Vプロジェクト」を通じて生徒の進路選択もより多様なものとなってきましたので、今後は理系の大学とも連携をしていきたく、2022年4月に北里大学さんと教育交流に関する協定書を締結しました。
北里大学との連携についてはホームページでご覧いただけます。
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