例年以上の激化が予想されている2023年度中学入試。いよいよ各所で出願が始まる中、6年生保護者様は出願校の最終検討と調整を進めていらっしゃることと思います。
そのご参考のひとつとしていただけるよう、期間限定企画「探究型入試紹介」の連載を始めました。
入試広報担当の先生や探究を担当されている先生方に直接お話をうかがい、入試の特長や出題の意図、事前準備があまりできていなくても受験できる…?などの気になるポイントをうかがうとともに、その入試が入学後の学びとどのような関係があるのかについてもお話を聞いていきます。
第5回目となる今回は、和洋九段女子中学校(東京都千代田区)です。2023年2月1日(水) AM・PMに実施される「PBL入試」についてお聞きしました。なお、文末には試験の概要もまとめておきましたので、最後までお読みいただければ幸いです。
このシリーズの連載記事は、当サイト「オンライン合同学校説明会」のほか、年明けの2023年1月6日(金)以降、順次新サイトにも掲載していきます。(新サイトの掲載先は決定次第こちらに記載いたします)
Contents
インタビュー① PBL入試とその背景
PBLには2つの種類がある
――和洋九段中学校さんのPBL入試には「総合型」と「SDGs型」という2つの種類があると聞きました。これらの違いはどこにあるのでしょうか。
和洋九段女子中学校高等学校
入試広報ご担当の先生(以下、和洋九段):
総合型の入試はグループで行う「Problem Based Learning(PBL)」を、SDGs型の入試は個人で行う「Project Based Learning(PBL)」をイメージして作っています。
PBL(総合型)入試とPBL(SDGs型)入試、それぞれの内容と共通点などについては次ページの「インタビュー④ 入試出願を迷われている方へ」内の「総合型もSDGs型もキーワードは「協働」」により詳しく記載しています。あわせてご覧ください。
――そもそもPBLに2つの種類があるのですね。
和洋九段:
はい。「問題解決型学習」とも呼ばれる「Problem Based Learning」は、本校が全科目の授業に取り入れている学び方です。
「なぜ」「どうして」という問いかけ(トリガークエスチョン)から始まり、友達と協働して学ぶことで思考が深まっていきます。
――授業は「Problem Based Learning(問題解決型学習)」とのことですが、それではもうひとつのPBL=Project Based Learningは、どのような位置づけなのでしょうか?
和洋九段:
2つのPBLの関係については、この図をご覧いただくのがわかりやすいかと思います。
和洋九段:
図の左側にあるいくつもの丸が、一つひとつの授業でのPBL(Problem Based Learning)です。色々な授業でProblem Based Learningが行われ、それらが生徒たち一人ひとりの中でトルネードのように問題意識をかきたてていって。次第に学校を飛び出して外へとどんどんつながっていく――それがPBL(Project Based Learning)のイメージです。
――外とつなぐことが前提となっているのですね。
和洋九段:
単に学校の中だけで「社会のことを考えました。何か活動しました。はい終わり」ではなく、考えたことをどうやって社会に還元していくかが大切だと考えています。
本校が、学校のコンセプトとして「つながる学校(Connected School)」を掲げている理由も、そこにあります。生徒たちには大学や企業、NGOやNPOとつながり――もちろん、つながり方はさまざまですが――、活動することでより課題意識を深め、社会にインパクトを与える体験をしてほしい。ですから本校では、研修旅行や探究についてはProject Based LearningのほうのPBLをイメージして設計しています。
学校が大切にしているもののひとつとして入試にも導入
――2つのPBLについて、違いがわかってきました。ここで改めてPBL入試を導入した経緯についてお聞かせいただけますか?
和洋九段:
本校はもともと、おっとり のんびりした子が多い校風の学校です。こうした生徒たちを、それぞれの良さを大事にしつつ社会で活躍できる人へと育てて行くために何ができるかを考えた結果、本校はPBLの学びを導入しました。その結果、生徒がぐんぐんと成長してきたことが実感できたので、入試にも採り入れることにしたのです。
PBL(総合型)入試とPBL(SDGs型)入試、それぞれの内容と共通点などについては次ページの「インタビュー④ 入試出願を迷われている方へ」内の「ちょっと引っ込み思案なお子さんが成長できる理由は」に詳しく記載しています。あわせてご覧ください。
和洋九段:
入試問題は、学校が何を大切にしているかを示すメッセージ、いわば学校の「顔」だと考えています。
本校の入試にはPBLのほかにも、2科・4科はもちろん、独自の到達度確認テストを用いるものや、英語・英語スピーキングによる入試があります。
これらはそれぞれが、「基礎基本を大切にする」「和と洋(=グローバル社会を見据え、自らの立つ場を理解し、深く考える)」など、本校が大切にしている価値観を反映しています。
インタビュー② 入学後の学び・探究とどうつながるか
中2のハイライト「グローバル遠足」とは
――入学後の学びについておうかがいします。先ほど「研修旅行や探究についてはProject Based LearningのほうのPBLをイメージして設計している」とのお話がありましたが、具体的にはどのような取り組みをされているのでしょうか?
和洋九段:
それでは、研修旅行を例にとってお話しますね。
本校は高校からの入学者はほとんどいませんので、研修旅行は中1~高3の6年間を貫くプログラムとして設計しています。
学年ごとの取り組みについて、より詳しくはこちらの動画をご覧いただければと思いますが、中学でのハイライトのひとつが、中学2年生の時に行う「グローバル遠足」です。
――グローバル遠足…ですか?
和洋九段:
中1の3学期に、SDGsに取り組む企業や団体を自分達で調べ、自分たちで電話をかけてアポをとり、中2ののゴールデンウィーク明けに訪問します。
そして、その企業や団体のSDGsの取り組みや大切にしていることなどについて質問を考え、お話をうかがってきます。これを本校では「グローバル遠足」と読んでいます。
――電話でアポイントを取るのはなかなか大変そうです。
和洋九段:
それはもう、盛大に断られまくっていますよ(笑)。
ですが、中学生のうちにこうした経験をしておくことが、高校での活動につながるのです。
「先生、私、今度ここに行って来ることにしましたから」
和洋九段:
本校では、「総合学習(探究)」が導入される25年以上前から「自主活動」を実施してきました。
現在は総合的な探究の時間となりましたが、その内容は「自主活動」を受け継ぐ形でそれぞれが社会課題について研究しその解決に向けて何らかのアクションを起こすことを目標にして活動しています。
これらの活動の中では、どこかにアポ取りをしたいという場面がよくあります。そんな時、未経験でいきなり電話をかけるのは尻込みしてしまうと思うのですが、なにしろ本校の生徒の場合は中1の時から経験していますから、慣れたものです(笑)。
私たち教員が知らない間にさっと電話をかけて「先生、今度こういうところに行ってくることにしましたから」とか言いに来たり、「こういうところに行ってきました」と報告してくれるような頼もしい生徒がどんどん出てくるようになりました。
そういう意味では、中学の頃から色々、失敗も含めて経験していることが高校になって活きてきているとすごく実感しています。中高6年間でプログラムを設計し実践してきたことがハマり始めているかなと。
→ 次ページでは、入試出願を迷われている方へのメッセージや入試概要も