例年以上の激化が予想されている2023年度中学入試。いよいよ各所で出願が始まる中、6年生保護者様は出願校の最終検討と調整を進めていらっしゃることと思います。
そのご参考のひとつとしていただけるよう、期間限定企画「探究型入試紹介」の連載を始めました。
入試広報担当の先生や探究を担当されている先生方に直接お話をうかがい、入試の特長や出題の意図、事前準備があまりできていなくても受験できる…?などの気になるポイントをうかがうとともに、その入試が入学後の学びとどのような関係があるのかについてもお話を聞いていきます。
第10回目となる今回は、成立学園中学校(東京都北区)です。2月4日(土) AM に実施される「ナショジオ入試」についてお聞きしました。なお、文末には試験の概要もまとめておきましたので、最後までお読みいただければ幸いです。
このシリーズの連載記事は、当サイト「オンライン合同学校説明会」のほか、年明けの2023年1月6日(金)以降、順次新サイトにも掲載していきます。(新サイトの掲載先は決定次第こちらに記載いたします)
Contents
インタビュー① ナショジオ入試の背景
見える学力と見えない学力の双方を育む「ナショジオ学習」体験の場として
――ナショジオ入試を実施し続けておられる理由についてお聞かせください。
成立学園中学・高等学校
入試広報ご担当の先生(以下、成立学園):
本校の教育目標は、「見える学力」と「見えない学力」の両方をバランスよく育むことです。
そして、これを具現化する取り組みのひとつとして、本校では「ナショジオ学習」を行っています。
「ナショナル ジオグラフィック日本版」には、世界の現実を伝える生き生きとした写真と、素晴らしい記事が掲載されています。これらを読み、活用することで生徒たちは、自然、動物、歴史、文化、科学など多岐にわたるテーマに触れ、興味・関心の幅を広げていきます。同時に、今後直面するであろう「正解のない問題」に向き合うことや、教科の枠や文系・理系の枠にとらわれない好奇心や論理的思考力・発信力を育んでいきます。
「ナショジオ入試」は、日本で唯一の ”ナショナル ジオグラフィック教育実験校” である成立学園中高ならではの探究学習の一端を入試の場でも体験していただけるもので、成立学園が目指す教育内容をより広くご理解いただけるように願い、実施しております。
インタビュー② 入学後の学び・探究とどうつながるか
写真の力で関心を広げる「誌上の体験」
――ナショジオ学習、とてもユニークな取り組みだと思います。ナショナル ジオグラフィックという雑誌を活用する意義についてもう少しお話いただけますか?
成立学園:
「見えない学力」を育むために本校では、中学1年生から「アース・プロジェクト」を通じてさまざまな経験や本物体験の機会を作っています。それでもなお、ナショジオ学習は「見えない学力」を育てる経験・体験の場として非常に大事なものであると考えています。
――体験の場としての「ナショジオ学習」。
成立学園:
はい。と申しますのも、体験にはどうしても時間の制約があるのです。限られた時間の中であれもやりたい、これもやりたいと思ってもなかなかすべてをできるわけではなく、結果として経験・体験できることは身近なものに限られてしまう。
この点、ナショナルジオグラフィックではそれこそ南極や北極など我々が通常行けないような場所、普通では知り得ないようなことも素晴らしい写真とともに生き生きと伝えてくれます。時間のかからないもの・身近なものに経験が限られがちな生徒たちの関心を地球の裏側まで広げてくれる「誌上の体験」なのです。
――雑誌は、自分の関心があるものもそうでないものも一緒に入っているところも良いですよね。自分で情報を取りに行くと、自分の興味のあるものしか見なくなってしまいますから…。
成立学園:
まさにそうなんです。
自分から進んで幅広い情報を取りに行けるのがベターなのでしょうが、現実にはなかなか難しい。そんな時に、届いた雑誌をペラペラとめくるだけで情報が――特にナショナル ジオグラフィックの場合は写真に力がありますので――飛び込んでくる雑誌には、大きな価値があります。
生徒たちは、中学1年生からの5年間で60冊のナショナル ジオグラフィックを読むことになります。その中でたった1冊、たった1つの記事でも良いので、何かしらが自分のアンテナに引っかかって「これは何だろう」「こんな世界もあるんだ」「もっと知りたい「」「こういう見方もあるんだ」と思ってくれればと願っています。
ちゃんと悩み、目標を見つけることに集中する中学時代
――「見えない学力」を「見える学力」につなげていく鍵は何でしょうか。
成立学園:
本校では中学3年生の時、「働くこと」をテーマに卒業論文を制作します。なぜこれをするのかについてお話することが、その質問へのお答えになるのではと思います。
見えない学力を見える学力――端的に言えば成績や学力向上――につなげるためには、生徒自身が「勉強って何のためにあるのか」「なぜ勉強するのか」を根本的にわかっていることが重要です。
大人からあれやれこれやれと指示されてしょうがないなぁと取り組む勉強は、やらされ感だけで終わってしまう。そうするとどうしてもある一定以上は伸びにくなってしまうのですね。それよりもやはり、自分でこういうことをやりたい、そのためにこういう大学に行きたいといった目標があったほうが自ら進んで勉強しますし、成績に結びつきやすくなります。そしてこの実現の鍵が「目標を持たせること」だと私たちは考えているんです。
――目標を持たせる。
成立学園:
私は本校がまだ高校だけだった頃から教員をしているのですが、当時、高校1年生の担任として面談をする中で生徒に「将来何をしたい?と聞くと「まだ考えてないです」「特にないです」という答えが多かったことを覚えています。でもそれってたぶん、本人がだらけているからでもやる気がないからでもないんですよね。
――興味深いです。なぜなのでしょうか。
成立学園:
中学時代は色々と悩み苦しむ思春期まっただ中ですが、その時期にちゃんと悩ませてあげていないからではないかなと。
――ちゃんと悩ませていない…
成立学園:
保護者の皆さまもご自身を振り返ってみると思い当たるところがおありではと思うのですが、思春期に悩み苦しんだことって、大人になってから振り返れば自分の土台を作ってくれていたりするんですよね。でも高校受験があると、中学校ではどうしても「悩むのはわかるんだけど、今やるべきことは勉強だよね」という対応になってしまいがちで。
――悩みはとりあえず置いておいてまずは勉強しましょう、みたいな感じの指導になってしまうと。
成立学園:
はい。その結果、子どもたちは十分に悩んだり考えたりできないまま高校に入ってしまい、どうしたいの?と聞かれても答えようがないのではと思うのです。でも一方では、高校1年生の後半には文理選択を決めなければいけないから、そこに向けて慌てて考えていくというような形になりがちで。
それであれば、せっかく中高一貫校なのですから、中学はもっと余裕を持って「目標を持たせる」ことに特化をしても良いのではないかと。色々な経験を積み、悩み考えて。
――なるほど!だから中学生のカリキュラムに体験や経験の場が多く用意され、ナショジオ学習も実施されているのですね。
成立学園:
その通りです。中学3年生での卒業論文では自分の将来の目標や将来つきたい仕事について考え、「働くこと」をテーマに執筆します。
ここで書いたテーマや考えがその先、変わっていってもまったく構いません。中学3年生の時点で精いっぱい悩み、考え、自分のやりたいことは何か、それは果たして社会的にどんな意味があるのだろうかといったことを一つひとつ考え、形にすることで、なるほど自分はこんな人間だったのか、こういうことをしてみたいのかと気づきます。
それが目標となり、見える学力につながっていく――私たちはそのように考えています。
→ 次ページでは、入試出願を迷われている方へのメッセージや入試概要も