この記事は、文化放送PodcastQRで毎週月曜日に配信されている「【中学受験】おおたとしまさの『校長室訪問』」の内容を、確認クイズ付きでWeb再録したものです。
配信内容を書き起こすとともに、その一部を「穴埋め(ブルダウン式の三択)」クイズにしております。
番組を聴きながら穴埋めを完成させて、楽しみながら学校への理解を深めていただければ幸いです。
今回お届けするのは、
学校法人海陽学園 海陽中等教育学校(愛知県 蒲郡市)の校長、西村 英明先生のお話です。
番組の聴取は下記より↓↓
【大切なお願い】
※このWeb再録は、「【中学受験】おおたとしまさの『校長室訪問』」をより楽しんでいただくための取り組みとして、文化放送様の許諾をいただいて実施している特別企画です。
クイズを楽しんでいただいたあとは、ぜひページ末尾のアンケートフォームから、番組のご感想やリクエストなどをお送りください。
この企画を続けていくことができるかは皆さまのお力にかかっております。ご協力、どうぞお願いいたします!
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Topics1:学校の概要
全寮制の学校。ハウスマスターとはほぼ親子のような関係に
おおたとしまさ氏(以下、おおた):
それでは学校法人海陽学園 海陽中等教育学校の校長、西村 英明先生にお話をうかがっていきましょう。西村先生、よろしくお願いします。
海陽中等教育学校
西村 英明 校長先生(以下、西村):
よろしくお願いいたします。
おおた:
今回は海陽中等教育学校さんのお話をうかがっていきたいなと思うのですが、まず、最初に、学校がどんな場所にあるのか、ロケーション、周りの環境ですとかそういったところを教えていただけますでしょうか?
西村:
私どもの学校は愛知県の蒲郡市というところにあります。東京のほうから行きますと、新幹線で1時間半ほどで豊橋という駅から12分ぐらいのところに、三河大塚というのが最寄りの駅です。関西方面からですと、名古屋からだいたい1時間弱のところにある町です。
みかんの産地になっていまして、非常に日照時間が長い、天気のいいところです(中略)。周りは三河湾に囲まれておりまして、私は今、校長室にいるんですけれども、ここからもう目の前は海です。周りのロケーションは「海」それから「広い空」そして「山」が見えるという、本当に自然環境が豊かなところにあります。
おおた:
それはいいですね。この番組はどうしても東京の学校中心にご紹介することが多かったのですが、今回は愛知県ということで。普段は「最寄りの駅はどちらですか」「生徒さんはどんなふうに通っておられるのですか」などとお聞きするのですが、海陽さんの場合は寮があって。
西村:
そうです。私たちの場合は、全員が歩いて通えるところに住んでいて。もう、全員が寮に入るという全寮制をとっておりますので、通学時間はありません。
おおた:
そういった自然豊かな環境にある海陽さんですが、学校のなかの雰囲気はどんな学校と先生は思われていますか?
西村:
全寮制ですので、みんなが一緒に暮らしております。普通の学校さんでは想像がつかないと思いますけれども、生徒と先生の距離は近いです。私も、ハウスと呼ばれる寮の監督をやっていまして、ハウスマスターという職をもともとやっていたのですが、そうなりますと、ほとんど親子の関係になりますので、本当のお父さん・お母さんが知らないこともたくさんわかる、色々なことも相談してもらえるという、本当にすべてをファミリーとして暮らしているというようなそういう雰囲気です。
おおた:
中高生ぐらいになると親以外の信頼できる大人の存在ってすごく重要になってくると思うのですが、そのひとつの役割を担っているのがハウスマスターという…いわゆる寮長さん的な立場といえばいいのでしょうか。
西村:
普通の寮長といいますとどちらかというといわゆる「生活の支援」という感じがすると思うのですが、(中略)基本的には、教員と同じというか、社会人であったり色々なかたがやるんですけれども、いわゆる教育の場ということで、色々なことを一緒にやりながら学んでいくという学びの場であります。
おおた:
教室における担任の距離感とはまたちょっと違う距離感の教育者という立場でいらっしゃるんでしょうね、きっとね。
西村:
そうですね。生徒たちの(中略)寝顔まで知っていますので(笑)。
おおた:
そうですよね。あとは何か最近象徴的なできごとですとか、こういった具体的なエピソードは何かございますか?
西村:
ここにいる間だけでなくて、卒業してからの絆もやはり強くて。
先日、成人の集いというのを私たちはやるんですね、私達は全寮制ですので、この蒲郡で暮らしますので、地元の成人式とは別にこの学校で、二十歳になった時にもう一度集まりましょうという「成人の集い」をします。
その時はほとんどの卒業生が帰ってきてくれて、かつ、卒業生の保護者の皆さんもたくさん集まってきてくれるという、そういうことからいいますと、本当に、なんというのでしょうか、一体感というかファミリー感があふれている、(そして)それがずっと続いていく。保護者の皆さんも同じような苦労をしている友達がいっぱいいますので、我が子のことは我が子ですけれども、海陽の子はみんな我が子のような感じで見守ってくれているのはずっと続いていますね。
おおた:
わかりました、ありがとうございます。
Topics2:沿革
中部地方の財界のトップが集まって作った学校
おおた:
文字通り寝食を共にして育っていく学校だということが伝わってきたのですが、そもそも、そのような全寮制の学校がどういった経緯で、どういう人たちが作ったのか、学校の生い立ちと歩みについてもうかがっていきたいと思うのですが。
西村:
私たちの学校は、実は経済界の方々のお力によってできてきました。2006年にできて、まだ17年、今年で18年目になるのですが、当時、トヨタ自動車それからJR東海、中部電力という中部の財界のトップの方々が色々なところで集まられる機会があった時に、あるひとつの共通した危機感を持たれて。それがちょうどバブルのあとで、日本経済がなかなか大変な時期、そして先が見えない中で、やはりこれからの日本を引っ張っていくような人材をしっかりと作っていかなければいけないんじゃないか。それがなかなか通常の教育をしているだけでは叶わないことがあるんじゃないか、ということで危機感を持たれまして。
で、私たちのような、ひとつのモデルとして全寮制の学校を。学校で色々学習もするんだけれども、いわゆる、みんなで暮らすことによって、色々な面で全人的な教育ができないか?ということで、私たちの学校ができてくることになります。
おおた:
なにかお手本にする学校みたいなものがあったのでしょうか。
西村:
はい。こちらができたときに、やはり、世界を見渡しますとこういった全寮制の学校というのはたくさんありまして、その中でもイギリスのイートンという学校があります、何百年も伝統のある学校ですけれども、こちらの形をモデルにしながら学校の設計がなされたと…
おおた:
イギリスにはパブリックスクールと言われる、基本的には全寮制の学校(があって)。日本でいえば中高にちょうど重なる過程の教育を行っている(学校)。パブリックは公立という意味ではなくて開かれているという意味の私立の全寮制学校があって、そのなかでも代表格と言われているのがイートン校、それをひとつのお手本として学校を作ったということかと思います。
西村:
そういった意味では、建学の精神が「将来の日本を牽引する明るく希望に満ちた人材の育成」ということで、大学に入ることがゴールではなくて、社会でどれだけ活躍してくれるか、大学、高等教育を出たあとの人生の中でぜひ、自己実現はあたりまえのこととしてどれだけ社会貢献してくれるかなというのが私たちの願いです。
ただ、なかなか、まだ一番上の1期生がまだ30歳になろうかという感じですから…
おおた:
そうですよね、これからですよね。
西村:
これからが楽しみです。
Topics3:保護者様へのアドバイス
「うちの子は小学校ではそんなことで一回も注意されたことがない」
おおた:
では最後の質問に写らせていただきます。そういったユニークな教育を行っている海陽中等教育学校さんですが、その教育のエッセンスを一般のご家庭でも取り入れるヒント、あるいは子育てアドバイスのようなものをいただければと思うのですがいかがでしょうか。
西村:
先ほどからお話させていただいているように、私たちは全寮制になりますので、お父さんお母さんから離れて中学1年生から暮らすんですね。そういったところで、お父さんもお母さんも手が出せない状態になります。
これはひとつのエピソードなのですが、よくある話で、入学してきました、入寮しました、ちょうど3週間後ぐらいにゴールデンウィークでやっと家に帰れるというのがあるのですが、その時私達、保護者の皆さまと面談するのです。
(そこで)よくあるパターンとしては「A君はなかなか宿題の提出ができないんですよね、忘れ物ばかりです」とか「時間がどうしてもギリギリになっちゃいますね」といったことを保護者の方にお話すると、びっくりされることが多いんですよ。「うちの子は小学校ではそんなことで一回も注意されたことがない」と。
おおた:
はあ。
西村:
「海陽の教育が悪いんじゃないですか」とよく言われるんですけれども(笑)。そうじゃないんですと。
実はお子さんの実力っていうのはこれなんですと。今までは(1)が偉かったんです、お父さんが頑張られた結果、お子さんは困っていなかったんですよということなんですね。
<確認クイズ>
(1)に当てはまる言葉は何でしょう?
おおた:
ええ。
西村:
やっぱりそこで、生徒さん、子どもは本当に困るんですけれども、これは夏休みを過ぎたり、1年たつと誰でもできるようになりますので。子どもはできます。そういった意味では、小学校でそうですし実は中学校でも高校でも困らないように困らないように…とさせることというのは、実は将来困りますよ、ということはひとつのアドバイスとしてできるかなぁと。
おおた:
それはすごく海陽さんだからこそのアドバイスですよね。
ずっとご自宅にいて、大丈夫なの?宿題やったの?というふうにやっていると、なんとか、親の力なのか子の力なのかわからないまま進んでしまって、気づいたら自分でできないままだったというのは起こり得るかと思いますが。いったん親元から離れてみることで、子どもひとりで何ができて何ができないのかと。だけどそのできない部分についてもちゃんと成長していくから大丈夫ですよ!というね。親の心配で成長の機会を奪わないでくださいね、というお話、すごくわかりやすい例だったかなと思います。
彼らが悪いわけではない、その感覚を大人はわかっておいてあげたほうがいい
おおた:
他にも何かございますか?
西村:
タイムリーな話題と言いますか、実はコロナのことで、これもたぶん私たちだから気づいたのかなということがあります。
昨年、たぶん今年もそうだと思いますけれども、このコロナ禍の中で小学校の高学年を過ごしてこられた方というのは、実はちょっと人との距離感が苦手なようなのです。
というのは、コロナの中ではできるだけ離れて暮らしなさい、生活しなさい、学習しなさいだったと思うんですけれども、私たち対策はしているんですけれども、やはり家族のようなものですから、マスクとかはつけるんですが距離がこう、近くなってきます。こうなった時に、今までの「離れていなさい」から「ある程度いいよ」となった時にですね、今までと違ったことがおきまして。距離感が近すぎることが非常に多く見られました。
たぶん、近づいてよかったのは家族だけだったので、家族の距離感で友達とも接していくような。となると何が起こるかというと、いつもよりもトラブルがやはり多かったです。別に彼らが悪いわけではなくて、彼らの資質ではなくて、どこでもかしこでもぐちゃっと集まるというのは、今までですと中学1年生ぐらいになりますと、初めて同士なので距離感をとりながらやっていっていたと思うのですが、それがやはり難しいのかなぁと。
やはり、小学校の時代になんだかんだ身に付けているものって非常に大きいんだなというのを感じましたね。
おおた:
友達同士の距離感みたいな、そういう、ちょっと言葉では言い表せない感覚というのが、普段であれば小学校の高学年で自然に身についていたものが、コロナ禍で管理された距離感の中にいたがために(身に付けられなくて)。今度「近づいていいよ」という環境になったらべたっとなっていったということですね。
西村:
もちろん近づけない子もいたと思いますが、トラブルになるのはどちらかというと近すぎるほうなのでそれが目立ったのだと思いますけれども。
おおた:
それは海陽さんだからそういうわかりやすい形で現れたのでしょうが、色々なところでこれから、平常を取り戻そうとなっているので、そうなってきた時に、ちょっと子ども達がその、ある意味での経験値の不足によってちょっとちぐはぐするところが出てくるかもしれないなという。
西村:
それは彼らが悪いとかでは本当にないので。
おおた:
ほんとですよね。
西村:
大人はその感覚をわかっておいてあげたほうがいいと思うんですよね。
おおた:
ほんとですよね。
西村:
中学校ならこのぐらい、高校ならこれぐらいでしょうと、私たちは通常では思うとおもうのですが、そこの部分を――コロナ世代と呼んでいいのかわかりませんけれども――その環境で小学校を過ごしてこられた方については、やはりちょっとサポートしてあげないと難しいかなと。もちろん、しばらくたつとまあだんだん(大丈夫)になってきますけれども。そういった意味でもトラブル、言葉にしても距離感が近かったりですよね、やはり、プライベートに踏み込んでいくような部分がちょっと多かった気がしますね。
おおた:
なるほど…。彼らにとっては不慣れなことをしているから、大人から見ると「何やってるの、なんでそんなこともわからないの!」と思うことであっても、このコロナ禍という稀に見る環境の中で過ごしてきた子どもたちにおいては致し方ないかなという部分を大人がまずわかっておいてあげなければいけないし。
じゃあ彼らが何か取り返しのつかない刻印をきざまれてしまったかといえばおそらくそうでもなくて。子どもたちは柔軟性もすごく高いと思うので、それをまた乗り越えて行くこともきっとできるという理解を示しながら、一方で、子どもたち(に対して)「でも大丈夫」という信頼をしてあげることも必要なのかな、ということを今、お話をうかがっていて感じました。
すごく示唆に富むお話だったと思います。ありがとうございます。
「ありがとう」と言われる機会をつくってあげることは大切
西村:
やはり私たちは、集団生活をする中で大事な経験は、親元を離れるので、親に感謝とか人に感謝というのは非常に早い段階から感覚としてもっていますし、ありがとうということが言えるようになるんですけれども。もうひとつ大事なことが、集団生活をしているから、ありがとうと言われることもあるんですよね。やはりこれが大事で。
なかなか、普通に中学生・高校生をやっている中では――部活で「ありがとうございます」とか言われるかもしれませんけれども、本当の意味で人を助けてありがとうと言ってもらったりだとか、困っている人に対して・後輩に対して、本当に生活が困りますからそういったところにアドバイスしてありがとうと言われたりとか。
役に立ってありがとうと言われる経験というのは、社会に出た時の「社会貢献をしよう」という志(こころざし)に育っていくというか、つながっていくんじゃないかなと私は思っていますので。
できれば、家の中でも、お父さんお母さんが子どもにあまりありがとうということは少ないと思いますけれど、より意識してもらって「ありがとう」と言ってあげたり、周りから言ってもらえるようなことをやらせてあげるというのは大事じゃないかなというふうに思っています。
おおた:
それは素晴らしいアドバイスですね。
親が子どもに「ありがとう」ってなかなか言えないというか、言い損ねてしまうというか。よほど意識していないと意外と出てこない言葉かもしれませんものね。でも、多感な時期において「ありがとう」と言われる原体験みたいなものをたくさん持っておくということが、その子の人生観とか生き方に大きな影響を与えるということは十分あり得ますものね。
それは、寮に行く場合だけではなく、親元で過ごすにしても、親御さんがちょっと意識してあげるとすごく大切な財産をお子さんに与えることになるのかなというふうに。すごく今、いいヒント・アドバイスをいただけたと思います。ありがとうございます。
校長室訪問、今回は学校法人海陽学園 海陽中等教育学校の校長、西村 英明先生にお話をうかがいました。西村先生、ありがとうございまし
今回の内容のご感想やコメントなど、ぜひお送りください。
(私たちが責任をもって文化放送さんにお届けします)
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