この記事は、文化放送PodcastQRで毎週月曜日に配信されている「【中学受験】おおたとしまさの『校長室訪問』」の内容を、確認クイズ付きでWeb再録したものです。
配信内容を書き起こすとともに、その一部を「穴埋め(ブルダウン式の三択)」クイズにしております。
番組を聴きながら穴埋めを完成させて、楽しみながら学校への理解を深めていただければ幸いです。
今回お届けするのは、
山脇学園中学校・高等学校 (東京都 港区)の校長、西川 史子先生のお話です。
番組の聴取は下記より↓↓
【大切なお願い】
※このWeb再録は、「【中学受験】おおたとしまさの『校長室訪問』」をより楽しんでいただくための取り組みとして、文化放送様の許諾をいただいて実施している特別企画です。
クイズを楽しんでいただいたあとは、ぜひページ末尾のアンケートフォームから、番組のご感想やリクエストなどをお送りください。
この企画を続けていくことができるかは皆さまのお力にかかっております。ご協力、どうぞお願いいたします!
※本テキストの著作権は、株式会社文化放送に帰属します。本テキストの一部または全部を無断で複写・複製することは法律で禁じられております。
Topics1:学校の概要
赤坂にある唯一の私立学校。旧短大の敷地を活かした広さが特徴
おおたとしまさ氏(以下、おおた):
それでは山脇学園中学校・高等学校の校長、西川 史子先生にお話をうかがっていきましょう。西川先生、よろしくお願いします。
山脇学園中学校・高等学校
西川 史子校長先生(以下、西川):
よろしくお願いいたします。
おおた:
(中略)まず学校の立地について、最寄りの駅や周りの環境を教えていただけますでしょうか。
西川:
本校は東京都の赤坂にございます。もっと言えば、赤坂にある唯一の私立学校でもございます。
おおた:
ああ、そうですか!
西川:
そうなんです。日比谷さんなどはあるんですけれども、私立学校としては本校だけなんですね。最寄駅も色々ございます。赤坂見附、赤坂、永田町、青山一丁目、いずれも5分~10分の徒歩圏内にありまして、生徒たちは地下鉄7線…
おおた:
7線!
西川:
…(から)通っているような状況で。場所はオフィス街です。よく保護者の方から「繁華街ではないですか?」というご質問をいただきますが、むしろオフィス街で、会社員の方と一緒に生徒は登校しているような状況です。目の前は赤坂御所なんです。赤坂御所を挟んで青山通りから一本入った、静かなところにあります。
おおた:
赤坂警察署があったり、虎屋さんがあったり。
西川:
そうです、虎屋さんの裏といいますか。ご近所でよく使わせていただいております(笑)。
おおた:
赤坂御所があるから、周りはやはりがちゃがちゃしていないんですよね。すごく落ち着いたところでですよね。
西川:
はい、とても静かなところで。こんな立地にありながら、都内の私立学校の平均面積の1.6倍ほどある、大変広いところです。
おおた:
そうなんですか!超一等地に広い土地があって、という。
西川:
なかなか今は手に入れようと思っても入らないかと。
おおた:
本当ですね。
西川:
なぜその広い敷地があるかというと、旧短期大学がありまして、昔「赤短(あかたん)」などと呼ばれていた短期大学が2011年に閉学しておりますので、そこを全部含めて今6号館まであるわけなんですね。
おおた:
それを使えるようになったことで、これだけ広い校地を。
西川:
さまざまなエリアも自慢なのですけど、私はすごく校庭が好きで。学園祭、文化祭、そして体育祭も本校でできますし、空が抜けていて、とっても校庭が気持ちいいですよ。
おおた:
色々な趣向を凝らした校舎というか建物があるんですよね、それも一つの特徴なのですが、でもあえて超一等地のこの大都会の中、オフィス街の中で空が抜けている校庭というのがやっぱり贅沢なんじゃないかと。
西川:
そう思っています。
おおた:
すごく目に浮かんできました。ありがとうございます。
中3・高1の「マイ・ステージ」が生徒たちを大きく変えた
おおた:
そういった恵まれた環境にある学校だということなのですが。最近の学校の中の様子などを教えていたければと思うのですがいかがでしょうか。
西川:
生徒たちのことをちょっとお話しますと、本校は、本当に家庭から愛されて大事に大事に育てられた優しくて人柄のいい素直な生徒たちがとっても多いんですね。そういった生徒たちは、与えられることにとっても慣れている、与えられて育っているんだなということをとっても感じていて。
反対に本校では、潜在的な力に気づいて欲しいなと、とても思っているんです。ですから、与えられることを待たずに、自分から取りに行って欲しいなと。自分の中にたくさんある「種」に気づいてほしいので、「種」に気づくために、自分を開拓できるチャレンジの場をたくさん設けたいと思っているんです。
そういったことをすごく奨励しているんですけれども、ご質問で言えば、たとえば、実は今年120周年でして、本校。
おおた:
おめでとうございます。
西川:
ありがとうございます。5月1日の創立記念日に120周年を祝う会をやろうということになったのですが、いわゆる式典を考えていたんですけれども、生徒たちのほうから「自分たちで祝う会をしたい」と、つまり、山脇の120回目の誕生日を自分たちで祝いたいというような声がありましたので、ああ、それはもうぜひぜひ生徒たちの主催の会をやってもらおうということに。
おおた:
式典とは別にそれをやろうと。
西川:
はい。式典とは別に。同じ日ではありますけれども。式典はシンプルに終えて、逆に、生徒たち主体の祝う会をたくさんやろうということになりまして。生徒を募りましたら、中1から高2までたくさんの生徒が立候補してくれまして。企画委員会というのが発足しました。
この企画委員会が主催して生徒たちが祝う会を作った、というところが、生徒たちが自分たちの主体性で動いていこう、そしてもっと学校を楽しくしよう、良くしようと。生徒たちが言ったことは「山脇が大好きだからそのお礼の気持ちを表したい」とか、それから「120回目のお誕生日にお祝いの気持ちを込めたい」とか、あるいは「今まで伝統をつないできた先輩たちに感謝の気持ちを込めたい」とか。それから「これからもずっと続くように祈りの気持ちを込めたい」という言葉もすごく嬉しかったですね。
本当に、自分たちであれこれ考えまして、当日は有志の発表、山脇クイズ、本人たちが先生たちにインタビューしまくって作ったサプライズビデオ、それから120周年のキャラクターを募集してそれを発表したりですとか、すごく楽しいひとときを。
おおた:
面白い!新しい文化祭みたいな、そんないきいきしたノリが伝わってきます。
西川:
そうです、ありました!そういう生徒たちが自分たちでやっていこうという気運というか、それが当たり前という気持ちが生まれてきたのはとても最近目覚ましいかなと思っています。
おおた:
ああ、そうですか。これは変化というふうに思われるのですね?
西川:
思いますね。もっと、素直で優しくて…可能性に満ちているのにちょっと「待ち」の姿勢だったり、先生たちの言うことをちょっと待って、それを素直に受け入れてやる、という姿勢はものすごくあるのですが「もっといけるのに!」ということがずっとあったものですから。
おおた:
先生、その変化が起きたきっかけって何だったんですか?
西川:
6年間を2年ずつのタームでとらえ直していまして、ここ数年間。
中1・中2は土壌を耕す時期。私たちが毎日注ぐ光や水や肥料を受け入れる土壌がなければすべて通り抜けてしまうねというところで、学び方を学ぶとか、すべてのものから学びとるとか、そういうことをすごくやってきています。
中3・高1が、中高一貫なのでチャレンジの時期・アクションの時期と名付けていまして、ここでいかにルーティンではなく決まりきった日々、決まりきった人間関係ではなく、外に出てチャレンジする、今までやったことのないことにチャレンジする、それがどれほど自分の将来の志を広げるか、というところで。すごく奨励していまして。
去年から始めたのが「マイ・ステージ」というものなのですが、生徒たちが自分たちで主体的に自分を開拓するために、校内はもちろんですが校外へも出て行ってチャレンジしてらっしゃいというものなんですね。去年始めたんですよ、ですけど、なんと、70団体以上・100名近い生徒がなんらかの受賞をしてきたんです。
おおた:
え!
西川:
学会、コンテスト、コンクール、試合、発表会、企業さんとか大学で今、すごくいろいろなことをやっていらっしゃる、そういったものに自ら、自分たちでチャレンジして、その受賞を全校生徒の前で月1回発表するんです。そうすると、あ、だれだれ先輩もとか、だれだれちゃんも、すごい、とか、私にもできるかもと。
おおた:
伝染するんですよね。
西川:
そういった土壌を大事にここ数年作ってくると、生徒はあっという間に変容します。
おおた:
ああ、なるほど!なにか一皮むけるんでしょうね。
どうしても生徒さんたち、すごく素直でいい子なんだけれども受け身になりやすくてというのは、時代なのかなと私は思っていて。よく学校で聞くことがあるのですが、(でも)そうやってちょっとうながしてあげることによって一皮むけてチャレンジ精神が出てくる。
そして中3・高1というところをチャレンジ・アクションと位置付けて、ルーティンではないことを、というふうに方針を学校として生徒さんたちに示したのはすごく意味があることだなと思っていて。ここが――中3・高1のこの部分こそ、一貫教育の醍醐味じゃないかなと。
西川:
まさに。まさにそうですね。
おおた:
そこで難しいんですけれど、どうしても高校受験とかあると、そこでこそルーティンをさせられてしまって。
西川:
そうなんです、そうなんです。
おおた:
そうじゃなくて、あなたたち自分の表現をしてみなさいというふうに良い意味ではっぱをかけることがこんなふうにあらわれるんだなと、すごく面白い事例だと思って。色々な教育の現場を私は見て、どういうことが生徒を変えていくのか、あるいは人は変わっていくのかということにすごく興味があったのですが、すごく勉強になりました。面白いですね。
西川:
教員とよく話すのですが、やっぱり生徒たちって、私たちがびっくりするような変容を遂げる時ってあるんですね。それは生徒によって違うしタイミングも違うんですけれども、それが、じゃあ何かといった時に、やはり目標を定めてそこへ向かっていく時なんですね。
それをうちは「ステージ」と、だから「マイ・ステージ」と(言っているんです)。ステージって本番一発ですよね、舞台。ですけれどもそこに向かって周到に準備して、うまく行くように、そして舞台にあがると。そこのプロセスがまずすごく成長するというのがひとつと。
もうひとつは、さっき受賞した生徒たちが100人ぐらいいると言ったのですけれども、その裏には受賞にたどりついていない生徒もいるわけですね。ということは、ステージが自分で成功したと思える生徒といまいちだった、うまくいかなかったと思う生徒もいるんです。
そのあとにまた成長するんです。「悔しい」「次こそやってやる」とか。そこが、そのステージを中高6年間あるので用意してあげることがすごく大事なんじゃないのかなと。
おおた:
すごくいいお話ですね。ステージというのは目標として、そこに到達するんだと、そのために周到な準備をしてというのがあって、そのプロセスは当然成長していくわけですけれども。
そしてステージだから当然結果が出る。いい結果、それほどでもない、思ったほどではない結果しか出せなかったという悔しい思いもあって。だけどそこで、いわゆる成功をステージで収めることがすべてではなくて。むしろ、中高生であるからこそ、不成功、悔しい思いをしたことのほうが、実はトータルで、人生全体で見たら、あの時の傷がよかったなというふうに思えることって人生、たくさんあるじゃないですか。
西川:
そうだと思います。でもそれを失敗したくないから、そういうチャレンジを当たり前にしておかないと、みんな「失敗するのが嫌・恥ずかしい」(というふうになってしまう)。特に女子は共感性がとても強いので、人目を気にしてしまって。いやいやそれは当たり前だよとそういう風土を作りたい(んです)。
おおた:
本当ですね。これは学校だけでなく、今の社会全体に言えることですよね。失敗が恥ずかしいことではなく、そういうふうに。失敗を恐れちゃって何もできない、挑戦できない、大人もそうだと思うので。今。すごく勉強になるお話です。
あとはこの番組、おそらく中学受験生の保護者さんなんかも聞いているというところでいうと、中学受験なんかもまさに「マイ・ステージ」ですよね。
西川:
まさにそうです。私、説明会なんかでも中学受験性の親御さまに申し上げるのですけれども。やはり受験って大事な、そこをどういうふうに向かい合ってあげられるのかというところで、私はいつも、僭越ながら親御さまに――私自身も中学受験生の母を経験しましたので、あとから気づいたことですと言いながら――どんな結果もプラスにしてあげられるのが親御さんたちのとても大事なことで。ステージなので、大成功もあれば、やはりうまくいかなかったと、あれだけ準備したのにということも当然あるんだけれども、それをこれからのプラスにしてあげられるのは親御さんしかできないんですよねという話はよくしております。
おおた:
本当ですよね。だからそれを、結果的にはネガティブな結果かもしれないけれども、そこからじゃあ何を学び取るのかという、それをまた、ヒントを与えてあげるのは大人である親の知恵の授けどころというところもあるでしょうし。
それが、(中学受験が)15歳とか18歳の受験と違うところ(だと思っています)。12歳だからこそ、親がそういう知恵を授けることができる。18歳・15歳であったら「私、失敗した」と思ったら親が何を言っても聞いてもらえないことがあるかもしれませんけれども、12歳だからこそ、親がまだ、どんな結果であれ、「これがあなたの頑張った結果なんだよ、誇りに思いなさい」と。たとえばね、そういうメッセージを伝えれば、子どもは素直にそれを受け取ってくれて、それが人生のお守りになるということもあるでしょうし。これが中学受験にチャレンジする意味だなと。
だから第一志望に受かる方っていうのは本当にごく一握りしかいないわけですけれど、じゃあそれが失敗か、恥ずかしいことというと、全然そんなことはない。そういう気持ちで中学受験に臨んでほしいなと私もいつも思っている、書いているんですけれども。
すごくそれが、学校の中においても「マイ・ステージ」という形で行われているということを知ってすごく嬉しく思います。
西川:
中学受験の親御さんってほんときついなと思うのは――これも私、あとからわかったことなんですが――絶対認識が育っていないんですよね。
おおた:
ああ。
西川:
小学生の高学年って、メタ認知って育っていないんですよ。早い子は小学生の高学年から(育っているお子さんもいるが、)でも多くのお子さんは中学校ぐらいから育ち始めるといわれていて。多くの親御さんがよく嘆かれるのは「なぜ勉強しないのか」とか、「試験があるってわかっていて」とか「成績がこれだけで」とか「行きたい学校があるのに行動がともなわない」と。(でも)当たり前ですよ、そうなんですよ、と。
おおた:
今と目の前しかわかっていないという。
西川:
そうなんです、そうなんです。でも親御さんも、だから大人の感覚ではなく、うちの子はまだこういうところは未熟なんだ、だったらどういうふうにコーチングしてあげればいいかということに目を向けてくださいと。必ずお子さんたちは、今は気づいていなくてもあとから気づくこともありますから、なんていう話をしているんですけれども。
おおた:
そして子どもが持っているそういう力にほんとに、先生、二度ぐらいおっしゃっていましたけど、後から気づくんですよね、親はね。
西川:
本当にそうです。
おおた:
なんだ、こんなにできる子だったんだというね、こんな力のある子だったんだというふうに驚かされて。
西川:
私なんか、こんな仕事をしていても、子どもには勝てませんでしたし。冷静になれませんでしたので。
おおた:
本当ですよ、私もそうでした。いや、そうですよ。すみません、学校の話からそれてしまいましたけれども、ついつい共感して色々聞いちゃいました。ありがとうございます。
Topics2:沿革
ハートの校章デザインも第一制服も明治時代から
おおた:
そういった、いきいきした学校の様子が伝わってきたわけなんですけれども、そもそもこの山脇学園という学校がどういった方によって作られて、どういった歴史を経てきたのか、そのへんのお話をうかがっていきたいのですがいかがでしょうか。
西川:
はい、わかりました。120周年を迎えたと先ほど申し上げましたが、山脇房子は1903年にこの学校を立ち上げております。私は初代校長・山脇房子は――夫の山脇玄が一緒に創設したのですが――知れば知るほど本当に素晴らしい志をもった人物で、時代を超えて今の生徒たちに伝えたい思いがとてもあって。それを伝え続けていきたいと思っているんです。
島根県の松江から単身、18歳で仙台に来るわけです。明治に入ったばかりの激動の時期に、女性が教育をすることもままならなかった、全然認知されていなかったような時代に、単身、仙台に赴いて宣教師のもとで英語や西洋のマナーを学ぶわけです。そういった中で、欧米人の方と接する中で、これからの日本は、これからの時代は女性が高い教養と品格を身につけて社会で活躍することが不可欠であると。それが国が発展する大きなことであるというふうに考え、山脇玄と一緒に、女性が高い教養と品格を身につけていくことを志として立てるわけなんですね。
様々な著書を残しているんですけれども、その中で、人は誰でも偉い人になりたい、お金持ちになりたい、美しい人になりたいという望みをもっているけれども、それはすべてかなえられるものではないかもしれない、でも、誰でも努力次第でかなえられること、それは、徳のある人になることです、と。
一番最初、女子実脩学校という名前で建てているのですが、学ぶことというのはただやみくもに学べばいい、知識をつければいいというものではありませんと。学びは実際の経験に照らしてみてこそ初めてその意味がわかり、そして自分の人生にいかされるのであります、という言葉がありまして。それを考えると、まさに今で言う探究学習、アクティブラーニング、まさに実際にやってみて学ぶこと、そしてそれを社会実装につなげることを提唱しているわけなんですね。このあたりも非常に新しいなと。まったく古びていない考え方であると思います。
ハートに富士の校章、この明治という時代にあって「ハート」という形をモチーフにしたこと…
おおた:
ああ、そうなんですか!これは明治からずっとこの形なんですか!!
西川:
そうなんです。
おおた:
それは意外だ!
西川:
ハートが表すものはまるい心、まるくやさしい心と、平和な心。それから、受け入れる心なんですね。中の富士は品格ある姿。裏表ない、美しい、品格ある姿と高い志といったもので。この校章ひとつをとってみても建学の精神がすべてあらわれているのです。
おおた:
さすがの伝統校ですね!
西川:
あとは、日本で初の洋装の制服ですか。
おおた:
ああ、そうでしたか。
西川:
これは今も「第一制服」としてワンピースで、ほとんど形を変えないで継がれているんですけれども、95%以上の女性が和装だった時代にですね、洋装の制服を取り入れようと考えて、デザインされ、そして新聞広告に載せ、全国から注目をあびて。翌年から志願者が爆発的に増えたという。すごくビジネスにも長けた女性だと思うんですよね。
おおた:
17、8で欧米から来られた方のもとで生活をおそらくともにして、そういう影響を受けていたからこその発想なのでしょうし、それをまたメディアに載せたというのが。当時の。
西川:
そうなんです。恥ずかしがってほとんど和装ですから、生徒も最初は着るのをためらった時に、自ら着て。何を恥ずかしいことがありましょうかと。
おおた:
プロデューサーでもあったわけですね!では、山脇という学校の中では、玄さんよりも房子さんのほうが影響が大きい…?
西川:
そうです。創設者であり初代校長で。房子先生ということになっております。
おおた:
すごく今、房子先生の人柄が、西川先生を通して伝わってきましたし、それを時代を超えて伝えていきたいと先ほどおっしゃっていましたけれども、それがこの、私立の学校における校長先生の一番の役割(だと思っています)。
昨日、房子先生と一緒に食事してきたんだけどこんなことを言っていたわ、ぐらいの感じで生徒さんた地に伝えていくと。
西川:
そう思っています。
おおた:
伝統校でしっかりとした理念を持った学校だからこそ今でも続いているのでしょうし、先ほど、房子先生が当時おっしゃっていたことが今の探究学習やアクティブラーニングにも通じる新しいことであるといううふうにおっしゃっていましたが、結局、教育において大事なことって、120年経っても変わっていない本質だと。これはおそらくこれからも変わらないところなんですね。人間が人間である以上。
そんなメッセージが伝わってきて、すごく伝統校が好きですし、今、東京でも、近くの外苑の問題なともあったりしてスクラップ&ビルドで新しくする方向に行きがちですが、変わらないものの価値というものが理解されるといいなと思います。すごく学校の理念、あるいは、先生のお話の中にそういう精神を感じて今、すごく嬉しく思いました。ありがとうございます。
西川:
ありがとうございます。実は、これは余談になるかもしれませんが、2000年まで全員(ヘアスタイルは)三つ編みだったんですよね。
おおた:
そうですよね。
西川:
2000年に、さすがに時代のあれでやめましたけれども、面白いのは、今、制服もものすごくたくさんバリエーションがあるのですが、生徒たちは、誰も言わないのに、今も大事なイベントには(生徒たちは)このワンピース――第一制服というのですが――で、三つ編みをするんですよ。
おおた:
えーっ!!
西川:
これは不思議だなと思って。なんか、そういう気持ちなのですかね。最後の合唱祭での中3生なんかもみんなそれをやっていますし、高校3年生の体育祭も、最後のダンスの時など、編める子はみんな三つ編みを編んできて。なんかこう、そういう、つないでいきたい気持ちって生徒の中にもあるのかなと。
おおた:
いやほんと、おっしゃる通りで、「つないでいきたい気持ち」なんですよね。言葉にしちゃえば「伝統」ということなのでしょうが、なにかその、形のない、無形の文化に対する畏怖の念・憧れの念みたいなものがあって。この気持ちを伝えていきたいという、それこそが、伝統そのものの形が大事なのではなくて、何かを私は受け継いだと、それをつないでいきたいという気持ちを持つという、理屈じゃないところでの人間の営みだと思うんですよね。
西川:
そうなんです。理屈じゃない。私はすごく嬉しく、好ましく見ているのですけれども。
おおた:
その感受性があるって人間としてすごく大事なことだと私は思うんですよね。これは理屈じゃなくて大事なものだと、これは受け継いでいかなければならないものだと。これは損得勘定とか合理性では説明できないことですものね。
西川:
本当にそうです。
おおた:
ああ、すごくいいお話を聞きました。
Topics3:保護者様へのアドバイス
経験させ、自分で考えさせて決められる力をつける
おおた:
すごく今、色々なお話を聞いてきたのですが、山脇学園らしさみたいなものをなにか一般のご家庭でも取り入れるヒント、あるいは子育てのアドバイスのようなものをいただければと思うのですがいかがでしょうか。
西川:
先ほどから言っています「志」という言葉ですが、本校では房子先生から引き継いでいる志、本校には1600人の生徒がいるのですが、1600人いれば1600通りの一人ひとりの志があります。それを6年間で育てるのが本校の志です。
お子さんって、たくさんの志の「種」を持ってうちの学校に入学されますが、どんな種を自分が持っているか、あるいは、いつどんなきっかけでそれを見つけられるかということは自分でもわかっていない、もちろん親御さんもわかっていないと思うんです。
例えば、藤井聡太さんとか大谷選手みたいに、幼いころから秀でた才能を開花させる人もいますけれども、多くのお子さんは、自分は何が得意なんだろう?何をしたいんだろう?と、わからないまま、学生時代をなんとなく過ごしてしまう。そうすると、親御さんは、色々言いたくなりますね。「ちゃんと考えているの?」「あなたはこれが向いているんじゃないの?」あるいは、学校選びも「あの学校がいいわよ」とかついつい言いたくなるわけです。
そうなるとお子さんは、自分がやりたいことではなく、親御さんの希望をかなえようとするようになるわけなのですね。
私はこれからVUCA――不透明で不確実な未来、変化が激しいといわれる未来の社会で活躍するためには、どのような状況においても、自分で最適解を求めて、自分の人生を自分で主体的に選択していける力が大事じゃないかと。つまり、誰かに決めてもらったり、うまくいかなければ人のせいにするということではなく、自分で突破していかなければいけないというときに、先ほどお話した、目標をもってそれに向かっていくチャレンジ精神、舞台に上がっていくステージ、それをたくさん踏ませてあげたいし、ご家庭でもその気持ちをもって、難しいのですけれども、のぼっていただきたい。
大人の役割は、先ほどもお話しましたが、こうしなさいああしなさい、これがあなたの道よと指し示すことではなく、自分で経験させて自分で考えさせて決められる力をつけることであるということで、結果がもし悪ければ(1)になるようにしてあげる、ということだと思っていますので。ぜひそこは、ご家庭と一緒にやっていきましょうと本校の親御さんにはお伝えしています。
<確認クイズ>
(1)に当てはまる言葉の組み合わせは何でしょう?
おおた:
ありがとうございます。自分で考えて決められるようになるために、どうしても親は、不安だから自分の知っていることを良かれと思って言おうとするんだけれども、でも、親の知らないところにその子の「種」があるかもしれない。それをいろいろな方向に、その子自身が伸ばしていっている、興味みたいなことを大事にしてあげて、それが伸びていくのを見守って。それが親にとってはすごく苦行だったりするわけですけれども…。
西川:
そうです、苦行です。
おおた:
でも、子供も頑張っているのだから、親も頑張ってそこは、自分を律して見守る係に徹して。そしてもしチャレンジの結果が伴わなったとき、親もつらいじゃないですか、これは。見ている親も。
西川:
はい、そうなんです。
おおた:
そうなんだれども、そこでこそ、その結果をどういうふうに糧に変えていくのかということを寄り添いながら。一度は落ち込むのでしょうけれども、それからまた子どもが再び前を向いて胸をはれるように、そこにまた寄り添ってあげるのは、親だからこそできることなのかなと。
西川:
そうですね。それができるとお子さんたちって、教員や親御さんがこの子はこんな感じかなと思っている枠を超えてくるんですよね。
おおた:
なるほど。
西川:
だから、私たちが勝手に「この子はこのぐらい」と決めて進めるなんておこがましくって。こちらの想像を超えてほしいんです。なんなら私たち以上に、超えて、世界にはばたいてほしい。
おおた:
それは本人が考えて決めたことなら超えていけますよね。
西川:
そうです。そう思います。
おおた:
こうしなさい、と言われたのではその枠の中ですものね。
西川:
やらされているうちはだめです。
おおた:
ちょっと私も、自分の「親」としての側面が出てしまいましたけれども。いや、楽しかったです、ありがとうございました。
西川:
ありがとうございました。
おおた:
盛り上がりすぎてすみません。
西川:
とんでもありません。
おおた:
校長室訪問、今回は山脇学園中学校・高等学校の校長、西川 史子生生にお話をうかがいました。西川先生、ありがとうございました。
今回の内容のご感想やコメントなど、ぜひお送りください。
(私たちが責任をもって文化放送さんにお届けします)
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