この記事は、文化放送PodcastQRで毎週月曜日に配信されている「【中学受験】おおたとしまさの『校長室訪問』」の内容を、確認クイズ付きでWeb再録したものです。
配信内容を書き起こすとともに、その一部を「穴埋め(ブルダウン式の三択)」クイズにしております。
番組を聴きながら穴埋めを完成させて、楽しみながら学校への理解を深めていただければ幸いです。
今回お届けするのは、
世田谷学園中学校・高等学校 (東京都 世田谷区)の校長、山本 慈訓先生のお話です。
番組の聴取は下記より↓↓
【大切なお願い】
※このWeb再録は、「【中学受験】おおたとしまさの『校長室訪問』」をより楽しんでいただくための取り組みとして、文化放送様の許諾をいただいて実施している特別企画です。
クイズを楽しんでいただいたあとは、ぜひページ末尾のアンケートフォームから、番組のご感想やリクエストなどをお送りください。
この企画を続けていくことができるかは皆さまのお力にかかっております。ご協力、どうぞお願いいたします!
※本テキストの著作権は、株式会社文化放送に帰属します。本テキストの一部または全部を無断で複写・複製することは法律で禁じられております。
Topics1:学校の概要
生徒の発案で体育祭の形を変更
おおたとしまさ氏(以下、おおた):
それでは世田谷学園中学校・高等学校の校長、山本 慈訓先生にお話をうかがっていきましょう。山本先生、よろしくお願いします。
世田谷学園中学校・高等学校
山本 慈訓 校長先生(以下、山本):
はい、よろしくお願いします。
おおた:
(中略)まず学校がどんなところにあるのか、最寄りの駅や周りの環境を教えていただけますでしょうか。
山本:
住所は世田谷区の三宿で、国道246号線から少し入った閑静な住宅街の中にあります。いくつかの路線や駅に囲まれているのですが、最も近い駅は東急田園都市線や世田谷線の三軒茶屋になります。そこから歩いて、私の足だと10分ぐらいですけれども、生徒は若いのでもっと速くついてしまうと思います。
田園都市線の三軒茶屋の駅は急行も止まりますので利用する生徒も一番多いです。世田谷線を利用している生徒は田園都市線ほどはいませんけれども、趣のある路線ですので、特に鉄道好きの生徒にはたまらないんじゃないかと。
おおた:
ほんとですよね。あの世田谷線っていわゆるむかしのチンチン電車みたいな風情が残っているちょっと小さな。2両編成でしたっけ。
山本:
そうです。
おおた:
あの小さな、いまどき珍しい。
山本:
東京に都内に残る2つの路面電車のうちのひとつなんですね。
おおた:
一方で、田園都市線というのは神奈川の奥の方までつながっていますし、あるいは地下鉄で都心まで乗り入れているしということで、非常にアクセスのいいところに見えます。そういったアクセスのとてもいい場所にある世田谷学園さんですが、最近の学校の様子など教えていただければと思うのですが、いかがでしょうか。
山本:
実は明日までが一学期の期末試験でして、ですから今生徒たちは「あと1日だ」と思って力を振り絞っている時なんですけれども。
おおた:
一番しんどい時ですね(笑)。
山本:
そうですね(笑)。試験が終わりますと、本校は仏教の禅を教育の柱に持つ学校ですので、10日の月曜日には精霊祭(しょうれいさい)というお盆の行事があります。(中略)それが終わって1日おいて(7月)12日の水曜日には、東京体育館をお借りして体育祭を開催します。男子校なので高校生のリレーなんかは体育館の床が地響きしてとても迫力があります。
おおた:
ああ、そうですか。東京体育館を使用するというのはずっとそういう伝統で?
山本:
いえ、東京体育館は昨年からです。一番最初は代々木第一体育館を使っていました。あとは等々力アリーナですか。
おおた:
でも、いつもだいたい外の施設を利用する形が多いんですね。
山本:
そうです。ただ実は、以前は体育競技会と言いまして、学校の校庭や体育館を使って色々な種目で学年ごとのクラス対抗戦を行っていたんですね。それが、生徒たちのほうから「学年ごとではなくて学校全体が盛り上がってひとつになれる、そしてみんながもっと主体性や協働性を発揮できるそういう行事を自分たちの手で作りたい」という声があがりまして、2017年から今の体育祭が始まったんです。
おおた:
ああ、そういうことですね。なるほど、勉強になりました。ありがとうございます。
山本:
縦割りで5つの色のチームにわかれて対抗戦を行う形をとっているのですが、練習、運営、そして片付け、高校生が中心となりますけれど、すべて生徒主体となります。
生徒主体というと聞こえはいいんですが、ただ、一歩間違えればただの放任になってしまうかと思うんですね。(ですが)世田谷学園では生徒がこうしたい・こういうことをしたいと言い出して、そして動き出す、そのあとを教職員が見守りながら付いていくという形で絶妙な距離感でフォローをしています。
生徒は当然、色々な問題に直面するのですけれども、自分たちで考えて話し合って協力しあって克服するという、そういうプロセスが明確にあるわけですね。それを経験するということはこれからの人生を考えてもとても大きな意味があるというふうに思っています。
お借りした体育館の係の方が「こんなに生徒だけで体育祭を動かしている学校は見たことがない」「動きが機敏で見事だった」ということを言ってくださったんですけれども、これが生徒も我々教職員もとても誇らしかったです。
おおた:
励みになりますよね。
山本:
そういう高校生に中学生は憧れを持つんですね。学園の機関誌には高校生になっている自分を想像してみようというテーマで新入生にひとことずつ書いてもらったりするんですけれども、体育祭のあと会場の前のごみを拾う先輩がいた。最後まで責任をもって行動する姿は輝いていた、そういう高校生になりたい、そんなことを書いてくれる子もいます。高校生が中学生のよきモデルとなってそうやって継がれていくんだと思います。
おおた:
まさにこの、5歳年上のお兄ちゃんたちがいるというのは、中高一貫校の魅力ですよね。このごみを拾いなさいということを先生が言うよりも、先輩たちがごみを拾っている姿を見ることのほうがよほど効果的というか。
山本:
そうですよね。
おおた:
先輩がロールモデルになってくれるというのはすごい教育力ですよね。
山本:
彼らが学年ごとではなくて学校でひとつになれる行事を自分たちの手でつくりたい、それがまさに今実現してきているのかなと。
学力の三要素の中に、主体性、多様性、協働性という言葉がありますけれども、これらは教えて育つというよりも自ら発揮することで育っていく、そういうものだと思うんですね。
体育祭ですとか、9月には我々「獅子児祭」と呼んでいる文化祭があるのですが、こうした行事というのは絶好の機会だと思います。「獅子児祭」では、終わった時に、生徒が世田谷学園にはやりたいことを応援してくれる先生と環境が揃っていると、あるいはこの学校にいればなんでも挑戦できるということを言ってくれていてとても嬉しく思いました。そんな雰囲気がある学校ですね。
すみません、あとひとつよろしいですか?
おおた:
はい、お願いします。
山本:
世田谷学園は今の中学3年生以降、本科コースと理数コースの2コース制をとっているんですが、その時に同時に始まった「土曜プログラム」というものがあるんですね。これは生徒の知的好奇心を刺激したり、彼らの学びをより確実により深くしたりするために、通常の授業の枠を超えたアクティブで楽しい学びを提供していこうというものなのですが、本科コースは各教科を幅広く、理数コースは理数系のプログラムを用意しています。
本科コースでは先ほどの世田谷線沿線の巡検にでかけたり、ショートショートを書いて星新一賞に応募したり。理数コースでは世田谷区の農協さんから農地をお借りしているのでそこで野菜を育てたり、宇宙エレベーターというのを作ってプログラミングで動かしたり、理数好きの子にとってはわくわくするような(プログラム)ではないかと思います。
おおた:
なるほど、ではまさに土曜プログラムというのは学びの個別化とか探究化といわれるところに対応するプログラムですね。
山本:
そうですね。頭だけではなくて、身体と心を使っていきいきと学ぶ。それを通して学ぶことは楽しいんだということをその実感をたくさん味わってもらいたい。それによって、主体的に学ぶ姿勢というのが育っていきますし、3年生以降の探究的な学びの下地にもなると思っています。
世田谷学園は生徒の知性をクリエイティブな知性に高めたいと考えており、その一環なのですね。(もうすぐ)創立125周年を迎えますので、それに向けて教育内容、それから施設設備ともにさらに充実させていきたいと考えています。
Topics2:沿革
「Think&Share」≒天上天下唯我独尊?
おおた:
今ちょうど「125周年」といったお話もあったのですが、そもそもにおいてこの学校はどういった目的でどういう方が作られた学校なのか、学校の歴史についてもうかがってよろしいでしょうか。
山本:
世田谷学園は1592年(文禄元年)――豊臣秀吉の時代になりますが――今は駒込にあるのですが、当時は江戸の神田台にあった吉祥寺という曹洞宗のお寺ですね、そこに誕生した旃檀林(せんだんりん)という学寮を起源としています。
おおた:
寮なんですね。
山本:
そうですね、学びの寮。創立の年は明治に入って当時の私立学校令に準拠するようになった1925年(明治35年)としています。そういう成り立ちですので、仏教の禅が教育の柱にあるわけなんですね。ただ教育の柱として仏教・禅があるわけで、強要するというものではありません。
教育理念は「Think&Share」という英語で表現しているのですが、この言葉であらわすようになったのは1991年の創立90周年ですね、その時に21世紀を見据えて教育理念の再構築を行ったんです。それからなのです。
これは仏陀(すなわち)お釈迦様の天上天下唯我独尊ということばを世界の人々にも理解していただけるように表現したものなのですが。天上天下唯我独尊というと世間ではエゴイズムの象徴のようになってしまっていて、でも実はこの言葉には、人は一人ひとりがかけがえのない尊い存在であり、誰もが立派な人間になることができる力があるという人間観と、人は固有の価値観や文化を持っておりそれをお互いが理解し認め合うことで平和な地球社会の創造が可能となるという世界観が込められているんですね。
「Think&Share」のThinkは人間観、Shareは世界観をあらわしているんです。それぞれ「明日をみつめて、今をひたすらに」「違いを認め合って、思いやりの心を」というモットーをたてています。
この90周年の時の教育理念の再構築によって、仏教、禅が教育の柱というのがどういうことかというのを理解していただきやすくなったのではないかと思うんですね。この2つのモットーは教室にも掲げてありますし、生徒たちはこの学校に通ううちにこのモットーがだんだんと身体と心にしみこんでくるということを言ってくれています。
Topics3:保護者様へのアドバイス
お子さんはそこにいてくれるだけでありがたい存在
おおた:
そういった長い長い歴史の中で、そしてまた時代に合わせた形でモットーを作り直して鍛え直して、そしてそれが生徒さんたちに今、しみこんでいるというお話もありましたけれども、そういった世田谷学園の教育のエッセンスをなにか一般のご家庭でも取り入れるヒント、あるいは子育てのアドバイスのようなものをいただければと思うのですがいかがでしょうか。
山本:
生徒たちには、私たちは何のために生まれてきたのかといえば、それはたった一度の人生を自他ともに自分も他の人もともに幸せに生きて行くためなんだよということを言っています。
先ほどの2つのモットーというのはそのための指針に当たるものなのですけれども、これが身体と心にしみこんでいくその上で欠かせないものがあるんです。
それは(1)の心なんですね。
<確認クイズ>
(1)に当てはまる言葉の組み合わせは何でしょう?
「恩送り」という言葉がありますが、誰かからいただいた恩に心から(1)をする人というのは、その恩をいただいた方に返すだけではなく、別の方にも送ろうとします。それが思いやりの心、慈悲の心。それから今ここに自分があるのは決して自分の力だけではない、家族をはじめ、多くの方々のおかげさまである、そのことに思いが至ると、今ここにある自分をおろそかにできなくなります。今をひたすらに生きる勇気が生まれてきます。
先ほど、世田谷学園は生徒の知性をクリエイティブな知性へと高めたいというお話をしたのですが、実はそれだけでは不十分で、思いやりの心と勇気の心をともなってこそ、人生を自他ともに幸せに生きていける人となると思うんです。そういう人を育てることが、世田谷学園の教育の目的になります。
「おかげさまで」「ありがとう」という(1)の思いを心に抱いて、言葉にはことだまがあると言いますけれども、それを口に出して言うということはとても大切なことだと思うんです。世田谷学園にも(1)の心を育むさまざまなしかけがあるのですが、でもやはりお子さんの心を育てる上で御家庭の影響はとても大きいと思うんです。
実はこの校長室には日めくりカレンダーがありまして、この録音が公開されるのは(7月)10日というふうにうかがっているのですが、10日の言葉は「親が子に与えられる最も大切な財産は、親の生きる姿ではないでしょうか」なのですね。ですからぜひ保護者の皆さまから、ぜひお子様にありがとうという言葉を口に出してたくさん伝えていただきたいなと思います。
ありがとうって、地球で一番エネルギーのある言葉だと思うんですね。そうすると、自然と感謝のできる人、感謝の思いが強い人へと成長していくのではないかと思います。
学内の弁論大会で以前ある生徒が、「家族がいる、仲間がいる、衣食住が満ち足りている、当たり前に思えて実はそれだけでありがたいということが僕たちにはたくさんある」ということを言いました。まさにその通りだと思うんですね。
普段一緒にいる身近な存在なだけに言い忘れている「ありがとう」があるかもしれません。あるいは照れくさくて言えない「ありがとう」があるかもしれません。
そもそもお子さんはそこにいてくれるだけでありがたい存在だと思うんですね。大切な宝物と思うんです。それをお子さんに伝える、その努力をする、その姿勢を示すということは、お子さんの心の根っこを育てる上でとても、とても大切なことなんじゃないかとそう思っています。
おおた:
ありがとうございます。「おかげさまで」と「ありがとう」の気持ちとが大事だよということを、親が口で子どもに説明するのではなくてまず自分の生きる姿として実践を見てもらうということですね。子どもに対してもありがとうという気持ちを伝えることも大事ですし、そして、「おかげさまで」というのは、子どもがいるから頑張れるというところは親にあるじゃないですか。
山本:
そのとおりですね。
おおた:
そういう気持ちはついつい「なんで言う事を聞かないの」ということに親をしていると目が向いてしまうのですけれども、でもこれってすごく幸せなことでありがたいことだよね、ということを親こそ忘れてはいけないと。
山本:
そうですね。普段の生活の中で見失いがちになってしまうことってあると思うんです。
おおた:
ですよね。なんでもっと勉強してくれないの、なんでもっとこうしてくれないのというふうに、もっともっとという欲が親の方がでてきてしまったりするものですが、でも(実は)いてくれるだけでなんて奇跡的なことなの、ということを時々思い出さないと…
山本:
そう思います。
おおた:
…いけないんですよというメッセージかと受け止めました。
校長室訪問、今回は世田谷学園中学校・高等学校 の校長、山本 慈訓生生にお話をうかがいました。山本先生、ありがとうございました。
今回の内容のご感想やコメントなど、ぜひお送りください。
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