この記事は、文化放送PodcastQRで毎週月曜日に配信されている「【中学受験】おおたとしまさの『校長室訪問』」の内容を、確認クイズ付きでWeb再録したものです。
配信内容を書き起こすとともに、その一部を「穴埋め(ブルダウン式の三択)」クイズにしております。
番組を聴きながら穴埋めを完成させて、楽しみながら学校への理解を深めていただければ幸いです。
今回お届けするのは、
十文字中学・高等学校 (東京都 品川区)の校長、横尾 康治先生のお話です。
番組の聴取は下記より↓↓
【大切なお願い】
※このWeb再録は、「【中学受験】おおたとしまさの『校長室訪問』」をより楽しんでいただくための取り組みとして、文化放送様の許諾をいただいて実施している特別企画です。
クイズを楽しんでいただいたあとは、ぜひページ末尾のアンケートフォームから、番組のご感想やリクエストなどをお送りください。
この企画を続けていくことができるかは皆さまのお力にかかっております。ご協力、どうぞお願いいたします!
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Topics1:学校の概要
(校長先生の挨拶は)「2分でお願いします!」
おおたとしまさ氏(以下、おおた):
それでは十文字中学・高等学校の校長、横尾 康治先生にお話をうかがっていきましょう。横尾先生、よろしくお願いします。
十文字中学・高等学校
横尾 康治校長先生(以下、横尾):
はい、よろしくお願いします。
おおた:
(中略)まず学校がどんなところにあるのか、最寄りの駅や周りの環境を教えていただけますでしょうか。
横尾:
十文字中学高等学校は、山手線の巣鴨駅からだいたい5分ぐらい歩いたところにあります。巣鴨といいますと、池袋の2つ隣ということで、本当に都心なのですが、巣鴨と聞いて思い出す有名なところは「おばあちゃんの原宿」とも言われる巣鴨商店街です。巣鴨商店街にはとげぬき地蔵とか…あとは塩大福も有名ですね。非常に有名な通りですが、そこからちょっと入ったところ、学校は住宅街の中の閑静な、都心にあるけれども落ち着いた雰囲気のところに学校があります。
おおた:
駅の反対側に行くと六義園があったりとか、ちょっと昭和の香りが残っている街並みですよね。
横尾:
そうですね。ソメイヨシノの発祥の地であったり、雰囲気はとても良いところだと思います。
おおた:
そういった立地にある十文字中高さんですが、最近の学校の様子をお聞きしても良いですか?
横尾:
とても元気な生徒が多いのが特徴だと思います。社会に出て活躍する自立した女性の育成を目標にしております。多くの行事、色々な活動を自分たちで企画運営することがとても多いです。女子だけということもあるので、本当に遠慮しないで一人ひとりに何かしら役割があるんですね。重いものを持ったり、自分たちでつくりあげて本当にみんなで協力しながらという形があるので、自分たちで学校をつくるという自負心が高いのではと思います。たとえばおとなしいタイプの生徒でも、自分が活躍することが多いので、自然と元気になっていくということかなと思います。
おおた:
学校の中に自分の役割とか立場があるのを感じられるからイキイキしてくる、そういうことがあるかもしれませんね。
横尾:
そうですね。行事だけではなく生徒会活動とか部活、部活もすごく活発なんですね、生徒広報委員といった活動だったり、ボランティアも「スキップらんらん団」というものがあり…本当にたくさん活動があるので、自分が一番輝ける場所を見付けて、何かしらやっています。そんな感じです。
おおた:
生徒広報委員…?
横尾:
これは面白いんですよ。どんな活動をしていても誰でもこれに参加する権利があって、自分の都合の良い時に参加できるんですね。たとえば説明会があった時なんかは学校の紹介を生徒が全部自分たちで構成からパワーポイントから自分たちで作って、私たちはこれを紹介したいから紹介しますとしてくれたりとか。一番最近面白かったのは、この生徒広報委員がすべて、最初から最後まで全部企画運営した説明会をやってくれたんですよ。
おおた:
受験生の保護者向けの学校説明会を?
横尾:
そうです。個別相談も全部自分たちでやっちゃって。先生たちはもう出る幕なしで。
おおた:
それは頼もしいですね。なんなら毎回やって!みたいな(笑)。
横尾:
本当にそうなんですよ。年に4回企画して、その4回ももっと規模が小さいものかなと思っていたら、生徒たちはどんどんアイディアが出てきて。先生たち、もういりませんから、私たちがやります、と(笑)。
おおた:
嬉しいんだか悲しいんだか、保護者の受けもそちらのほうがいいんでしょうね。
横尾:
まったくおっしゃるとおりで、毎回、生徒の活動にはもう、驚かされますね。
おおた:
保護者の方々も、娘がこんなふうになってくれるんだったらこの学校に預けたいわと思いますものね。
横尾:
そうですね、やはり直に話せるのは説得力があるみたいですね。
おおた:
本当ですね。それは受験生の親御さんにとってもありがたいことだと思います。
横尾:
面白いのは、私は校長なので「私の出番は?私はいつも学校紹介をしているんだけど…」と(生徒に)言ったら、「わかりました。じゃあ先生はあいさつだけお願いします」と(笑)。
おおた:
短くね!と言われたりして(笑)。
横尾:
「何分で?」と聞いたら「2分でお願いします」と(笑)。楽しいですね、こういうことをやっていると(笑)。
おおた:
ほんとうですね。今、お話をしていても、先生もすごくおおらかで優しいお人柄で。生徒さんも、もう軽いノリで「じゃあ、よろしく!」みたいか感じでやりとりをされているんだろうなというのがちょっと眼に浮かびます、すごく楽しそうな風景が。
Topics2:沿革
学ぶこと、社会で活躍することを両輪として
おおた:
そういった元気で明るい雰囲気が伝わってきましたが、そもそもこの学校はどんな方がどんな問題意識で作られた学校なのか、歴史の面からもお話をうかがってもよろしいでしょうか。
横尾:
十文字は1922年の創立で、今年で101周年を迎えるのですが、創立者は「十文字こと」といって京都の出身なのです。京都といっても京丹波町といって、そうですね、当時は本当に田舎で、近くに学校のないような…
おおた:
今は黒豆で有名なところですよね。
横尾:
そうです。今はもうずいぶん栄えていらっしゃるんですが。150年前、生まれた当時は本当にけもの道を歩いて学校に行かなくてはいけないそんなところで、もっと近くに学校があればいいのになということを思いながら子どもの頃は通ったそうです。そういった苦学を歩んだ十文字ことですけれども、当時、女性が学校で学ぶという難しさや社会活躍の機会を得ることの難しさを身に染みて自分でも体験しているので、なんとしても女子校を作りたかったんですね。
実業家である夫の十文字大元から金銭的な支援を得て、十文字大元って体が弱くて、当時自分の体を直すのに特殊な呼吸法、体を動かすことをやっていて。それがとてもよかったので、色々な人に広めたいということで「自彊術(じきょうじゅつ)」という体操を開発したんです。その開発した体操を学校の正課として取り入れてくれるならお金を出しましょうと。
おおた:
1922年というと大正11年、関東大震災が起こる2年前という時代ですよね。このころ確かにできた学校は大正新教育、このころ作られた学校は非常に多くて。今年100周年ですという学校が多いですがその中のひとつであって。
大正時代というのは、いわゆるお金持ちの方々がそうして投資をして学校を作ろうと、そういった形の学校が多かったですが、十文字さんの場合は旦那様、夫のほうが実業家でお金をもっていて、その妻のことさんが自分が幼いころに学校に通うのも苦労したという想いを基に夫から出資をしてもらって作った学校であると。そういった背景ということですね。
横尾:
こと自体は、師範学校を出て教員をやっていたんですけれども、結婚してからは夫の会社を切り盛りすることで本当に苦労して、教育の部分と社会活躍の部分と両方体験しているんですね。
おおた:
なるほど、もともとことさんも師範学校を出られたエリートの先生だったわけですね。
横尾:
そういう意味では学校で学ぶこととと社会で活躍することの両輪をセットにして学校を作りたいという想いがすごく強かったんです。
おおた:
ちょうど大正時代で、女性も活躍ということが盛んに言われた時代でしたしね。
横尾:
そうですね、大正デモクラシーのまっただなかですものね。
おおた:
それが実業家である夫の協力を得て、実社会のビジネスのことも身近に感じながらご自身が教員をやっていた経験を活かして理想の教育を実現するという想いを持ってつくられた学校なんだろうなということが伝わってきました。
横尾:
そういう意味では…ということになるかわかりませんが、(本校には)卒業して自分で起業する生徒が案外多いですね。
おおた:
起業家精神みたいなものが受け継がれている、(あるいは)当初からあったということなんですね。
横尾:
そうですね。
Topics3:保護者様へのアドバイス
主体性を伸ばすコツは2つある
おおた:
そういった生い立ちを持つ十文字中高さんですが、その教育のエッセンスを一般のご家庭でも取り入れるヒント、あるいは子育てのアドバイスのようなものをいただければと思うのですがいかがでしょうか。
横尾:
わかりました。本校では「主体性を伸ばす」を大きなテーマとして掲げて教育活動を行っております。主体性というと少し難しく聞こえるかもしれませんが、スポーツをしたりダンスを踊ったり絵を描いたり(そういった活動は)全部主体的で。好きだからどんどん上手になるし、もっともっと上達したいということで自分でハードルを少しずつあげていって楽しんでそれをやっている。これが主体性だと思うんです。
学校の活動って、そう考えるとすべて主体的になるなと思うんですよ。生き方を主体的にいろいろなことを生きて行くとそれだけ人生は楽しくなっていくので、どんどん主体性を伸ばしていってほしいなと思っているんです。
ただ、主体性を伸ばすためのコツというのが二つあると思っています。
おおた:
教えてください。
横尾:
一つ目は「興味関心の種まき」。もう一つは「自分で決める」ということです。
もうちょっと詳しくお話しすると、「興味関心の種まき」というのは実はいつでもできるんですけれども、ご家庭では親子の対話がすごく重要だと思っています。たとえば、そうですね、お父さま・お母さまが読書をしている、その時に、「この本にはこんなことが書いてあったよ」とか「これすごいよね」とかぜひお子さんにも聞かせて欲しい。
そうすると、本だけでなくてもテレビでもなんでもいいんですが、ちょっとでも刺激になることがあったら「これ面白いよね」と声をかけることで子ども達は本当に、そこに「そうかな」と興味を示していくんですよね、本当に何気ない日常でも「なんだろうね」とか「面白いよね」と対話することが興味関心の種まきだと思います。
おおた:
近くにいる親御さんだからこそできるすごくカジュアルな種まきですよね。
横尾:
はい。
おおた:
本を読んだりテレビを見たり、ちょっとしたことであっても「これおもしろいよね」と親の心が動いたことを伝えてあげる。そうすることによって”面白い”が子どもに感染していく。いろいろなことに感染させていって、その中にヒットするものがひとつでもあれば素晴らしいですね!
横尾:
本当にささいなところでヒットするんですよ。これが人生を変えたりするんですよね。これが一つ目です。
もうひとつは「自分で決める」ということなのですが、どうしても色々なものを与えたくなるので、親があれしなさいこれしなさいと言いたくなるところだと思うのですが、あれしなさいこれしなさいだといつまでも自分で選べないので、主体的にはなれないので。
ですので、たとえば「勉強しなさい」ってつい言ってしまうじゃないですか、でもそこのところを、たとえば「(1)」って聞いてみるといいと思うんですよ。
<確認クイズ>
(1)に当てはまる言葉の組み合わせは何でしょう?
おおた:
ああ、素晴らしいですね。
横尾:
何食べる?みたいな感じですよね。
おおた:
そうですよね。
横尾:
この聞き方の方が子どもが自分で考えるサイクルに入っていくので。いつまでに・何を・どのようにというところを大事にして、自分で決めさせるというのがすごく大事なポイントだと思います。
おおた:
「勉強しなさい」ではなくていつまでに・何を・どういうふうに勉強すると自己決定をうながすような聞き方をしてあげることによって、自分が選んだ、あるいは聞かれることによって自分がやりたいことが引き出されることもあるでしょうし、それはすごく、言い方ひとつですが相手に与える印象が全然変わってきますよね。
横尾:
そうですね。社会に出ると、与えられるのではなくどんどん自分で決めなきゃいけないし、それが当たり前のところにぽんと放り出される感じですよね。(ですから)中学生・高校生のうちから常にそういうマインドとか思考を経験しておいたほうが、スムーズに社会に出ていけるんじゃないいかなと思います。
おおた:
親御さんとしては自分の手の内にある、自分の近くにいるうちにできるだけ多くを与えたいからとついつい「わんこそば」状態になってしまって。次から次に、そばだけじゃなくておにぎりとかスパゲティとか、いいと思うものは与えたくなってしまうんだけれども、「どれからいく?」「こんなのあるよ」と聞いてあげるだけで本人の意識が変わって来るということかと思います。
ちょっと言い換えさせていただきますと、ひとつは「面白いを感染させちゃおう」興味関心の種まきをしていこうと。もうひとつは「自己決定の原則」。何かを与えるのではなくてどうしたい?と、本人の意思を問うような聞き方をすることによって自己決定をうながして主体性を引き出すというコミュニケーションのコツを教えていただきました。ありがとうございます。
校長室訪問、今回は十文字中学・高等学校の校長、横尾 康治生生にお話をうかがいました。横尾 先生、ありがとうございました。
今回の内容のご感想やコメントなど、ぜひお送りください。
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