この記事は、文化放送PodcastQRで毎週月曜日に配信されている「【中学受験】おおたとしまさの『校長室訪問』」の内容を、確認クイズ付きでWeb再録したものです。
配信内容の主要部分を書き起こすとともに、その一部を「穴埋め(ブルダウン式の三択)」クイズにしております。
番組を聴きながら穴埋めを完成させて、楽しみながら学校への理解を深めていただければ幸いです。
今回お届けするのは、
東京立正中学校・高等学校(東京都杉並区)の校長である梅沢辰也先生のお話です。
番組の聴取は下記より↓↓
【大切なお願い】
※このWeb再録は、「【中学受験】おおたとしまさの『校長室訪問』」をより楽しんでいただくための取り組みとして、文化放送様の許諾をいただいて実施している特別企画です。
クイズを楽しんでいただいたあとは、ぜひページ末尾のアンケートフォームから、番組のご感想やリクエストなどをお送りください。
この企画を続けていくことができるかは皆さまのお力にかかっております。ご協力、どうぞお願いいたします!
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Topics1:教育理念
「健全な、きちんとした一市民」へと育てたい
おおたとしまさ氏(以下、おおた):
それでは、東京立正中学校・高等学校の校長、梅沢辰也先生にお話をうかがっていきましょう。梅沢先生、よろしくお願いします。
東京立正中学校・高等学校
梅沢 辰也 校長(以下、柴田):
こんにちは、よろしくお願いします。
おおた:
東京立正中高さんは場所的にはどのようなところにございますか?
梅沢:
(東京都)杉並区です。最寄り駅は丸ノ内線の新高円寺になります。(駅から学校まで)徒歩10分かからないぐらいでしょうか。
おおた:
東京立正中高さんは、どういったことを大切に教育を行なっている学校なのでしょうか。
梅沢:
そうですね…エリートを育てるとか特別なリーダーを育てるということではなくて、一人ひとりを(私の言い方でいうと)「健全な、きちんとした一市民」に育てる責任があると思っています。
学校全体の雰囲気としましては――運動部に入っている生徒が多いからかもしれませんが――明るく元気よく「あいさつが気持ちいい学校だね」と言われることも多く。先生方もまじめ、生徒もまじめ、ちょっとまじめすぎるんじゃないかという心配がありますけれど(笑)そんな学校です。
おおた:
まじめすぎるって――半分冗談でおっしゃっているとは思いますが――先生はどんなところでそう感じるのですか?
梅沢:
そうですね、生徒は良く言えば「素直でいいね」ということになるのですけども、(大人や教師が)言ったことに「はい」と言って行動するのですが、ただ、私が毎週月曜の全校集会で話しておりますのは「もうちょっと批判的に物事を考えるとか、なぜだろうかとクエスチョンマークをつけて考えるということをしていかないと(いけない)。世の中は君たちに対して善意で対応してくれる人ばかりではないのが悲しい現実であるということを理解しておかないといけない」ということで、そういったことに関しては、特に私からも再三、再四全校生徒に伝えています。
おおた:
素直でまじめで、ある意味おおらかでというところがいいのでしょうけれども、もう少し世の中に対しての批判的な視点を持ってもいいのではないかというふうに先生としてはお感じになるところがあるということなのでしょうか。
Topics2:沿革
「人の心にこそ塔を建てよう」
おおた:
そういった校風はどのようにして作られてきたのでしょうか。歴史の部分や創立者がどのような想いでつくった学校なのかといったところをお聞きしたいのですが。
梅沢:
本校の母体が堀之内にある妙法寺というお寺です。日蓮宗です。日蓮上人の六百五十遠忌(おんき)の記念事業として、大正の終わりぐらいに、堀之内妙法寺に五重塔を建てるかという話も出たと。ところが時の岡田日帰(おかだ・にちき)上人が「建物として五重塔という象徴物をつくるのではなくて、人の心にこそ塔を建てよう」ということで、記念事業を教育に行こうと。そこで東京立正――当時は立正高女と言いましたが――という女子校を設立するに至りました。それが昭和元年です。昭和二年から実際に学校が始まりました。
おおた:
立正 とおっしゃられたのは立正高等女学校、今でいうところの中高一貫校。だいたい当時は4~5年が高等女学校というかたちでしたけれども、それができたのが昭和元年(1926年)ということですね。
梅沢:
ええ。創立期の話になりますが、知識・技能は大切だが――学が大切なのはわかるけれども行動がともなわなくてはいけないということで、学んだことをちゃんと実行する/実践する学びでなければならない、それを「行学二道(ぎょうがくにどう)」と言うのですが、このあたりが大変面白いというか深いというか…
おおた:
ちょっと素朴な疑問ですが、日蓮宗のお寺さんが大正末期から昭和の初期にかけて「女子校をつくろう」というのはどういう意図があったのでしょうか?
梅沢:
これは、学校の名前にもある「立正」――これは「立正安国(りっしょう・あんこく)」これは日蓮宗をもってしてということになりますが、正義をたて、国の安定・安全・安心を、そういう世界を作っていこうということで学校名が立正となるわけですが。そう考えた時に、世界の最小単位は(1)であり、そうなった時に――当時は、ですけれども――母になる女性にいかに教育をほどこすことができるか(が重要)というのが、女子校を設立した経緯のようです。
おおた:
ありがとうございます。その後どんな歩みをたどったのでしょうか?
梅沢:
今から20年ほど前に共学化をし、現在に至っています。
おおた:
戦後すぐに中学と高校とができて、中高一貫教育を行なっていながらずっと女子校だったところが、2002年に共学化して今に至るということですね。わかりました。
<確認クイズ>
(1)に当てはまる言葉は何でしょう?
Topics3:保護者様へのアドバイス
まずはオウム返しで受け入れのリアクションを
おおた:
(中略)東京立正流の教育のエッセンスを何か一般のご家庭でも取り入れるヒントをいただければありがたいのですが、いかがでしょうか。
梅沢:
日蓮宗ということもあって、毎週月曜日の1時間目は瞑想の時間となっているんですね。
おおた:
月曜日、1時間目がまるごと瞑想なんですか?
梅沢:
1時間(50分)フルにではないのですが、こんな状況でなければ全校生徒が講堂に会して瞑想し、そして日蓮上人の残されたお手紙から――こんな言葉を残されてその意味は…などの話があれ、そこに私がしゃべっていい時間をいただいているので、勝手に「梅ちゃん先生の幸せになる授業」などと言っているのですが…
おおた:
あ、「梅ちゃん先生」なのですね(笑)
梅沢:
はい、みんな家ではきっと「梅ちゃん」と言っていると思いますが、生徒は(笑)。
そこで、私がかなり時間をかけて生徒たちに色々と話をしていることがあるのです。先ほど創立期の思いということで「心に塔を建てる」というものがあり、教育理念は「生命の尊重・慈悲・平和」、さらに私が校長になってからはそれらをより具体化するために、5つの目標を掲げております。(それは:)
・文武両道
・全員レギュラー(補欠は一人もいない)
・「挑戦と失敗」を応援しよう
・「なぜ」を追求しよう
・教室から世界を変えよう
というこの5つについて、このところはその中でもほとんど(話す内容が)が「なぜを追求する」になっていますね。
おおた:
(今日のインタビューの)最初の部分でで先生は「もっと批判的であってもいい」とか「?(クエスチョンマーク)をつけて」とおっしゃっていました。すごく今、先生の中で問題意識としておありなわけですね。
梅沢:
本当に「一市民として」ということと直結しているようなことが起きているわけで。先生方がそれをテーマにしていくのはちょっと大変だと思うので、私が全体的に出しますけれども、あとは授業の中で少しエッセンスとしていれてくれればいいなと思っていますが。
このところはずっとコロナに関すること、それから最近はウクライナへのロシアの侵攻に関すること、それから、最近では円安のこと。このあたりのことですね。
私が求めているのは、「なぜ」と考えて欲しいので、私が持っている答えを言ってしまっては「校長先生がああ言っていたから」という話になってしまうので――私がテレビと同じ役割を果たしてしまうので――苦しいところですが…
おおた:
(先生が)池上彰さん(の役割を果たす人)になってしまってはいけないわけですね。
梅沢:
そうなんです。このなぜというのをもうちょっと日々のところでいくと、たぶんご家庭でもという話になるのだと思うのですが――私も生徒と接する時にそうしていますし、先生方もそうしているのを私、よく見かけるのですが――生徒が何か自分の思うところだったりを言いますよね。(その時)最初に「オウム返し」(中略)をする、同じことを言う、これが非常に私は大事だと思っていて、生徒に対しても自分の子育てでも。
まずそれをすることによって、生徒や子どもが「受け入れられた」という認識を持つところからコミュニケーションのスタートの扉が開くと思っているんですね。そこで受け入れのリアクションをしてから、話している内容について「なんでそう思ったの?」(を聞く)んですね。
「え、だってこうだから」「それってどうしてそうなの?もうちょっと教えてよ」というふうにいくわけですが、実はこれで、校長室をたずねてきた生徒と1時間半ぐらい「なんで」の掘り下げになって。生徒のほうからも「先生、なんでですか」と「なんで」の応酬で(笑)。だいぶ深いところまで話がいって。そんなこともありました。
おおた:
ああ、素晴らしいですね・
梅沢:
その掘り下げはどこかしらで終わるのですが、「なんでだ」ということに「僕はこうなんだ」という、それにどうリアクションしたらいいかということですよね。(私は)「なんで」が言えるというのはすごいと思うんです。だから(ここで子どもに対してしたいのは)すごい!という反応ですよね。
(でもそうではなく)それがいきなり、(子どもが)何か話をしにきたときに「ええー、でもさ」って(親や教師が言うと)いきなり扉がしまっちゃった感じになって話が進まないんですね。
おおた:
ついつい、特に親なんかで自分が上の立場で自分が導かないといいけないと思っていると、悪気はなくても上から目線になって、ついつい評価者の視点になってしまって「でもさあ」と意見をかぶせてしまうということがあるかと思いますが、
そうではなく、いったんオウム返しをして。その言葉のままを返した上で「なんでそう思ったの」と聞いてあげたりとか。逆に「なんで」と質問されたらそこに問いを立てたこと自体に「すごいね」というリアクションをしてあげたりとか。
そうやって「なんで」「なんで」とやっていくと、お互いの思考の前提までたどりつくことができるんですよね。ああ、その立場からものを考えていたのね、その視点からみていたのねというところがわかってくると、表面的に表れている意見が仮に違ったとしてもお互いのことが理解できる、ということが起きるのですよね。
梅沢:
特に幼いお子さんなんて「なんで、なんで」と言われて。(それを)うるさいなあということが(親御さんには)たぶんあると思うのですが、この「なんで」という欲求は非常に大事だと思いますね。
おおた:
「なんで」と言われた時には、池上さんのキーフレーズである「いい質問ですね」(で返しましょう)。その問いをもったこと自体に一緒に感動してあげるということが大事だというお話でしょうか。
梅沢:
そういう考え方の延長線上ということで、このたび――これはご案内なのですが――夏休みに現役の政治家の方が6名学校に来ていただけることになりました。(中略)ちょっと私が松下政経塾関係の方とお付き合いがあるので、大人ばかりと色々な議論をしていて、もう大人ばかりじゃだめだ、東京立正の生徒はどうだいとなったので、こちらとしてはまたとないチャンスで。
日頃そういった投げかけをしている生徒たちが、たとえば18歳成人のことであったり、安全保障のことであったり、円安や経済のこと、憲法のこと――日頃、憲法のことを意識することがないというのは非常に平和なことだと思いますが――についてとか、それこそ「なぜ」の政治家レベルのやりとりになるのでしょうが、これをやることができる機会を得たのは非常に嬉しいですね。
おおた:
なるほど。これは初めての試みなのですね。
梅沢:
はい。
おおた:
色々議論が盛り上がって、さらに「なぜ」がふくらむといいですよね!
梅沢:
ああ、そうですね!事前勉強会とかやらないといけないのですが、これも楽しみですね。
おおた:
それは楽しみですね。
校長室訪問、今回は東京立正中学校・高等学校の校長・梅沢 辰也先生にお話をうかがいました。
梅沢先生、ありがとうございました。
今回の内容のご感想やコメントなど、ぜひお送りください。
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