この記事は、文化放送PodcastQRで毎週月曜日に配信されている「【中学受験】おおたとしまさの『校長室訪問』」の内容を、確認クイズ付きでWeb再録したものです。
配信内容の主要部分を書き起こすとともに、その一部を「穴埋め(ブルダウン式の三択)」クイズにしております。
番組を聴きながら穴埋めを完成させて、楽しみながら学校への理解を深めていただければ幸いです。
今回お届けするのは、
駒込中学校・高等学校(東京都 文京区)の校長である河合 孝允先生のお話です。
番組の聴取は下記より↓↓
【大切なお願い】
※このWeb再録は、「【中学受験】おおたとしまさの『校長室訪問』」をより楽しんでいただくための取り組みとして、文化放送様の許諾をいただいて実施している特別企画です。
クイズを楽しんでいただいたあとは、ぜひページ末尾のアンケートフォームから、番組のご感想やリクエストなどをお送りください。
この企画を続けていくことができるかは皆さまのお力にかかっております。ご協力、どうぞお願いいたします!
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Topics1:学校紹介
生徒が校長と遊んでくれる学校
おおたとしまさ氏(以下、おおた):
それでは駒込中学校高等学校の校長、河合 孝允先生にお話をうかがっていきましょう。河合先生、よろしくお願いします。
駒込中学校・高等学校
河合 孝允 校長(以下、河合):
こんにちは。よろしくお願いいたします。
おおた:
今回は駒込中学校・高等学校についてお話をうかがっていこうと思うんですが、まずどんな環境、どんな場所にある学校なのかうかがってもよろしいですか?
河合:
文京区ですから、「文(ふみ)の京(みやこ)」と書きますので、周りが学校だらけで。目の前が東京大学なのです。本郷キャンパスのそばでございます。
おおた:
最寄りの駅はどちらになるのでしょうか?
河合:
東京大学が赤門といいますよね。(これは)南を向いているから赤門なんですね。駒込中高は黒門だったのです。黒、要するに北の門ですよね、東西南北は色で示されますから。東は青ですからね。青春と言いますように…
おおた:
ああ、そうなんですか…知りませんでした。勉強になりました。
河合:
(本校は)勧学講院(かんがくこういん)といって今から340年も前にできた学校でございますので。アメリカの独立よりも94年も古い学校でございますから。そういう歴史があるということですね。戊辰戦争でこの地に、上野山内から引っ越してきたんですけれども。
おおた:
そういうことですか…なるほど。最寄りの駅はどちらになるのですか?
河合:
千駄木の駅とか南北線の本駒込ですとか、あるいは三田線の白山とか(中略)。
おおた:
そういう文京区にある駒込中学校・高等学校さんですけれども、先生からご覧になってどんな学校だというふうにお感じになられていますでしょうか?
河合:
校長が言うのもおかしいのですが、生徒が校長と遊んでくれる学校なんです。
おおた:
最高じゃないですか!
河合:
ハロウィンの日にはお菓子をもらいに生徒がみんな来るものですから、だんだん(増えて)今は2000個用意しないと間に合わないんです。
おおた:
うわ、大変ですね。
河合:
仏教校なのになんでハロウィンをやるんだとよく言われるのですが「まぁ、異文化理解でよろしいでしょう」と言って遊んでいますけれども。
おおた:
そのへんもゆるくていいですね。
河合:
最近はPTAの方が、先生の持ち出しはかわいそうだからというので予算を出してくれていましてね、だいたい40~50万(円)はかかっています。まぁ、そんな学校でございますね。
おおた:
なんだかすごくゆるい雰囲気が伝わってきて、聞いていて楽しいですね。
河合:
下町の学校でございますから、浅草六区の子どもたちが基本ですね。ですから、芸能人の子どもたちが「駒中に行っておいで」と送られてきますから、著名な芸能人が山ほど出ている学校でございますね。欽ちゃん、萩本欽一さんも(卒業生です)。
おおた:
では、一番有名な卒業生というとまず欽ちゃんが上がってくる…?
河合:
江口洋介なんか私の教え子でございますからね。ですから、芸能人になりたい子も東大に入りたい子もみんな来ていますね。実は東大の名誉学長さんなんかもうちの卒業生なんですよ。そんな学校でございます。
<確認クイズ>
(1)に当てはまる言葉は何でしょう?
Topics2:沿革と校風
開成のバンカラ、駒校のリベラル
おおた:
教育理念とか建学の精神はどんな言葉で表現されるのですか?
河合:
やはり仏教系でございますから、利他心を大切にします。他者を大切にする(中略)。
(1)さんが実は、うちの創立期の学園顧問なんですよ。ずっと利他心を大切にした実業家でございますよね。お亡くなりになるまで本校を支えてくださった方ですので、そういう意味で、私立にしては珍しく、PTA活動が後援会活動と一緒になっておりまして。PTAの年間予算が五千万を超えるんですね。それがすべて直接助成で子供たちに、合宿費だとかそういうものに援助されますので、(中略)面白い学校なのです。
おおた:
いろんなユニークなところがあるんですね。
河合:
お金に困ったことがない変な学校という。
おおた:
仏教というと色々と宗派があるかと思うのですが…
河合:
天台宗でございます、上野に寛永寺がございます学問所が勧学講院(かんがくこういん)と言いまして…それが駒込学園ですので。ただ天台宗といっても江戸時代は国家仏教の中の本山でございましたから。初宗派全部の頂点に立っていましたので。徳川家の菩提寺でございますからね。そういう関係がございますね。
おおた:
上野の寛永寺といったら、戊辰戦争の時にすごく戦場になったところですよね。
河合:
そうですね。(中略)うちの勧学寮も燃えてしまったんですよね。
おおた:
今いろいろな時代小説などで描かれるあの場面の最中にあった学校だという事ですね、当時。
河合:
そうです。
おおた:
現在の校風だけでなくて歴史的にも興味を惹かれるというか。
河合:
そうですね。ただ仏教の学校でございますから「開成のバンカラ、駒校のリベラル」と言われて、大正リベラリズムの文人たちの子弟が来ているんですね。そういう伝統がありますから(中略)平和主義の学校でございますから、
おおた:
今までにも歴史の話をちょっと出てきましたけれども、この校風はどういうふうに作られてきたのか、学校の歩みについてちょっと改めて――全部話すところ300年あるので大変だと思うのですけれども、どういう経緯でこの学校ができてきたのかを簡単にうかがいたいなと思うのですが。
河合:
明治維新で近代化されて、学則改革がおこなわれますね。東京帝大ができたわけですけれども、その前は、本校は天台宗の大学と天台宗の中学校が併設されて一緒になって。
おおた:
中学校というのは旧制中学ですよね。
河合:
天台宗大学校・(天台宗)中学校という名称であったわけですね。東京帝大のレベルまで蔵書や教諭陣・スタッフを揃えないと認可されないという改革が行われたものですから、それで諸宗派(中略)、比叡山から浄土宗だと浄土真宗だとか色々な宗派が立ち上がってきますけれども、宗派連合で大学を作っちゃいましょうというのでできたのが大正大学なんですね。
おおた:
あぁ、そうなんですか。面白い。
河合:
(中略)鎌倉時代に比叡山で学んだ諸宗派が集まって大正大学ができた。そして中学校は、この地に駒込中学校として単独でできあがったという歴史を持っているわけです。
おおた:
なるほど。すごく私の中で、バラバラの知識がつながりました。学校の歴史って私すごく好きで興味があって色々と調べるのですけれども。あぁそういうことか、なるほど、勉強になります。
河合:
天台宗だけじゃなくてすべての仏教宗派のお子さんがやってきます。
おおた:
なるほど。大正大学と御校にはそういう直接的な結びつきがあって、学制改革でずっと帝大だけしか大学ではなかったわけですけれども、1918年とか19年ぐらいに公立や私立の大学も認めるというふうになって、その流れの中で出てきたのが大正大学だったと。
Topics3:保護者様へのアドバイス
「明日を今日に呼び寄せて」
おおた:
今、先生から色々なことを教わって、私は学校の歴史が大好きなので非常に勉強になりました。そういう長い歴史を持っていて、そして、非常におおらかな校風の駒込中高ということが伝わってきたのですけれども、この駒込中高流の教育のエッセンスを一般のご家庭の子育てに何か役立てる・応用する、そんなヒント・アドバイスみたいなものをいただければと思うのですがいかがでしょうか。
河合:
OECDが「ラーニング・コンパス(学びの羅針盤)2030」で提示している、要するに21世紀の後半を生きていく子供たちに与うべき力として、「Anticipation」「Action」「Reflection」という3つの力を今、提示しているわけですね。
Anticipationは見通す力ですね。誰もやらないからこそ自分がやるというアントレプレナーシップとしてのAction、行動力ですね。そして、勝手にやるのではなくて友達と一緒に。そして失敗したことなども振り返るという力、Reflectionですね。(これらの)AAR Cycleという能力を駒込としては今、一番重視して子どもたちに与えていこうとしています。
おおた:
これはいわゆるEducation 2030から来ているということなんですね。OECDの。
河合:
はい。近代化というのはなにもコンピュータを使うことではなくて、理念を改革するだと思っています。理念を新たに作り上げる、クリエイティブを作り上げていくということですから、故きを温ね新しきを知る(ふるきをたずねあたらしきをしる)「温故知新」を本校のモットーにしております。
般若心経も(中略)最初は意味がわからないでしょうけれども、結局、一番弟子の舎利子(しゃりし)がお釈迦様に「いくら勉強しても悟れないんだけれどもどうしたらいいんでしょうか」というと、お釈迦様が述べてくれた、これが般若心経ですからね。(中略)学びの心を教えているわけですよね。
5つの要素を「空(くう)」にしなさいと。「色即是空 空即是色(しきそくぜくう くうそくぜしき)」という有名な言葉があって、(中略)体も精神作用もすべて「空」なのですよ。では「空」とはなんですかと思った瞬間から学びが始まっていく。無じゃないですよ。
おおた:
先生、すごく良いお話なのですけれども、何か子育ての中で取り入れる方法みたいなもののヒントはございませんか?
河合:
今、コロナの中でハラスメントが家庭内でも結構増えておりますね。正義感の強いお母さんが子どもをしっかり育てようと思って厳しくして、それがハラスメントになってしまうような時代になっちゃっている。ですからもしご家庭で教育にちょっと困っているようなことがあれば、(考え方を)ひっくり返して(みてはどうでしょう)。
子どもというのは成長する立場の人間ですから。成長というのは今日の続きの明日ではないわけですよね。明日を今日に呼び寄せて人を作っていく。だから、未来を前倒しして今、何ができるかということを考えてあげれば(よい)。(子どもは)過去からの漂流者ではなく、未来からの来訪者ですから。新しい視点で褒め言葉が出るはずですよね。
おおた:
なるほど。
河合:
ですから、失敗しても褒めてあげて。お菓子のひとつ、ケーキのひとつも作ってあげるという親心。これが子どもを育てていきます。叱るのではなく、きちんと「あなたは私の子なんだから大丈夫ですよ」というメッセージを与えさえすればどんな子も伸びていくと思っておりますので。
おおた:
すごく今、短い間にいろんな深いフレーズがありましたね。「明日を今日に呼び寄せて」というフレーズだったりとか。親としては子供のことを思っているし子供のことが心配だからこそしっかり教えなきゃ、しっかりしつけなきゃというふうに思ってしまうんだけれども、いやいやあなたは大丈夫というメッセージを伝えてあげることの方が、未来につながっていく。
河合:
特に今は、AI(人工知能)が人間の仕事の6~8割を奪ってとっていく時代になるじゃないですか。不安だという言い方をするのではなく、逆に「AI能力をを我が子につけてあげる」とすれば、今の力の10倍・100倍の力を持った大人になれる(と考えてはどうでしょう)。「新しい時代の新しい価値観をきちっと与えてあげさえすれば、どんな子でも将来のエリートになれますよ」という教育ですよね。
おおた:
わあ、すごく前向きですね。AIができることで、人間が作ったAIなのになにかそこと競合してしまうというような不安を感じている方も多いと思いますが「いやいや、そのAIを味方につけられるような人になればいいじゃないか」ということですよね。
河合:
そうですね。
おおた:
校長室訪問、今回は駒込中学校・高等学校の校長、河合 孝允先生にお話をうかがいました。
河合先生、ありがとうございました。
今回の内容のご感想やコメントなど、ぜひお送りください。
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