多摩大学附属聖ヶ丘中学高等学校 石飛校長先生のお話・穴埋め式まとめノート

この記事は、文化放送PodcastQRで毎週月曜日に配信されている「【中学受験】おおたとしまさの『校長室訪問』」の内容を、確認クイズ付きでWeb再録したものです。

配信内容の主要部分を書き起こすとともに、その一部を「穴埋め(ブルダウン式の三択)」クイズにしております。

番組を聴きながら穴埋めを完成させて、楽しみながら学校への理解を深めていただければ幸いです。

今回お届けするのは、
多摩大学附属聖ヶ丘中学高等学校(東京都 多摩市)の校長である石飛 一吉先生のお話です。


番組の聴取は下記より↓↓

【大切なお願い】

※このWeb再録は、「【中学受験】おおたとしまさの『校長室訪問』」をより楽しんでいただくための取り組みとして、文化放送様の許諾をいただいて実施している特別企画です。

クイズを楽しんでいただいたあとは、ぜひページ末尾のアンケートフォームから、番組のご感想やリクエストなどをお送りください。

この企画を続けていくことができるかは皆さまのお力にかかっております。ご協力、どうぞお願いいたします!

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Topics1:学校紹介

都内で最も小さな男女共学校?

おおたとしまさ氏(以下、おおた):
それでは多摩大学附属聖ヶ丘中学高等学校の校長、石飛 一吉先生にお話をうかがっていきましょう。石飛先生、よろしくお願いします


多摩大学附属聖ヶ丘中学高等学校
石飛 一吉
校長(以下、石飛):
こちらこそよろしくお願いいたします。

おおた:
今回は多摩大学附属聖ヶ丘中高さんのお話をうかがっていくのですが、先生、多摩大聖ヶ丘は場所としてはどんなところにございますでしょうか?

石飛:
ちょうど手をテーブルの上に置いた形を思い浮かべてください。手の部分が多摩丘陵。その指先、末端の部分に本校は建っております。多摩丘陵の南端、標高170mの丘の上に「聖ヶ丘」という団地があり、その中にある学校です。

おおた:
ああ、団地があるんですね。

石飛:
はい。ですから周りは閑静な住宅街。その一番高いところに大学と中学校と高等学校がございます。

おおた:
同じキャンパスの中に大学もあってということですね。わかりました。
アクセスとしては、最寄り駅はどちらになるのですか?

石飛:
京王相模原線と小田急多摩線のちょうど間ぐらいで、多摩市にあります。永山駅という駅からだいたいバスで10分程度のところにございます。

おおた:
それは皆さんだいたい路線バスで行かれるのですか?

石飛:
普段はスクールバスがございます。

おおた:
永山からスクールバスというのが一般的なのですね。

石飛:
だいたい(生徒の)8割が永山駅から。残りの1割ほどが京王の、本線のほうですが、聖蹟桜ヶ丘という駅からもバスが出ておりますので(そちらから)。

おおた:
聖蹟桜ヶ丘からも来られるのですね。わかりました。ではその多摩大聖ヶ丘中高さんは、先生からご覧になってどんな学校でしょうか。

石飛:
私たちの学校は、ちょうど今年が35周年。現在東京都にはだいたい177~178の私立学校がございますが、その中で最も小さな男女共学校と言えるかなと思います。1学年が120名しかおりません。このまま高校に進学しますので、完全ではございませんが、準中高一貫校ですけれども、卒業時も120~130の間の卒業生ということになります。

おおた:
共学校の中では一番規模が小さいのですか。

石飛:
そうですね。多くの多摩の学校のほとんどは高校からたくさんの方が入学される学校が多いですので。(本校は)高校からはほとんど入ってこないんですね。

おおた:
どんな校風、あるいは生徒さんたちの雰囲気はどんな感じなのでしょうか。

石飛:
多摩という場所は商店街もほとんどございませんので、ほとんど(の生徒)がご自宅から学校まで往復する感じなので、私から見ると――私は商売人の子なのですが――非常におとなしい、品のある子が多いかなと思います。私はちょっとがさつなので(笑)。

おおた:
なるほど(笑)。そうすると、商売人の息子さんとしては「もうちょっとやんちゃをしてもいいのにな」と校長先生は思われたりするのですか?

石飛:
そうですねぇ…私は本当に、おっしゃる通り、やんちゃでございましたので(笑)。少し物足りないかなと(中略)。穏やかな子が多いですね、性格的にね。

Topics2:沿革

幼稚園、中学校・高等学校・大学を有する田村学園の一校

おおた:
わかりました。学校の特長としてはどんなところが挙げられますか?

石飛
35年前に私たちは、まず高等学校ができまして、その4年後に大学と中学校が新しく開設されるということで、現在の校名、多摩大学附属聖ヶ丘中学高等学校という名前になりました。

おおた:
もともと田村学園って目黒にある…

石飛:
そうです、そうです。

おおた:
あっちがおおもとにあって。

石飛:
おっしゃる通りでございまして、もともとは目黒にございました女子商業学校がスタートでございます。そこからの分家という感じですね。

おおた:
それを35年前にきっと、都市開発とあわせてここに学校を作ろうと…?

石飛:
もともとはここは都立学校用地だと聞いております。当時、1980年代の後半、1990年にかけての時ですが、東京都が公立学校を2倍に増やすという計画を行っておりまして、その中で用地はすでに確保されていたところを、学校が行き渡ったのでということで私たちの学園がそれをもらいうける形で学校ができあがったと聞いております。

おおた:
その歴史の中で何かほかに補足などございませんか?

石飛:
もともとは、先ほど言いましたように歴史は古くて、田村学園というのは昭和12年(1937年)に、目黒に女子商業高校ができました。そしてその後、第二次世界大戦を経て女子商業(高校)としてスタートしたんですね。主に大企業や銀行、公務員を養成するという役割を持っていたんです。ちょうど昭和の終わりごろに女子商業の役割が変わってまいりまして、学園本部としては普通科の学校に変えたいということで、目黒のほうにも多摩大目黒という学校をつくりましたが、それと機を同じくして、多摩市の要請もありまして、この土地に中学と高校をつくるということになりました。

学園としては大学を設置したいという要望がありましたので、大学はかなりこの地で華々しく「多摩大学」としてスタートしたのは私も記憶に(あります)。

おおた:
多摩大学附属と言っていますけれども、逆に、大学が一番最後にできているのですものね。なるほど。もともと田村学園というのはどういった方が創設されたのですか?

石飛:
初代は田村國雄という方が目黒の地に女子商業をつくりたいということでスタートされたのが最初。当初は商業高校と幼稚園という形でスタートしました。その後、2代目が田村邦彦先生でございますけれども、その時に、新生の高校ができあがった時に女子短大が併設されることになり、大きくなっていきました。高校ができ、短大があり、次は大学だということで、大学をいつ作るかという計画をずっと練っておられたというふうに聞いています。

おおた:
戦前の時期から女子の商業学校をつくろうというのは、おそらく当時の時代からすると新しい試みのひとつだったと思うのですが、田村さんというのはもともとどういうバックグラウンドの方なのですか?

石飛:
私も詳しくは知らないのですが、国家公務員で。本校ができた頃は国内でたくさんの女子商業高校ができた時期で。国からの要請があっておそらく作られたのだろうと。

おおた:
優秀な女性をこれから社会にも送り出していかなければならないと、国からの要請があったのですね。


Topics3:教育の特色

学びの哲学を掲げ「しなやかに変化し続ける学校」へ

おおた:
そういった歴史を持つ多摩大学附属聖ヶ丘中高ということなのですけれども、多摩大学附属聖ヶ丘中高竜の教育のエッセンスを、一般の家庭でも採り入れるようなエッセンスをいただければと思うのですがいかがでしょうか。

石飛:
スタートが女子商業高校ですから、教育理念は少し古めかしくて「自主研鑽」「健康明朗」「敬愛奉仕」
という四字熟語が並んでいるのですけれども、実は私、ちょうどコロナとともに校長になっているのですが(笑)、その時に学校をどうしても閉鎖せざるをえなかったときに、私たち、もう一度教育理念に立ち返って、対面式の学校はどうあるべきかというのをみんなで2年間議論したんですね。設立者の思いをもう一度かみしめて、これからの学校はどうあるべきかを考えたのです。

それで、私たちの学校は設立当初から、学びの主役は生徒であるということをモットーにしてきました。中学・高校の間に私たちが果たす役割は何なのかを考えた時に、最終的に行きついた答えは「学びの哲学を教える」ということでした。ご存じのように新しい科学技術や知識は今のスピードでいくと十数年ですたれてしまいます。(そして)また次の新しい科学技術や知識が出てくる。

そうした時に、私たちは生涯の間に、何度も学び直すことが必要となります。学び直すチャンスを、中学・高校の間に「楽しめる」ようにしておきたいなということだと。

おおた:
それが学びの哲学。

石飛:
そうです、はい。学びに向かう姿勢は、基本、楽しんでやれるようにということだと思うんです。それで私たちの学校は冒頭で申しましたけれども、1学年120名を基本としていますので、少人数できめ細かい指導と。それから、ここが本校の肝なのですが「本物から本質に迫る」教育ということ。2点目、考えました。

おおた:
ええと、1点目は…

石飛:
少人数できめ細かな指導。2点目は「本物から(1)に迫る」教育。3点目に、主体性と協働性の育成。これが教育理念と見事にマッチするようなものだと考えたわけですね。

おおた:
先ほどの3つの教育理念といまの3つと対応させると、「少人数・きめ細やか」というのが…

石飛:
健康明朗で。「本物から(1)に迫る」教育は、自主研鑽。主体性と協働性の育成は、(少し無理やりですが)敬愛奉仕、現代的にとらえれば。

おおた:
現代的に今の状況にあわせて言い換えをしたのですね。

石飛:
敢えてここでは主体性と協働性の中に「多様性」を入れていないんです。国はよく主体性・多様性・協働性という言葉を使うのですが、多様性という言葉が実は非常に難しい。あえてそれを外したのは、多様性のある社会というのは強い社会だというふうに思うんです。いろんな人の考え・価値観を認め合い、先に向かっていくということなんです。実は中学・高校の時って「みんな違って みんないい」って、私のふるさとの詩人・金子みすゞさんが言うのですが、これを言い出すと結局みんなバラバラでもいいんじゃない?ということになってしまうわけですよね。だから、他人と違う点、異なる点、そういう価値観をどう認めるかというと、結局答えは自分の中にある。自分の中の多様性に気が付くことが大事なんだと思うんですね。そこが難しいので、あえてそこは外して、6年かかってゆっくりと磨いて行こうじゃないかということなんですよ。

おおた:
多様性という言葉をあえて外して、「6年かけて磨いていこう」というのは…

石飛:
多様性を磨くことによって全体を包み込んでいく。そうすると今私が校長になって掲げたキャッチフレーズがありまして「しなやかに変化し続ける学校」というスローガンを掲げたのですが、そこに結びつくのではないかと。色々な人の存在を認めながら、自分も変わっていこうということだと思うんです。

おおた:
なるほど。あえて外すという発想がいいですね。引き算するというのがすごく。
それをしていけば多様性が磨かれているはずだという。

石飛:
スローガンとしては「みんな違って みんないい」というのはすごく。響きもいいし。耳障りがいいのですけれども、あえてそこを外すことによってもう一度考え直してみようじゃないかと。

おおた:
ああ、素晴らしいメッセージですね。メッセージの伝え方として「多様性が大事だ!」と言うのではなくて、あえて抜くことによってその消極的存在感を感じさせるという、素晴らしいですね。

石飛:
6年で決して教育は完成しないわけで、100歳の時代だと言われている中、100年生きるためにはどうするかというと、学び続けなければいけないわけですよね。そこが、先ほど言った「学びの哲学」を作り上げる6年間にしたいと。なので私はいつも説明会でも、多摩大学附属聖ヶ丘は「学びの種」をまく学校なんだというふうに言っています。完成形は出ない。40年後かもしれない。

おおた:
本当ですよね。そうなんですよね。中高の教育が1年や2年で成果がでてたまるもんかと(笑)。

石飛:
大学合格実績でもないし、就職力でもないし…

おおた:
別に、ビジネスマンとしての単なる「勝ち組」、タワマンに住んだらじゃあ勝ちなのかというとそういう話でもないし…

<確認クイズ>
(1)に当てはまる言葉は何でしょう?

テスト

後輪が基礎学習、前輪が探究学習。そのわけは…

石飛:
生徒たちはまだわからないですけれども、今、新しい学習指導要領で探究学習が始まりましたので、私たちは、先生たちの間で自転車にそれを例えましてね。自転車のハンドルを持ってこぎだすのは生徒自身。学びの主役です。そして後輪が基礎学習。前輪が探究学習だろうと。そして私たち教員や保護者の皆さんが後ろから風を送り込むんだと。そういうふうにして、存在があるかないかわからないような存在が本当は一番いいのかなと。

おおた:
探究と基礎学習というのは車の両輪ではなくて、自転車の前後なのですか。

石飛:
そうです。

おおた:
普通、よく両輪にたとえられるじゃないですか。自転車の前後というのはどういう…?たぶん、表現の違いには意味があると思うのですけれども…

石飛:
探究学習をどうとらえるかというところで、探究学習を教育界ではさまざまなマニュアルだとか形ができあがっているのですが、本校ではあえてそれを使わないと。先生方と生徒が一緒につくり出すものが探究学習であると。そしてその探究学習の基礎を、私たちの学校のある「多摩市」にしようと。多摩市の市役所の方や地域のさまざまな業界の方々とお話をしながら、今、多摩市が抱えている問題はなんだろうかと。高校生にもう一度4歳児にかえってもらい、なんでもかんでも疑問を持ってほしいと。

水曜日の5・6時間目って、高校1年生、2年生以外は全部学校から帰しているんです。(中略)1と高2を全部の先生方で面倒を見ましょうかと。でも主役は生徒ですから、外へ行く生徒は安全であればいいわけで、街へ出てみて、といって周りは住宅街ですからそこから普段気づいていないことに気づこうよと。わかんない、答えが欲しければ多摩市に聞けばいいし、聞いてみるのもひとつの手だろうと。そこがキー(鍵)にならなくてはならない。

多摩市をキーにして探究をして、理想は「多摩市から世界へ」と。色々なところにつなげていければいいかなぁと。その学習の元を作るのが探究学習なんだと。だからそれは両輪ではなくて、方向性によってさまざま、色々なところへ、ぶれたりもしながら行きますよと。あえてマニュアル自転車を考えているんです。オートマチックの車じゃないぞというところで。

おおた:
なるほどよくわかりました。

Topics3:保護者様へのアドバイス

本物に触れること、そして読書をすること

おおた:
最初の質問は「ご家庭でどう取り入れたらいいですか」という質問だったのですけれども(笑)。今、学びの哲学の話からここまで広がったじゃないですか。

石飛:
そう、ですからもう一度、私いつも言うのですが、「何のために勉強するの」と必ずお子さん聞かれるんですよ。私も子どもに聞かれましたね。「なんで勉強するの」って。その時に、間違えても「いい大学に入ろう」とか「将来職業が安定するから」とか言っちゃいけないんだよと。

ご家庭ではぜひ、「新しい自分へと生まれ変わるために勉強するんだよ」と言って欲しい。


おおた:
本当ですね。

石飛:
じゃあそのために何をするの?というと(答えは)「自分で考えなさい」なんですよね。それが探究だと思うんです。

おおた:
本当ですよね。

石飛:
だから、あえて子どもたちには答えを言わない。「答えのない時代だ」って言いながら皆さん、先生もつい、答えを教えたがる。方法を解いちゃうんです。

おおた:
そうですよ。さっきの探究学習だって、答えがない時代だから探究学習です、って言ってるのに、「で、どうやったら探究学習ができるんですか?マニュアルください」ってなっちゃうんですよね(笑)

石飛:
そうなんです。だからお互いに頭をかきながら、ああでもない、こうでもないって言いながら議論をして。「2日で答えが見つかるようなものは探究じゃないよ」と。1年かかってみんなで調べたことが探究だと。そういうネタ集めをしようかと。子どもたちはいろんなところに気づくんですね。

おおた:
なるほど。ご家庭で「なんで勉強しなきゃいけないの」とそういう話題になった時に、新しい自分に生まれ変わるためなんだぞと。

石飛:
そう、それであと、私はそこで、そのひとつのきっかけが「感動する」ということだと思うんです。スポーツでもいいですし演劇でもいいですし音楽でもいいですし、本物に触れて欲しい。そしてそこから自分が感じる、いいものを見ると鳥肌が立ちますが、そういう感動をたくさん味わってもらえば味わってもらうほど、新しい探究のネタが見つかるのではないかなと思うので、ご家庭の皆さんには、博物館でも演劇でもいいですし、ぜひみなさんを連れて行くチャンス、特に長期の休みの間には。勉強も大事ですけれども、そういうチャンスを何回か作ってもらうことが、お子さんが探究に向かうヒントになるかなぁと思っております。

本当ですよね。お子さん自身が、「あ、今、自分の心が大きく動いた」とそういう感覚を持てる機会ってすごく大切ですよね。

石飛:
そうなんですよ。お母さんがたは「うちの子は何もやる気がないんです」って言うから「やる気がないんだったら行ってみようよ」と。(中略)本物に触れるチャンスが少ない場合には、ぜひ読書を。活字に触れる。書き言葉を勉強しましょうということを是非言っておきたいですね。LINEだとかメールでは書き言葉をなかなか習わないですね。ちゃんとした言葉で。お父さんお母さんもできれば、子どもと同じ目線で話すのではなくて、大人の目線からの言葉遣いをしてほしいなというふうに私は思っています。

おおた:
それは子どもに対しても、ということですね?

石飛:
そうです。基本はあいさつですからね。そしてお子さんにこれはどうなの?と聞かれた時にはそれに対して「こうじゃない?」ではなく、お母さんはちゃんとした言葉で…学校の先生が使うような言葉で。

おおた:
家庭内限定の省略語ではなく、外でも通じるきちんとした言葉で。

石飛:
これは私たち教員も大人も反省しなければいけないところなので…

おおた:
ついついやってしまいますものね。

石飛:
本を読むとそういう言葉も覚えられますからね。

おおた:
校長室訪問、今回は多摩大学附属聖ヶ丘中学高等学校の校長、石飛 一吉先生にお話をうかがいました。石飛先生、ありがとうございました。


今回の内容のご感想やコメントなど、ぜひお送りください。
(私たちが責任をもって文化放送さんにお届けします)

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