例年以上の激化が予想されている2023年度中学入試。いよいよ各所で出願が始まる中、6年生保護者様は出願校の最終検討と調整を進めていらっしゃることと思います。
そのご参考のひとつとしていただけるよう、期間限定企画「探究型入試紹介」の連載を始めました。
入試広報担当の先生や探究を担当されている先生方に直接お話をうかがい、入試の特長や出題の意図、事前準備があまりできていなくても受験できる…?などの気になるポイントをうかがうとともに、その入試が入学後の学びとどのような関係があるのかについてもお話を聞いていきます。
第7回目となる今回は、桐蔭学園中等教育学校(神奈川県横浜市)です。2023年2月1日(水) AMに実施される「探究型(みらとび)入試」についてお聞きしました。なお、文末には試験の概要もまとめておきましたので、最後までお読みいただければ幸いです。
このシリーズの連載記事は、当サイト「オンライン合同学校説明会」のほか、年明けの2023年1月6日(金)以降、順次新サイトにも掲載していきます。(新サイトの掲載先は決定次第こちらに記載いたします)
Contents
インタビュー① 探究型(みらとび)入試について
アクティブラーニング(AL)入試から探究型(みらとび)入試へ
――今回、初の実施となる「探究型(みらとび)入試」について、その導入の経緯をお聞かせいただけますか?
桐蔭学園中等教育学校
入試広報ご担当の先生(以下、桐蔭学園):
桐蔭学園は2014年に創立50周年を迎え、2015年から次の50年に向け、「新しい進学校のカタチ」を目指した教育改革を始めました。
改革の柱のひとつとなったのが、「アクティブラーニング(AL)型授業」の導入です。AL型授業はいまや、桐蔭学園の代名詞ともいえる存在になっています。
アクティブラーニング(AL)型授業に興味を持って学習をしてくれる生徒を募集するため、本校ではAL入試をここ数年、実施してきました。そして、今年=2023年度入試からはこれをさらに「探究型(みらとび)入試」へと発展させて実施することにいたしました。
本校では、
- アクティブラーニング(AL)型授業
- 探究
- キャリア教育
を「教育の3本柱」としています。
2本目の柱である「探究」について、本校では今、1年次から5年次に週に1回、「未来への扉(通称:みらとび)」という授業を実施しています。この授業では、情報の集め方、情報の整理の仕方、プレゼンテーション資料の作り方といった基礎的なスキルから、さまざまな角度からの分析の仕方、問題解決の方法など一生涯使える力を身につけていきます。
「探究型(みらとび)入試」は、本校の特徴のひとつともいえるこの授業を、入試の場で受験生の方々に体験していただける機会となっております。探究心を持って自ら調べてまとめて発表することに興味を持てるお子さんにぜひチャレンジしていただきたいと思います。
入試体験会のダイジェスト動画、そのポイントは
――探究型(みらとび)入試はどのような形式となるのでしょうか?
桐蔭学園:
なにしろ今年(2023年)2月1日が初めての試験となりますので、今、申し上げられることは限られてしまいますが、入試体験会の様子を動画で公開していますので、ご参考にしていただければと思います。
みらとびの授業では
- 資料の中から必要な情報を収集する
- 収集した情報を整理・分析する
- 整理・分析した結果をまとめて表現する
ことに重きを置いていますので、今回の探究型(みらとび)入試でもこれらのプロセスをしっかり見ていきたいと考えています。
――入試体験会ダイジェスト動画(3分41秒頃~)の”解答用紙の書き方(例)”では、箇条書きや図、イラストが使われています。受験生さんがどんな資料を選び、そこから何を読み取ってどう考えたかという”プロセス”の部分をわかりやすく表現することが大切なのですね。
桐蔭学園:
そうですね。「なぜそのようなまとめ方に至ったのか」が採点者に伝わるように書いていただければと思います。
本番の試験がこれと同じ形になるとは限りませんが、少なくとも今回の体験会では、解答用紙が比較的大きく、自由に使える形式で出題されていました。ですから単に文章を横書きにしていくのではなく、あらかじめ「現状」「課題」「解決策」を書く場所を決めておき、それぞれのポイントになる内容を箇条書きやグラフ、イラストも入れて書く形を解答例として提示しました。「みらとび」の授業でも実施するポスターセッションに近い形ですね。
未来への扉(みらとび)で行われる「ポスターセッション」の様子は、こちらの記事でもご覧いただけます。
――探究型(みらとび)入試は今回が初の実施ということで、入試体験会に参加済みの方もそうではない方も不安に思われるところがあると思います。試験に臨むにあたり、ほかにも気を付けておくべきポイントはありますか?
桐蔭学園:
探究では、資料の収集と整理分析というプロセスが大切になります。今回の体験会では5種類の資料が提示されましたが、それぞれの種類の資料の特徴をしっかりと見抜くことや、資料同士の関係を理解することが鍵となりました。
また、資料から読み取ったことのすべてを答案に書くわけにはいきませんので、どこを選ぶと自分の発表を作る上でより効果的になるのかを考えることも大切だと思います。
――入試当日は資料を素早く読み解く力が重要になるのでしょうか。
桐蔭学園:
限られた時間内で行いますので、スピードも確かに重要ではあります。とはいえ、やはり「深く、正確に」情報を読み取って「課題を発見する」ことがより重要であると申し上げたいと思います。
課題の発見は、探究のスタート地点です。資料のどこに着目をするとどのような課題が見えるのかを読み解き、そしてさらに資料を整理・分析して、課題の解決策を提案する――これは、本校の生徒が「未来への扉(みらとび)」の授業で学んでいることそのものなのです。
探究(未来への扉)での学びについてはこちらのページをご覧ください。
インタビュー② 入学後の学び・探究とどうつながるか
1・2年生では探究が楽しいと思えるように授業を工夫
――ここで改めて、探究に力を入れる理由についてお話いただけますか?
桐蔭学園:
私達は、自分で能動的に学び続けることができる人を育てたいと考えています。
本当に自分のやりたいことを見つけ、主体的に行動できる――自分で考え、自分の足で調査をし、自分の手でそれを分析し、さらにはそれを言葉で表現できる人、その素地を5年間でつくりあげていくことを目標に、本校の探究(みらとび)のカリキュラムは作られています。
――基礎スキルの習得に1年生と2年生の2年間をかけるのですね!これだけじっくりと時間をかける学校さんはなかなかないと思います。
桐蔭学園:
「共通スキル」とひとことでまとめてしまってはいますが、実際には、学年に合わせたテーマがあらかじめ用意されています。
1年生ではまず、図書館での情報の調べ方やインターネット上の情報の判別の仕方、集めた情報の分析やスライドへのまとめ方などを学んでいくのですが、生徒たちがなるべく楽しく取り組めるよう、「自分が興味ある本を選び、要点をまとめて発表しよう」「偉人をひとり選び、その功績や生涯に調べて発表しよう」などのテーマを通じて学ぶ形にしています。
――本当に初歩から探究のスキルを教わることができるのですね!テーマも取り組みやすそうです。
桐蔭学園:
1、2年生の探究で私たちが一番心を砕いているのは「授業を面白くする」ことです。生徒たちに、まずは「学ぶって楽しい」「探究することは面白い」と思って欲しいですからね。
――楽しいと思えば前向きに取り組める…主体性を身に付けるための第一歩ですね!
3年生で視点を変え、4年生ではデータを扱う
――3年生の「グローバルチャレンジ」では全員が模擬国連に取り組むと聞きました。大変珍しいプログラムだと思いますが、このねらいは何でしょうか。
桐蔭学園:
模擬国連では、実際に発生している国際問題を国連会議の形式で話し合って、各国の立場を踏まえながら問題解決の方法を探っていくことになります。
模擬国連の場では、生徒たちは、自分が割り当てられた国の大使という立場になり切って考え、発言することになります。つまり、普段の自分とはまった異なる視点に立つ必要に迫られる。ここが大きなポイントなのです。
――普段の自分とはまったく異なる視点に立つ経験が重要…
桐蔭学園:
はい。探究でもっとも難しいのは「課題の設定」だと言われています。探究するに足るだけの課題を設定するためには、その課題をまったく違う立場の人が見た時にどう見えるか?と視点を変えて多角的に検討することが必要です。普段の自分とはまった異なる視点に立つことになる模擬国連での経験は、「視点を変える」経験として最適なのです。
――なるほど!よくわかりました。では4年生のプログラムはどのような内容となるのでしょうか。
桐蔭学園:
4年生の1学期には、データサイエンスを学びます。プロのデータサイエンティストを講師としてお招きし、データサイエンスで何ができるのかを学びます。これまでに学んできた情報の収集や整理・分析についてより深く、専門的に学ぶ機会となります。
1学期に学んだことを踏まえ、2学期には実際に情報収集をします。そして3学期にはいよいよ、5年生で行う探究活動の集大成=論文制作に向けて研究計画書を作成します。
――4年生の2学期からは実質的に5年生の準備となるのですね。
桐蔭学園:
はい。5年生では全員がゼミに分かれて自分のテーマを探究していきます。本校では、全員が5年生の終わりまでに論文を仕上げます。1年生から始まる探究(みらとび)のカリキュラムは、ここを目標として1年生から5年生までのカリキュラムを組んでいるのです。
――楽しみながら少しずつ着実に探究のレベルを上げていけるカリキュラムであることがわかりました。
→ 次ページでは、入試出願を迷われている方へのメッセージや入試概要も