例年以上の激化が予想されている2023年度中学入試。いよいよ各所で出願が始まる中、6年生保護者様は出願校の最終検討と調整を進めていらっしゃることと思います。
そのご参考のひとつとしていただけるよう、期間限定企画「探究型入試紹介」の連載を始めました。
入試広報担当の先生や探究を担当されている先生、時には校長先生に直接お話をうかがい、入試の特長や出題の意図、事前準備があまりできていなくても受験できる…?などの気になるポイントをうかがうとともに、その入試が入学後の学びとどのような関係があるのかについてもお話を聞いていきます。
第8回目となる今回は、芝浦工業大学附属中学校(東京都江東区)です。佐藤 元哉校長先生に、2023年2月2日(木) PMに実施される「特色入試」とその背景についてお聞きしました。なお、文末には試験の概要もまとめておきましたので、最後までお読みいただければ幸いです。
このシリーズの連載記事は、当サイト「オンライン合同学校説明会」のほか、年明けの2023年1月6日(金)以降、順次新サイトにも掲載していきます。(新サイトの掲載先は決定次第こちらに記載いたします)
Contents
インタビュー① 特色入試について
「3つの言語」に精通した人材を育てる
――特色入試では「言語技術」という、従来の教科型入試にはない科目を出題されています。ここに込めた想いをお聞かせいただけますか?
芝浦工業大学附属中学高等学校
佐藤 元哉 校長先生(以下、佐藤):
本校は理工系の人材を育てていく学校です。エンジニアに代表される理工系人材は一般的にコミュニケーションが不得意と言われますが、それに甘んじてはいけないと私たちは考えます。そもそも言葉は思考と論理の基礎をつくるものですから、ものづくりの基盤でもあります。また、企画や開発、設計――いわゆるものづくりに携わる人々が自分自身でそこに込めた想いを語れることはとても大切です。
こうした考えのもと、本校では20年近く前から中学校に「言語技術」という教科を設置してきました。本校の生徒たちには、「日本語」「外国語(英語)」そして「コンピューター言語」(注:ここではコンピューターを駆使できることを指す)という3つの言語に精通した人材に育って欲しい。むろん中高の6年間(あるいは高校の3年間)だけでそれが十全にできるわけではありませんが、生徒たちが卒業後もこの目標に向かって踏み出していけるよう、盤石な基礎力を作ってあげたいと考えているのです。
本校は2022年に100周年を迎えました。これに先立つ形での豊洲への移転、そして共学校化とカリキュラムの刷新など、教育内容をブラッシュアップしていく中で、入試にも私たちの教育方針や授業で実践していることを反映させてはどうか、それはきっと受験生さんやご家庭へのメッセージとなるはずだと考え、3年前から言語技術を中心とした入試をスタートして現在に至っております。
インタビュー② 入学後の学び・探究とどうつながるか
日本語も「4技能」を鍛える
――先ほどの図では、日本語のところに「4技能」と書いてあったのが印象的でした。「英語4技能」という言葉は最近よく聞くのですが。
佐藤:
「4技能」は日本語でも意識的に教えていく必要があるのではないでしょうか。私は英語科の教員なのでなおさらそう考えるのかもしれませんが、英語で学ぶパラグラフリーディングやパラグラフライティングの技能を日本語でも学べたならそれはとても有益なのではと思います。
少なくとも私自身は、中学生の時に国語の授業で作文や論文の「書き方」をしっかりと教わったことはありませんでした。原稿用紙の使い方は習いましたが、どういう文章をどのような構成で配置すれば良いのかや、どういった論理構成にすると意図が伝わりやすいのか・論理性が増すのかといったことを教われる授業はなかったのです。
しかし生徒たちが今後、高校・大学あるいはその先へと学び進め、より高度な知識や技術を獲得していこうとする時、媒介になるのは「言葉」です。そのために、英語だけでなく日本語もしっかりと習得できるようにしたい。本校の「言語技術」ではともすれば軽視されがちなこの部分にもスポットを当てています。
――ホームページを拝見しました。中学1・2年生では論理思考と日本語を操る力を鍛えるさまざまなプログラムが実施されているのですね!
言語教育についてはこちらの動画でも見ることができます。
中1・中2は2種類のオリジナル探究プログラムで学ぶ
――2024年度中学入試からは「言語技術の入試に探究的要素を増やす」とホームページに書いてありました。入試問題は学校が大切にしていることを伝えるメッセージとのお話が先ほどありましたので、「探究」のプログラムについてもお話いただけますか?
佐藤:
本校では2021年度、共学化のスタートとあわせて、中学校で独自の探究プログラム(SHIBAURA探究)を開始しました。SHIBAURA探究は「IT 」と「GC(Global Communication)」2種類の探究型授業で構成されています。
――「IT」はどのような内容なのですか?
佐藤:
ITでは、「理工系の知識(テクノロジー)で社会課題を解決できる」生徒を育てることを目標としています。
その実現のため、中学1年生からできるだけ多くのITツールを体験できるプログラムを用意するとともに、随所でプロジェクト学習を実施しています。
本当にユーザーが欲しているモノを創り出すチカラを養うためにSHIBAURA型デザイン思考を取り入れ、「人の役に立つものづくり」の思考プロセスを育てていきます。
探究ITプロジェクトは「2021年全国附属校サミット」で実践研究および調査研究の指定校に採択されていて、SHIBAURA探究のIT教育プログラムは第9回イノベーション教育学会年次大会で優秀賞を受賞しているのだそうです。
(出典はホームページ)
――とても楽しそうです。「GC」はどのような内容なのでしょうか?
佐藤:
GCではより具体的な事例に、少し長期的に向かい合っていくプログラムとなります。
長期的なPBL(課題解決型授業)にITとはまた別の視点から取り組んでいくことで、コミュニケーション力や発想力、創造力、課題解決力などを身につけていきます。
ITとGC、この2つの探究が両輪のように動いている本校の中学校での教育についてお伝えするために、2024年度からの入試では、言語教育に探究の要素をさらに加えることができればと考えています。
――現時点ではどのような形をイメ―ジされていますか?
佐藤:
そうですね…まだまだ検討中ですので何とも申せませんが、単に言語技術的なところにフォーカスするのではなく、実際の課題を見つけたり課題の解決に向かっていったり、そんな要素を少しでも入れられればと思っています。
2024年度に実施される中学入試の概要や変更点については、こちらのページに記載されていますので、あわせてご覧ください。
→ 次ページには、探究プログラムやそれを支える先生方の意欲、そして入試出願を迷われている方へのメッセージや入試概要を記載しています。