例年以上の激化が予想されている2023年度中学入試。いよいよ各所で出願が始まる中、6年生保護者様は出願校の最終検討と調整を進めていらっしゃることと思います。
そのご参考のひとつとしていただけるよう、期間限定企画「探究型入試紹介」の連載を始めました。
入試広報担当の先生や探究を担当されている先生方に直接お話をうかがい、入試の特長や出題の意図、事前準備があまりできていなくても受験できる…?などの気になるポイントをうかがうとともに、その入試が入学後の学びとどのような関係があるのかについてもお話を聞いていきます。
第9回目となる今回は、新渡戸文化中学校(東京都中野区)です。2023年2月1日(水) AM、2月2日(木) PM、2月11日(土) PM に実施される「好きなこと入試」についてお聞きしました。なお、文末には試験の概要もまとめておきましたので、最後までお読みいただければ幸いです。
このシリーズの連載記事は、当サイト「オンライン合同学校説明会」のほか、年明けの2023年1月6日(金)以降、順次新サイトにも掲載していきます。(新サイトの掲載先は決定次第こちらに記載いたします)
Contents
インタビュー① 好きなこと入試の背景
❝一番求めたい力❞をそのまま測る入試
――「好きなこと入試」を実施しておられる意図についてお聞かせください。
新渡戸文化中学校・高等学校
入試広報ご担当の先生(以下、新渡戸文化):
好きなこと入試で問うている2つのこと――つまり「自分の好きなこと」と「それは社会にどう関わるのか」は、本校が普段の学びの中でおこなっていることそのものです。
本校では週に一度、丸一日探究活動ができる「クロスカリキュラム」の時間を設けています。自分の好きなことと社会の課題や誰かの困りごとを掛け算したテーマで探究を進めていくこの時間は、本校の学びの中心であるとも言えます。
つまり「好きなこと入試」は、本校が一番求めたい力をそのまま測っている入試なのです。
――学校に合ったお子さんが入学できる入試と言えそうです。
新渡戸文化:
そう思います。本校の取り組みと入試がマッチしているからこそ、そこに合ったお子さんとご家庭が本校を選んで入学してくれている――表現が難しいのですが、そんな印象を持っております。
「余白」を自分自身で充実させていく学校
新渡戸文化:
私たちはマッチングをとても重要視しています。
と申しますのも、先ほどご紹介しましたように本校は「丸一日探究活動ができる日」を大切にしている学校、つまり、余白をあえて設けそれを自分の力で充実させていくことを生徒に求める学校です。
この方針は、向かない・合わないお子さんも当然いると思います。
――お子さんだけでなく、保護者さんの考え方と合っていることも重要ですよね。
新渡戸文化:
はい。保護者さんからすると横で見ていてもどかしいこともあるかと思いますが、失敗も含め、自分で選び・進んでいける力を生徒たちにつけることをとにかく大事にしている学校です。ここは説明会でもしっかりお話をさせていただいています。
――第一志望で入学される方が多いですか?
新渡戸文化:
およそ8割が第1志望で入学されていますので、多いと言えるのではないでしょうか。おかげさまで入学後の生徒たちも、クロスカリキュラムを始めとする入学後のさまざまな活動に対して「なんでこんなことをやらなきゃいけないの?」となることはほぼありません。
――納得した上で入学することは大事ですね。
インタビュー② 入学後の学び・探究とどうつながるか
主語は生徒自身。対話を重ねてメタ認知を高める
――とはいえ、決められたこと・やるべきことで忙しく過ごしてきたお子さん達は、入学後、急に「余白の時間を自分で使いなさい」と言われてもなかなかできない…となる場合もあるのではと思います。そうしたお子さんをどのように導いていらっしゃるのでしょうか。
新渡戸文化:
いくつかの工夫があります。
工夫のひとつは、クロスカリキュラムを基本的学年混合で実施していることです。先輩の背中はやはり、良い刺激になるんですね。自分は〇年後にこうなっている、こうなっていたいという思いがひとつのモチベーションにはなっていると思いますし、先輩をマイルストーンとして成長していく生徒もいます。
生徒への接し方の工夫として私たち教員が心がけているのは、ゴールを明確に求めないことです。もちろん、教員としては(生徒に対して)「こういう力をつけてあげたい」「こういうところまで行けるといいな」等の思いはありますが、それを子どもたちに直接求めないようにしています。
――直接求めない…
新渡戸文化:
「こうなりなさい」や「ここに行かなきゃだめだ」を手放せば、ゴールに向かって無理やり持ち上げる必要がなくなります。その子なりの成長、その子なりの進み方、その子なりのゴールがあれば良い――そう思うことでこちらは変な焦りから解放されます。
その上で、私たちは生徒と常に対話を重ねていきます。あなたはどうなっていきたいの?と。
「余白」の時間をうまく使えなくてつい遊んじゃいました。ということは当然あるんです。それに対して私たちは、それはそれであなたの選択だよね。でもあなたはどうなりたいの?こうなりたくて今ここにいるのなら、そこにたどりつくためには今、何が必要なんだろう?ということをもう一度考えさせながら進んでいく、というのが私たちのアプローチです。
――生徒さんを主語にするのですね。
新渡戸文化:
はい。今の自分と目指したい自分を見比べたときに、果たして今の行動はどうなのか。自分の位置をどんどんメタ認知していくことで、生徒の中で「動かなければいけないかな」「動きたい」という気持ちが少しずつ生まれてきます。
子どもに関わる大人が皆で見守っていく
――保護者さんとの関わりではいかがでしょうか。
新渡戸文化:
中学校ではオンラインの「新渡戸サポーターズミーティング」を月に1回ほど実施しています。
――サポーターズミーティング。
新渡戸文化:
子どもたちに関わっている大人たちが、教員も親も対等の立場にある「サポーター」として彼らの未来を考えていく時間です。家庭ではどんな声かけをしたらいいですか?とご質問いただいたら学校ではこういうふうにしていますよと共有したり、教員からもご家庭ではどうですか?とおたずねしたり。学校全体で子どもたちの未来を考えていく雰囲気を作っています。
――それは素敵ですね!保護者以外の大人との関わりにはどのようなものがありますか?
新渡戸文化:
クロスカリキュラムの一環として、学期に1~2回「Happiness Bridge」というプログラムを実施しています。これは”100人の大人につながる”というコンセプトのもとで、生徒たちが校外の大人とオンラインで対話をするという授業です。
もちろん、クロスカリキュラムの中で生徒の中に「やりたいこと」が生まれた時には、できるだけその分野の最先端の人、現場の人と出会えるように協力していきます。本物と出会うことで生徒たちは好奇心をかきたてられ、もっと知りたい・もっと学びたい――となっていきますので。
「余白」は生徒たちが自ら選んでいく力を付けるため
――中学に入学した生徒さんは、だいたいどのぐらいの時間で「余白」をうまく使えるようになるものなのでしょうか。
新渡戸文化:
個人差がありますので期間については本当に人それぞれとしか申し上げられないのですが、中3ぐらいまでには「自分はこれがしたい」と語れる子がかなり多くなっているように感じます。
僕は/私はこれをやってみたいと言い、私たちが「そのためにはどうしたらいいだろう?」と聞くと「これをこうしてこうしてこうやってみます」とさらっと答えることができたり、メタ認知ができていて「自分は今こういう状態だからこれからこうするのがいいと思う」と言える生徒が結構いるんです。
やりたいことはすでに芽吹いていて、今後、精神面が追い付いてくれば大きく変わってくるのではないかと期待させてくれます。
――毎週、自分の好きと向き合う1日があるのは良いですね!学校や習い事などが忙しくて探究の時間をとることが難しいお子さんも多いと思いますので…。
新渡戸文化:
今の子どもたちにはタスクがすごく多いですよね。多くの学校では、本当に真面目で比較的勉強もできるお子さんが一生懸命頑張ってようやく終わるぐらいのタスクが課されているように思います。その上で部活があり、自分のやりたいこともあり…となればほとんどのお子さんは「終わらない」「しんどい」状況になってしまいます。
「子どもに余白を与えると遊んでしまう」と大人は思ってしまいがちですが、考えてみれば遊ぶに決まっているんですよね。だって今は、子どもたちの普段の生活の中にそもそも遊ぶ時間がないんですから。
でも、余白を与え続ければ、子どもたちはその中から少しずつ遊びのコントロールを身につけていきます。本校は「大人が与える」のではなく生徒たちが「自分で選んでいく」ことをとにかく大事にする学校です。だからこそ、生徒に「余白」を作ることに力を入れているのです。
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