この記事は、文化放送PodcastQRで毎週月曜日に配信されている「【中学受験】おおたとしまさの『校長室訪問』」の内容を、確認クイズ付きでWeb再録したものです。
配信内容を書き起こすとともに、その一部を「穴埋め(ブルダウン式の三択)」クイズにしております。
番組を聴きながら穴埋めを完成させて、楽しみながら学校への理解を深めていただければ幸いです。
今回お届けするのは、
聖徳学園中学・高等学校(東京都 武蔵野市)の校長、伊藤 正徳先生のお話です。
番組の聴取は下記より↓↓
【大切なお願い】
※このWeb再録は、「【中学受験】おおたとしまさの『校長室訪問』」をより楽しんでいただくための取り組みとして、文化放送様の許諾をいただいて実施している特別企画です。
クイズを楽しんでいただいたあとは、ぜひページ末尾のアンケートフォームから、番組のご感想やリクエストなどをお送りください。
この企画を続けていくことができるかは皆さまのお力にかかっております。ご協力、どうぞお願いいたします!
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Topics1:学校の概要
「やってみなはれ」の精神を大切に生徒を育てる
おおたとしまさ氏(以下、おおた):
それでは聖徳学園中学・高等学校の校長、伊藤 正徳先生にお話をうかがっていきましょう。伊藤先生、よろしくお願いします。
聖徳学園中学・高等学校
伊藤 正徳 校長先生(以下、伊藤):
よろしくお願いいたします。
おおた:
(中略)まずは学校がどんな場所にあるのか、最寄りの駅からのアクセスですとかあるいは周りの環境ですとか、そういったところをお聞きしていきたいのですがいかがでしょうか。
伊藤:
はい、ありがとうございます。私どもの学校はJR中央線三鷹駅の隣の「武蔵境駅」という駅から歩いて3~5分程度の、非常に駅から近い便利な場所にございます。
また、本校から南に15分弱行ったところに三鷹キャンパスがあるのですが、こちらは体育の授業やクラブ活動などで使用するグラウンド、テニスコートがあります。テニスコートのほうは工事をしてかなりいいものができあがっているんですが、中学の男子テニス部ですは全国優勝したことも何回かあるのですが、この3月はあと少しのところでちょっと準優勝で残念だったのですが…
おおた:
でも、全国で準優勝。
伊藤:
そうなんです。頑張って活動しています。
おおた:
学校の中の雰囲気といいますか、校風や生徒さんの様子をうかがっていきたいと思います。
伊藤:
私どもの学校は、学校の周りも非常に閑静な住宅街で緑が多くて、非常にのんびりした雰囲気がただよっている場所です。ですから校風のほうも割とのんびりした落ち着いた雰囲気があるのかなと。生徒もわりと、がつがつしているというよりおっとり、のんびりしている子が多いかなと思っております。
最近の学校説明会では、必ず冒頭に私が「出過ぎたくいは打たれない」という松下幸之助さんの言葉を紹介させていただいています。
今の生徒は周囲をすごく気にして、ある意味では同調圧力に従順な生徒が多いなと感じています。ただ、周りにあわせているだけではやはり、これから新しい時代を切り拓くイノベーションは起こせないと考えております。ですので、本校の雰囲気としては、生徒や教員に「あれをやっちゃいけない」とか「これをやっちゃいけない」というようなものをつくらないようにということがずっと伝統的に続いているかなと思っています。
むしろサントリーの創業者の鳥井信治郎さんという方がよく「やってみなはれ」ということを、そういう精神を常におっしゃっていたのですが、これは創立者以来、ずっと本校が大事にしているところではないかなと思っています。
おおた:
のんびり落ち着いた雰囲気の校風ではあるけれども、一方で、出る杭になることを恐れるのではなくて「やってみなはれ」の精神で、先生たちもあれをしちゃいけない、これをしてはいけないということをできるだけ言わないようにということが学校の文化になっているということでしょうか。
伊藤:
はい。
Topics2:沿革
大正自由教育の流れをくむ「和を以て貴しとなす」学校
おおた:
そういった文化、雰囲気を持つ学校ということなのですが、創立者の話もちらっと出てきましたが、どんな創立者の方がどういう想いを持って作った学校なのか、そして歴史の中でどういった歩みを経てきたのかをうかがいたいと思います。
伊藤:
本校は1927年に浄土真宗の僧侶で新聞記者でもあった和田幽玄(わだ・ゆうげん)という者によって設立されました。この当時は金融恐慌など社会の不安が少しずつ日本でも広がった時代で、社会的には色々な形で困窮する方々も増えてきて、少しずつ「自分さえよければいいんだ」という雰囲気が非常に広がってきた時代だったようです。
その中で和田幽玄は聖徳太子の「和を以て貴しとなす」という和の精神が大切だと考え、とにかく自分のためだけではなく他者のために学ぶ、これが和をつくる非常に大事な精神なんだということで、本校の建学の精神となっております。
おおた:
言葉でいうとどのように?
伊藤:
「和」の精神と。これは学校行事やさまざまな生徒に話す機会等で常に強調されているところかなと思います。
またその頃はですね、非常に日本全体としては明治維新以来日本は近代国家になるために画一主義的に知識を生徒たちに入れて行くという時代でしたけれども、当時は大正自由教育と申しまして、子どもの自主性や自発性、あるいは個性を大切にしようというそういう教育の影響を非常に強く受けているかなと。
ですので基本的には、先ほども申しましたが、生徒を型にはめるのではなく生徒の自主性を尊重する、そういう自由な校風が今日(こんにち)まで続いているところかなと思います。
おおた:
創立時の教育顧問に澤柳政太郎先生が…
伊藤:
澤柳政太郎先生にも関わっていただいています。
おおた:
まさに大正自由教育の旗振り役のような役割を果たしていた東北帝国大学の学長をやっていたこともありますし、今では成城学園の創立者としても有名なこの先生が、この学校の創立にも関わっていたということからも、なんとなくどういう意図をもってつくられた学校なのかということが歴史からもわかってくるかなと。それが今でも脈々と受け継がれているということですね。
伊藤:
ただ最近は少し新しいことに挑戦しようと。これからの未来にいったい何が子どもたちにとって必要なのかということを考えた教育をしようと取り組んでおります。
大きく分けて2つあるのですが、そのひとつがテクノロジーの活用です。日本の学校ではかなり早い段階だと思いますが、2014年に生徒一人に一台のiPadを導入して、それ以来、ICT教育の活用にかなり積極的に取り組んできました。ですので、おかげさまで昨年度は日本全国から40あまりの団体とか学校に視察においでいただいて、かなりICTの分野では注目をあびてきているかと思います。
2021年には、本校がiPadを導入していることもありまして、Apple製品を活用して先進的・革新的な学びに取り組んでいる教育機関として「Apple Distinguished School」にも選ばれています。ちょっと画面越しで大変恐縮なのですが、見えますでしょうか、ここに「できる聖徳」という本校の生徒が活用しているマニュアル本があるんです。インプレスさんという会社にお手伝いいただいて作成したんです。情報リテラシーからさまざまな本校で必須となっているアプリの活用(の方法を記した本)を生徒目線で作って。
実はこのほとんどの部分を――本校には3名のICT支援がいるのですが、こちらの本はほとんどは卒業生、ICTチューターという卒業生が色々と手伝ってくれており、この子たちが中心となって作成してくれました。ですので、子どもたちの目線から何でつまづきやすいのか、どこに気を付けたらいいのかが非常によく反映されていますので、この本があれば安心してある程度のことは本校のICTに関しては使うことができると。
また、支援のスタッフも3名の常勤の支援員がいますので、先生方も何かあれば相談できるという環境にあるかなと思っています。
おおた:
これは今、Zoomでお話をしているなかで私は見せてもらって、リスナーの方々には見えないと思うのですが…「できる聖徳学園 早わかりガイド」という立派なガイドブックがありまして。これは一般売りはしていないのですよね。
伊藤:
一般売りはしていなくてあくまで本校の関係者だけに渡しているものではあります。
おおた:
ですけど、簡単な作った冊子ではなく、できるエクセルとかできるワードとかあのシリーズと同じような体裁ですよね?
伊藤:
同じようなテイストで作っています。
おおた:
そうですよね。それを学校オリジナルで用意して、困った時は生徒本人がそれを見ればある程度わかるようになっていて。しかもサポートスタッフも充実していて…ということで、単にあわてて一人一台タブレットを配ったのとは違うぞと。
伊藤:
そういうところはあるかなと思っております。
あともうひとつの柱がグローバル教育なのですが、欧米だけではなくて、今、グローバルサウスということも言われておりますが、途上国にかなり力点をおいたグローバル教育をしております。
おおた:
いいですね。
伊藤:
本校は教科横断型のSTEAM教育に取り組んでおりまして、中1から一貫してカリキュラムがあるのですが、まず中学1年生はまず映像作成ということで、映画監督にご指導いただいてシネマアクティブラーニングを行っています。
おおた:
楽しそうですね。
伊藤:
SDGsをテーマに生徒たちは映画を作っていくのですが、やはりこれからの時代は、(中略)完全に動画の時代で、生徒たちはさまざまな形で動画で表現をしているんですね。ですから動画というものをやはりしっかり作れるよう、あるいはその功罪をしっかりわかろうということでそういう取り組みをしています。
色々間はあるんですが、高校2年生はJICAさんなどのお力もありながら、探究の時間に全生徒がSDGsの視点から日本にいながら途上国に何ができるかということに取り組んで――実際、大したことはできませんが――実行しようと。その国についてのホームページを作るとか、あるいはさまざまな発信をしたり、あるいは中には実際にアフリカのルワンダという国に行って、現地にFamily Vision Schoolという学校があるのですが、そちらの支援に実際取り組むような生徒たちも出ていて。このようにグローバルに関しては、もちろん欧米への語学研修などもありますが、とにかくこれからやはり私達が相手にしていく国としてやはり途上国が非常に大きな役割があると。そこにかなり力点を置いた教育を行っています。
おおた:
ICTを積極的に取り入れた教育と、グローバル。グローバル教育も単に欧米を向いているというだけではなくこれからパートナーになっていくであろう途上国への理解を今から深めていくという関係性をつくっていくという教育を行ってといると。それが、長い歴史の中に、この時代であるからこその挑戦として取り組んでいるフェーズに来ているということかと思います。
伊藤:
あとは、先ほど冊子をお見せしましたが、卒業生が作ってくれたというところがあるかと思います。本校の卒業生に「本校の校風で一番感じるのは何?」というアンケートをとると、「先生と生徒の距離が近い」ということを言ってくれます。
そこで本校は卒業生のチューター制度というのを今どんどん拡大しているところにあります。最初はチューターという言葉のとおり学習室で後輩の勉強の面倒を見るところから始まったのですが、今では約50人ぐらいの卒業生が、先ほど言ったICTを手伝ってくれる者とか、あるいはグローバル教育、自分自身が体験したので授業を助けに来てくれる生徒、あるいはクラブ活動を教えに来てくれる生徒、最近では学校説明会の司会とか運営とかはもう卒業生がほぼやってくれています。
おおた:
ええ、それは面白いですね!
伊藤:
校内案内も卒業生がほとんどやってくれますので。自分の体験を踏まえながら話をしていただいているので、非常に来ていただいた方に好評だと思っています。
おおた:
学校説明会を生徒さんたちがお手伝いをするということはよくありますが、卒業生さんがわざわざ来るのはなかなか珍しいですね。
伊藤:
生徒達ももちろん手伝うのですが、その親分というか親玉として手伝ってくれて、自分たちの想いを伝えてくれているのは非常にありがたいなと。
おおた:
非常にユニークですね。
伊藤:
最近は進路指導室を手伝う者とか、事務室とか、学校の色々なところに卒業生が常にうろうろしているという、そういう環境がありますので、このあたりも創立者の和を以て貴しとなすという精神がつながっているところかなと思います。
Topics3:保護者様へのアドバイス
お子さんが思春期で親と話したがらない時はつぶやきでもいいと思うんです
おおた:
そういった教育をおこなっている聖徳学園さんですが、その教育のエッセンスを一般のご家庭でも取り入れるヒント、子育てのアドバイスのようなものをいただければと思うのですがいかがでしょうか。
伊藤:
私どもの学校は2019年に週刊東洋経済さんという雑誌で、中高6年間の学力伸長度ランキングで全国1位にしていただいたことがあるのです。いわゆる入口の偏差値は大したことないけれども、そのかわり卒業時に頑張っているだろうなと。
こういう話をすると、何か、中学1年生の時から徹底的に問題演習をさせたりとおしりをたたいているのではないかとよくご質問を受けるのですが、そうではなくて、私たちは生徒の発達段階に応じて学ぶ環境をしっかり作って、最終的には自分で学習できる生徒を作りたいというふうに思っています。今年の春は京都大学に受かる生徒も出てきて、うちの偏差値からみると非常に頑張っている生徒がどんどん出てきてくれているなと。
本校は中学と高校で生徒への接し方に違いを設けています。
中学ではまだお子さんにあまり自我が芽生えていない段階ですので、自主性とはいってもある程度こちらで筋を示してあげることが大切かと思っております。その中で特に重視しているのが体験です。コロナ禍で生徒の体験の機会が大きくなくなってしまったり、学外に出て色々な方に会って異なる社会を見たり、という自分の視野を広げる経験も本当に少なくなってしまったのですが、そのなかでやはり、私は、何か学ぶためには自分で体験をする、それがもっともやはりいい方法ではないかなと思っています。知識を伝達するだけならこうしたZoomでもできますが、やはりこうやって実際に学校に集まり、みんなで議論しながら何かに挑戦していく経験が学校教育、これからのアフターコロナの意味合いではないかなと考えています。
ですので保護者の皆さまには、ご家庭でも、ほんの少しでも日常とは違う、異なる体験を設けていただく。そして当然お忙しくてご自分ではご用意できなくても、学校とかさまざまなところで何か体験の機会があったら「大丈夫だよ!失敗したっていいんだから、挑戦してみたら?」とお子様の背中をぜひ押していただければと思います。
中学はこういう形でまずとにかく体験をしていただこうということに学校で取り組んでおります。
ただ、高校になりますとちょっとスタンスを変えてきまして。もうすでにお亡くなりになったのですが、教育心理学者の河合隼雄先生が次のような言葉をおっしゃっています。「昔の親は何をしてやろうかと考えた。けれど、今の親の愛情は”何をしないか”を考えなければならない」と。
どうしても私たちは何かしてあげようと、言うなれば足し算の発想になってしまうのですが、そうではなくて、高校になるとやはり引き算の発想が必要ではないかなと私たちは考えているんです。
転ばぬ先の杖で保護者の皆さまが色々用意してあげたりとか、失敗させたくないとか、そういう親心は非常によくわかるんですが、やはり、お子様自身が自分の人生を自分で考えて切り拓いていくように仕向けていくことが大切だと考えています。高校になると手取り足取りではなくて、とにかく自分で考えなさいという方向に向かわせるように今はしております。
ただ、いきなり高校になって、突き放して「いや、自分で考えろ」というのも突然です。やはりお子様の声に耳を傾けていただくことは大切だと考えています。ですので、そのためには、なかなかご家庭の事情によっては大変なところもあるかもしれませんが、家庭の雰囲気をいつも(1)朗らかにしていただいて、お子様が話したい時に話せるようなそういう空気を作っていただければと思っています。うちの学校もそういう雰囲気があるのではないかなと考えています。
ただ、思春期になると親と話したがらないこともあると思うんですよね。そういう時はお子様と直接話さなくて、親御さんのつぶやきでもいいと思うんです。
「おまえ、将来どうするんだ!」とか親の前に呼びつけるのではなくて、テレビとか雑誌とか見ていて「こんなんだからダメだよ」とか今の世の中にお怒りになりたいことは多々あると思うのですが(そうではなくて)、こんなに頑張ってる人がいるのねとか、素晴らしい生き方だねとか、こんな新しいことに挑戦しているんだねとか、そういうことに、批判ではなく共感している様子を見せていただければと思っております。
<確認クイズ>
(1)に当てはまる言葉の組み合わせは何でしょう?
おおた:
ああ、なるほど!批判的なつぶやきではなく、ポジティブなところに共感をしているセリフを、それを説教臭くなくぼそっとね(笑)。
伊藤:
そう、ぼそっと言っていただくと。
おおた:
ぼそっとサブリミナル的に聞かせるというね。
伊藤:
お子様がたは意外に親御さんの言葉は、知らない形で聞いていますので、そういった形が、つぶやきが、Twitterじゃないですけれども、お子様に何らかの見えない刺激を与えてくれるのかなと思っております。
おおた:
素晴らしいアドバイスですね。そして前段の所で、どうしても教育熱心な親御さんほど「何をしてあげられるか」を考えてしまうけれども、そこで迷った時には足し算ではなく引き算のほうを。引けるところは引いちゃおう、思い切って勇気をもってと。そのほうが子どもの可能性を引き出す余地が生まれやすいよというお話だったかと思います。
校長室訪問、今回は聖徳学園中学・高等学校の校長、伊藤 正徳先生生にお話をうかがいました。伊藤先生、ありがとうございました。
今回の内容のご感想やコメントなど、ぜひお送りください。
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